休題 HSP研究所 バイト 一瀬真実
青さんと別れて自宅に戻ってからすでに一時間が経過していた。
クーラーの効いたワンルームで一人思いを馳せる。
「一瀬くんの目は名前の通り、真実を見分けるね」
出会った頃、所長に言われた言葉だった。
所長はただの学生だったオレを変えて、この世界に引き込んだ人物。
本当にそうだろうか、とオレは今日思い出して考える。
青さんと一緒にあったのはまだ若い女の子だった。
中学二年生。
多感な時期だ。日常生活でなにか理由があってそれが影響しているのかと最初は思ったが、いざ本人と対峙してわかった。
あれは本人の仕業じゃない。
魂に色がある、なんて話を昔どこかで聞いたことがある。人の外見が百人十色なのと同じように魂も一つ一つ見かけが違うということだ。昔は信じなかったが見えるようになってようやくその言葉の意味が分かってきた気がする。
なんというか性質が違う。赤と青ぐらいの差がある。
あれは良いものではない。あの女の子と何かで繋がり、彼女のエネルギーをそのまま食べて増幅させている。それはわかったが、そのつながりが一体何なのか、何が鍵となっているのかまではわからない。
だが、はっきりしているのはその「わからないなにか」を断ち切らない限り、あの影は彼女に悪い影響を及ぼす、ということだ。
プルルルルと携帯が鳴る。
画面に表示された名前をみれば所長だった。
3コールで電話にでる。
「もしもし」
『あ、もしもし一瀬君?今日はお疲れ様でした。今日の件で青さんが少しお話したいことがあるんだって。明日の11時に事務所に来れる?』
「オレもちょうど話したいことがありました」
『そう、ならよかった。明日11時ね、よろしく。久間田さんと私も参加するから』
そう言って通話は切られた。
オレはため息をつく。眼帯をした右目が疼く。
悩んでいたのに所長の電話ですべてがどうでもよくなったのだった。
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