警鐘

第12話 変化 一瀬真実

暗闇があった。黒い、黒い、闇。暗すぎて目がちかちかしてくるほどの深い闇。

そこに一人誰かが立っている。

そこだけ照らされるように上から光が当たっている。

誰だろう。


歌が聞こえる。子供たちの声。よく知った民謡だ。


”かごめ、かごめ”


どこから聞こえているかわからない。

子供の姿はない。


男はスーツを着ている。黒いスーツ。肩を落として、なにかとても疲れたようにうつむきがちにそこにいる。

顔は見えない。


”籠の中の鳥は”


男の足元に白いものが置いてあることに気付いた。四角い網状でできたケースの中に溢れそうなほど沢山入っている。

なんだろう、あれは。白く丸い、やわらかいもの。

よく見ればなんだか動いているようにも見える。

曲が嫌に耳に着く。嫌な雰囲気だ。目は離せない。


” いついつ出やる”


白いものぐるりと顔を上げて手を伸ばす。

あっと思った。

悟る。

あれは赤子だ。

大量のつぶれそうなほど沢山詰め込まれた赤子の顔だ。

そう気づいた時、その一つがこっちをみてニヤッと笑った。


瞬間世界が暗転した。


気づけば、いつものワンルームだった。布団の中で大量に汗をかきながらオレは荒い息を整える。

キャッキャという赤子の高い声がまだ耳に張り付いていた。


「なんだったんだ、今の」


声が部屋に反芻した。


こんな夢は初めてだった。






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