第19話 呼び出した理由
入ってきた男は
所長以外にも久間田さんや青さんとは顔見知りらしく、お互いにぺこりとお辞儀をする。それから桃木は座る所長を見つけてあからさまに口元を緩める。
「シキさん、久しぶり~随分と呼んでくれなくて寂しかったよ~」
「あら、そうだったかしら」
「そうだよ、会えなくてとても寂しかったよ~」
聞いているこっちが恥ずかしくなるような軽いセリフだった。
桃木は会話をしながらオレの座っていた場所にどっかりと座る。
「ふふ、桃木さんは相変わらずね」
所長は来客用の笑みを浮かべて笑うだけ。
そこはオレの場所だ、どけ。
心の中で思ったが、態度にはさすがに出さなかった。
仕方なしに予備の椅子を隣の倉庫から取り出してきて座る。
安いパイプ椅子はきぃきぃ音が鳴った。
久間田さんが奥からお茶を出してきて、桃木の前に出す。
「それで今日は一体なにがあったの?ボク、シキさんのためならなんでもしちゃうよぉ」
桃木はそう言って両手をもみながら、所長のことを下心ある視線で見る。
「あら、そう?じゃあお言葉に甘えようかしら」
にっこり、最上の笑みを浮かべて所長は口を開く。
「引っ越しをお願いしようと思って」
その言葉に驚いたのはオレだけではないはずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます