雪泥鴻爪

 この世界では、馬に乗るという概念は無く、よって馬車という物は存在しないが、荷車という両側に車輪の付いたものはある。


 テントの天幕などを剥いで、せめてありったけの布を用意して荷車の荷台に敷き詰めたものの、道も無い深い森林の中を時速30kmで進んでいるならば、上下左右へと揺れる荷台への振動はたまったものでは無いだろう。 荷車に乗せられたリゼラと6人の少女は嗚咽やら声にならない驚愕の声を出しているようだ。

 その荷車を引いているのが狐族の王女である私なので、文句など言われる筈も無いのだが、何で私がこんな事を、と、リゼラとの会話を邂逅しながら黙々と足を進める私。


 少女達の足どころか、リゼラでも私の移動速度に付いて来る事は出来ない。

 ならば、荷車に乗せて私が引けばどうなのかと言い出したのがリゼラだ。

 理には適っているのでそれを実行したのだが、何故か口車に乗せられた様な気分である。


 ちなみに亜人の占拠するリープポイントを遠視で特定はしているが、約45分走りっぱなしで流石に疲れた私は少し足を緩めながらやがて荷車を止めて、7人の様子を見る為に荷車の方を見る。


 7人が7人とも、げんなりとした顔で項垂れており、毅然としていたリゼラも顔を青ざめさせて俯いて居た。


『私は一人で荷車を引かされてるのよ? もう少し何とかならないの、その顔。』

『揺らされる側も結構辛いのですよ。』


 なら下りて歩けと言いたいが、行程上そういう訳にも行かない。

 私は腰にぶら下げたポーチから水筒を取り出すと、自分の体温で温くなってしまったその水を半分を残して飲み干す。

 本当は冷たい水が飲みたいのだが、人間達のところにあった水がエウパで作られたのかどうか分からない。

 少女達はその事を気にしないのだろう、水の入った革袋を少しづつ回し飲みして、リゼラに手渡される。

 リゼラもその水を飲もうと革袋に口を付けるが、私の視線に気付くと、手を止めた。


『……成程。 エウパで作られた水かもしれない、と?』

『別に貴女が飲んでも気にはしないわよ。 私は口にしたくないだけ。』


 前の世界の菜食主義者ベジタリアンの気持ちが少し分かる気がするわ。


『魔法で作られた水だとしたらどうですか?』


 ……それなら、どうだろう。 水を召喚させる魔法なら多分ある筈だ。

 エウパを使って水を作り出すよりも、魔法で出した方が効率的な事は確かだろう。


『物は言い様ね。 結局貴女にも真相は分からないんでしょう?』

『あら、バレましたか。』


 言うか言わずか、革袋の水を美味しそうに飲むリゼラ。

 まあ、こんな・・・作戦を考え付く女だ。 些細な事一つでも丸め込まれそうになる自分が少し怖くなってくる。


『で、本当に良いのね?』


 リゼラの作戦とは、六人の獣人を保護し、リゼラを捕虜にした事にして亜人が占拠するリープポイントに乗り込み、油断している相手を私が一網打尽にするというもの。


『私が何かされそうになったら貴女が守ってくれるのでしょう?』

『問答無用で殺されるかもしれないわよ。』

『私の両手をロープで縛って、そのロープを狐族の女の子に持たせると良いわ。 貴女の所有物・・・である私に、貴女に断りも無く手を付けるとは思えないわよ。』


 肝が据わって居るというか何というか……。


『貴女がどれだけ強いのか、見せて貰います。』

『貴女の期待に応えられたら嬉しいわね。』


 私も負けじと威勢を張るのだった。


 ◇


『敵は200人程度ね。 探知は既にされているみたい。』


 敵から500mの距離まで徒歩で近づいた私は、リープポイント周辺を遠視した後、念話でリゼラに敵の動きを伝える。


『私達は敵とは認識されて居ないようですね。』

『攻撃して来ないんだから、そうでしょうね。 何か話し合っているみたいだけど、このまま私達が近づいて来るのを待つつもりみたいよ。』

『なら、このまま進みましょうか。』


 私は狐族の少女達にも歩みを進める様に伝え、あくまでも彼女達の歩行速度に合わせて私が一番後ろに陣取った。


 やがて森が開け、エルフ、ドワーフも含めた亜人達の姿も見えて来る。


『ねぇ、兎族と猫族、あと狐族の獣人があっちに居るかどうか聞いてくれる?』


 と、狐族の少女に言う私。

 前歯が折られ、呂律が上手く回らない彼女に代わり、猫族の少女が良く響く高い声で何かを叫ぶ。

 すると、二人の猫族の男性が走り寄って来た。


 二人の男性は狐族の少女の顔を一瞥すると、可哀想に、と、憐憫の表情を見せた後、二人の猫族の少女を目にし、泣きながらその二人に抱き付いた。


『感動の再会、ですか。』

『茶化さないで、リゼラ。』


 少女達も男性にそれぞれ抱き付き、事の経緯を話しているのだろう、少女が何かを話す度に私を見る猫族の男性二人。

 ちなみに、猫族も小柄な獣人の部類であり、成人男性である二人の背丈は140cm程度で、少女達は130cm程度。 そんな小柄な獣人達のやり取りを見て、失礼ではあるが少し可愛いなと思ってしまう私。


『あの、これかあどうすえれば良いかってきいえますけど……。』

『ああ。 そうね。 この子達を集落に帰す様に言って頂戴。』

『今は作戦行動中だかあ、出来ないって言ってます。』


 ふむ。 そうなるか。


『じゃあ、猫族の四人にだけ、こう話して。』

『何て、ですか?』

『ここに居るエルフとドワーフ、そして彼等に協力する亜人は、皆、私に殺されるから、集落まで今すぐ走って逃げなさい、って。』

『っ!?』


 驚愕の表情で私を見る狐族の少女。

 それはそうだろう。 リゼラの作戦内容を、彼女達に話しては居なかったのだから。


『本気……ですか、王女さま。』

『狐族の決定よ。 私達はエルフにも、人間にも、屈しない。』


 ちらり、と、視線をリゼラに向ける狐族の少女。


『人間との共存の為に彼女の協力は必要よ。 狐族として人間達に貸しを作っておくのよ。』

『そういう事ですか……。』

 

 大きく頷いて猫族の四人に話をする少女。 猫族の四人は驚いた顔で私を見るので、真剣な眼差しで大きく頷き、行け、と、顎で合図する。

 一歩、二歩、と、後ずさる四人は、やがてお互いを見て頷き、一気に西へと駆け出した。


『他の皆は、大木の陰に隠れて!』


 狐族は慌てて他の三人の兎族の少女に伝え、動き出きすと、リゼラも意図を読んだのかその三人に引き摺られる様な恰好で走り始めた。


 それを確認した私は、100m程離れて居た亜人達の懐へと一瞬で飛び込む。

 ほんの一秒数えるか数えないかの速度で飛び込んで来た私に、すぐさま対応出来る亜人はおらず、


業火ヘルファイヤ噴出エラプション!」


 私が叫ぶと同時に、周囲20mに炎の壁が吹き上がった。

 身を一瞬で焼かれた数十人の亜人は、身体の水分が爆発するが如く風船の様に弾け、やがて灰となり、更にその灰さえも業火によって散らされる。

 ぐい、と、何かを引っ張る様に左手を集中させる私。

 燃やした敵のエウパがその左手の甲に集められ、淡い光が宿り――――


 それを弾けさせ、霧散させた。

 亜人が使うクリスタルには、任意で周囲のエウパを集める機能があるのだ。

 柊さんが改造してくれた私のクリスタルにもその機能があり、エウパを吸収すれば私は更に強くなれるだろう。 だが、エウパの秘密の全てを知った私は、吸収ではなく、魂の解放の方法を選ぶ。


真紅炎噛クリムゾンフレイムバイト!』


 業火で焼ききれなかったエルフ、つまりは魔法障壁を多重に用意してあったのであろう相手に、大きな炎の顎が口を開けて襲い掛かる。

 頼りの魔法障壁が何枚も砕ける音と、焦りを顔に表すエルフ、そのエルフの胸に、真っ直ぐに突き出した私の右手が突き刺さる。

 しっかりと心臓付近まで突き刺さったであろう右手を、今度は握りしめるようにする私。

 ぶちゅり、と、血管や内臓が握り潰される音と同時に、


血液膨張ブラッドエクスパンション!』


 私の魔法が発動し、ぼこり、と、エルフの身体が膨張すると、やがて周囲30mを巻き込む大爆発を引き起こした。

 子気味良い爆発音の後、やがて収縮して凝固し、大きな血の塊が私の目の前に出現する。


二次膨張セカンドエクスパンション!』


 血の塊は瞬時に拡散し、衝撃波を産み、少し遅れて重い爆発音が周囲に響き渡る。 衝撃波が音速を超えたのだろう。

 少女達とリゼラは大樹の裏に隠れている筈だが、その大樹をも揺らがせ、やや細めの木は数本なぎ倒されてしまった。


 敢えてワープポイントから爆心地を少しずらした私だったが、亜人の駐屯地だった野営地は今は見る影も無く、ほぼ全ての人工物は吹き飛ばされるか、焼き払われるかの状態で、最早誰の物か分からない様々な色の血液が大地を染め上げて居た。


 やがて周辺を見渡しながら、寝転がっている亜人に歩いて近付くと、生きているかどうかの確認もせず、小太刀で次々と首を撥ねて止めを刺す私。

 と、抵抗らしい抵抗がようやくドワーフであろう毛むくじゃらの亜人から繰り出された。

 他の亜人達を盾にしたのだろう、死体の山の中からいきなり飛び出したのには正直驚いた。


 ガキィン!!


 という重い金属音が、ドワーフの斧と私の右手によって生み出され、次に私の右手の指が巨大な斧の刃に食い込み金属が軋む音が聞こえる。

 驚きの表情を浮かべるドワーフだが、


物質膨張マテリアルエクスパンション!』


 という私の魔法で、巨大な斧が小指一関節くらいの大きさに粉々に砕け散って右手の周囲に集まると、爆発と同時に周囲に弾け飛んだ。

 毛むくじゃらの亜人、ドワーフは全身に鋼の破片を受けて身体を細切れにされ、身体を無数のパーツへと分解させられる。

 そのドワーフの鮮血を纏いながらも、飛び進んだ無数の鋼の破片は、亜人達の死体や、まだ息のあったであろう亜人にも突き刺さり、いくつかの悲鳴が聞こえて来た。


『少し手加減してください! 隠れている木が折れそうです!』


 リゼラからの悲痛な念話が私に届くと、確かに彼女達の隠れている木を遠視で確認する。 と、100m以上離れた大樹にも金属片がいくつか当たっていたのか、木の幹の三分の一が抉れてしまっていた。


『後は掃討戦よ。 もうリープポイントを奪取しても良いわ。』


 息の根がありそうな敵を更に串刺しにしながら言う私。


『あれだけの亜人を瞬殺……ですか。』

『リープポイントを壊しても良かったのならもう少し早く終わったわよ。』


 少し皮肉気味にリゼラに答える私だった。


 ◇


 リープポイントの奪還というのは、他の陣営の人間が触ればおしまい、と言う単純なものでは無く、リゼラは大きな杯の様な装置に自分のクリスタルを埋め込んで、何か色々な操作を始めていた。

 私は返り血を浴びた身体を兎族の女の子達によって綺麗にして貰いながら、栄養補給の為に、メープルシロップの飴玉を舐めて居る。

 脳にまで甘さが伝わり、身体の火照りが収まって行くのを感じる私は、私だけこれを味わうのは可哀想かな、と、三人の兎族の女の子の口に一個づつ放り込んであげた。

 一瞬驚く彼女達だったが、やがて飴の甘さに頬を緩ませる。

 私は立ち上がると、狐族の少女の元へと向かった。 リープポイントの近くに奇跡的に無傷の多少豪華に見える箱があったのだが、その箱の中には色々な液体が入った瓶が入っており、もしかすればそのうちのどれかがエルフの霊薬、つまり彼女の顔の傷を回復出来るポーションなのでは無いかと探させて居たのだ。


『どう? それらしいのはありそう?』

『確か、みどいいおだと聞いていたので……こえのどっちかだと思います。』


 私の目の前に置かれる二つの瓶。 同じ形の瓶だが、片方が濃い緑色で、もう片方が薄い緑色である。

 ううむ……。 毒の可能性もあるわよねぇ……。


『詳しい人に聞いてから判断しましょう。 取り合えず貴女が持って居なさい。』

『はい……。』

『その代わり、ほら、今、良い物あげるから口を開けて。』


 メープルシロップの飴玉を、小さく開けた狼族の少女の口にも放り込む私。


『甘いえす……。』

『懐かしい味でしょ。 狐族の人達が作ってくれたのよ。』

『私……帰えうんですね……。』

『そうよ。 これからは、一族の皆と一緒に暮らすのよ。』


 一瞬戸惑う様な表情を見せる少女だが、やがてはにかんだような笑顔に変えて私を見る。

 まあ……家族が生きているとは、限らないものね……。

 多分、彼女の戸惑いはそういう可能性を考えた事から来たものなのだろう。


『リープポイントの同期が完了しました。』


 と、リゼラの念話が私に届く。


『次のリープポイントは木々が薄くなってるわ。 盾になりそうな大樹は無いから、屈めば身体全体を覆える様な盾を用意出来る?』

『そう……ですね。 ここに居る人数分なら魔法が付与されているものも用意出来ますよ。』

『それじゃちょっと報告がてら前線基地に帰って、それを持ってきてくれる?』

『しかし、多少エウパを使わなければなりません……。』


 手持ちのエウパでは足りないかも、という表情で私を見る彼女。

 私は、仕方ないな、と、残留している一部のエウパを右手で軽く回収し、光の玉を作ると、リゼラに向かって差し出した。


『エウパの他人への譲渡……? そんな事が可能なのですか?』

『集めた瞬間だけだけどね。 ちなみに亜人側のクリスタルはえげつないわよ。 周囲400mくらいかしら、の、エウパを一気に集める事が出来るの。 今回集めたのは一部だけど、足りると思うわ。』

『残ったエウパはどうするのです?』

『天に還すわ。 これでどの種族にも少しは魂が戻ると良いのだけれど。』

『それが貴女の目的ですものね。 私にそれが勿体無いなどとは言える筈もありません。』


 私が一度エウパを吸い取らずに拡散させたのを見て居たのだろうリゼラは、魂の量の話を信じる気になったようだ。

 こうして事実を一つ一つ証明させて行く事が、リゼラ達を説得する為に必要なのかもしれないな。


『一応、エルフ達が残した人間の子供の食べ残し・・・・があったみたいだけど、見る?』

『いえ……それは見なくても信じます。』

『そうね。 見て後悔するのは貴女の方だものね。』


 実は私の攻撃で人間の物なのか亜人の物なのか分からない程損壊していた腕や足を、人間の子供の物だとリゼラが信じるかどうかは五分五分だった。

 まあ、私も見たいかと聞かれたら二度と見たくはないので、正直リゼラが私の言葉を信じてくれて助かった部分はある。


『盾を私一人で持ってくるのは難しいので、兵士を二人程連れて来てもよろしいでしょうか?』

『……来ても良いけど、次のリープポイントに連れて行くのは断るわよ。』

『そのつもりです。 彼等にはこのリープポイントを見張って貰うだけですので。』


 ふむ……。 盾が欲しいと言い出したのは私だ。

 リゼラの提案に特に裏は無いと思う。


『良いわ。 じゃあ私は荷車を持って来るから、出来るだけ急いで戻って来て頂戴。』

『分かりました。 では10分後にここで落ち合いましょう。』


 言ってリープポイントから姿を消すリゼラだった。


 ◇


 盾を補充した後、すぐに次の目標のリープポイントへと向かった私達。

 そのリープポイントから約2km離れた地点まで辿り着いた私達は、荷車から降車して小休止を取る事にした。 遠視で確認したところ、現時点で私達が探知されて居る様子はないようだが、リゼラの作戦である彼女を捕虜の様な扱いをして進むという作戦は、全員が大きな盾を持って居るこの状態で成功するだろうか?


『私の盾は取り合えず貴女が持って貰えますか?』

『残念ながら私は盾が装備出来ないわ。』


 リゼラめ。 私に盾を持たせて相手を騙すつもりだったのか……。


『王女さま。 遠視で兎族か狐族がいうかわかあないですか?』

『兜を被っていたり鎧を着ていたりするから……目視じゃ判断出来ないのよ。』


 どうしたものか……。

 いっそどっちの種族も居なかったという事にして、いきなり攻撃してしまうか?

 だが、昔の私の様に無邪気な殺し方を、今の私は好まない。

 味方が居るならば、一人でも多く救ってやりたいというのが今の私の本心だ。

 現在、この周辺でエルフとドワーフの支配から抜けたいと思って居る種族は鼠族、猫族、狐族、兎族の4種族だと、狐族の少女から聞いた。

 その4種族にだけ、話をするというのは出来ないか……?


『私と王女さまだけで行くのはどうですか?』


 狐族の少女はそう提案してくれた。

 成程。 その4種族にだけ、相談したい事があると話を持っていく、か。

 ふむ……やってみる価値はありそうだ。


『リゼラ。 今回は絡め手で行くわ。 いざとなったら自分の身は自分で守って頂戴。 一応危害は加えない様には言っておくけれど、約束は出来ないわ。』

『貴女程では無いけれど、一応私も戦えるんですよ。 逆に殺さないように手加減してあげますよ。』


 そりゃ頼もしい事で。 それが虚勢じゃ無い事を祈るわ。


『じゃあ行くわよ。 兎族の女の子達にはここでリゼラと待機する様に伝えて頂戴。』


 私は狐族の少女に通訳を頼み、加えてもし兎族の兵士が居たならば、その人達と共に集落に帰れ、とも付け加えた。


『そう言えば、これは正真正銘魔法で作った水ですよ。 よろしければどうぞ。』


 と、いきなりリゼラが私に水の入った革袋を手渡して来る。

 革袋にも魔法が掛かっているのか、ひんやりとした冷たさを左手に感じる私。


『ここで出すあたり、本当にいやらしい性格をしているわね、貴女。』


 ふふ、と、微笑を浮かべるリゼラだが、正直言って有難い。

 手持ちの水筒の中にはあと一口程しか残って居なかったのだから。

 私は冷たい水で喉を潤し、念の為自分の水筒にも水を補充して、狐族の少女と共に歩みを進めるのだった。


 ◇


 リープポイントまであと500m程の所まで近づいたところで、亜人達から目視で発見された私達。

 何人かの獣人が私達に駆け寄って来るのが見えた。


『私は取り合えず喋れない事にするわ。 4種族にだけ伝えたい事があるって伝えて頂戴。 後は、私が首を縦に振ったら、はい、で、横に振ったら、いいえ、の合図ね。 わかった?』

『わかいました……。』


 駆け寄って来た獣人は全部で8人。

 恰幅の良い獣人は虎族か? 話には少し聞いた事がある。

 あと、少し間抜けな顔だが、恐ろしい殺気を感じる、猿族。

 その二人の獣人は顔まで虎や猿に近いので一発で分かったが、後の6人は人間の顔に近く、どの種族なのか判断出来かねる獣人だった。

 狐族の少女が何かを話し始め、その話を聞く8人の獣人達。

 最初は怪我をした狐族の少女と私を見て、憐れむ様な目をしていた彼等だが、少女の話が進むにつれ、彼等の表情が変わり、雲行きが怪しくなって来ているのを感じる私。

 4種族にだけに話があるという狐族の少女の言葉に、何故自分達ではダメなのかとでも問い詰めているのだろうか、遂には狐族の少女に怒声を上げ始めた虎族の獣人。


『王女さま、兎族の女を私達が保護してうのは信じてもあえたんですが……。』


 今はまずその兎族の女とやらを見せてみろ、の、一点張りらしい。

 …………いや。 猿族と虎族のにやついた表情が怪しい。

 こいつらにとって、同族じゃない獣人を助けるメリットは……あまり無いのよね。

 だとすれば、こいつらが考えて居るのは一つのみ。 先程から私の足先から胸までを舐める様な視線もそれを物語って居る。


 ――――良いだろう。 その下卑た考えは、私の戦意を煽るのには十分だったわよ。


『もう良いわ。 気分が悪い。 この人たち、殺すから下がって。』


 結局沈黙を破った私は、左手で小太刀を抜刀し、一気に虎の獣人の頭を切り落とした。

 そして、身体を回転させて、虎族の後ろに居た猿族の頭を硬化したプロミネンスブーツで蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばした猿族の獣人の頭は粉砕され、脳漿と血と頭蓋骨が飛び散って緑の草原を汚す。

 六人の他の獣人は、何故私がそんな行動に出たのか分からないのか、呆けた表情で私を見るので、


『もう一度伝えて。 4種族だけと話がしたい、って。』


 そう狐族の少女に言う私。

 狐族の少女は慌てて伝えるが、既に死体となった虎族と猿族の身体を見て、戸惑う様な表情を見せる6人の獣人。


『埒が明かないわね。』


 ならば、その4種族がリープポイントに居るかどうかだけを狐族の少女に聞かせる私。

 すると……猫族が3人、鼠族が2人、兎族が5人居る、と、狐族の少女から伝えられた。


『盾は結局必要無かったかもしれないわね。』


 独り言ちた私は、目先の六人の獣人を斬って、殴って、蹴って、悲鳴を上げる暇も与えず、地に還したのだった。


 ◇


 猫族! 鼠族! 兎族! 居るんだったら話をさせて!

 と、エルフ語で言い続ける様に狐族の少女に伝えた私は、彼女を先頭にしてリープポイントへとを切り刻みながら歩みを進めていた。

 狐の耳を隠さず、逆立った尻尾もそのままに、亜人を殺し続ける私の行為は、紛れもない反逆行為になっているのは分かって居る。

 だが、私が何故それを行って居るのか理解出来ない獣人が大半で、武器を取って戦闘態勢を取るものの、私を攻めあぐねているようだ。

 とは言え、既に20人程を斬り捨てた私を警戒はしているのだろう、私と狐族の少女を囲む様に陣取り始める亜人達。

 まさかまた肉弾戦を行う事になるとは思わなかったが、これもまたリハビリの一種だと思う事にするか。

 と、やがて兜を脱いで、猫の耳を晒しながら一人の猫族の兵士が近づいて来るのが見えた。

 怯えの様な物も感じるが、自分達に何か大事な話があるからこその私の行動なのだと理解したのだろう、彼は武器である長剣を鞘に仕舞い、私達と会話が出来る距離まで足を進める。


『猫族の少女二人と、猫族二人を前のリープポイントで解放した事を伝えて。』

『分かいました。』


 狐族の少女が猫族の兵士に詳細を小声で話し始める、と、驚愕の表情を浮かべて私を見て……数秒後、戸惑いの表情を浮かべて何かを言う兵士。


『4人を逃がしてくえた事には感謝すうが、僕達は逃げえない、だそうです。』


 ふむ……明確な叛逆行為をする覚悟は無い、という事か。


『エルフ達に復讐されるのが怖い?』


 狐族の少女が翻訳した言葉に、小さくこくりと頷く猫族の兵士。


『狐族は叛逆を選んだわ。 エルフに搾取される生活を、これ以上狐族は望まない。 人間側の協力者も得たわ。』


 ここで人間側という言葉を出す事で、私の意図が伝わったのだろう。

 私が斬り捨てた獣人の死体を見て、決意を固めた猫族の兵士は、猫族の言葉で何かを叫んだ。

 ようやく逃げる事に納得してくれたのか、そう思った私だが、意外な光景を目にする事になる。

 なんと、猫族の二人の兵士が、それぞれ近くの亜人に攻撃を始めたのだ。

 私の傍に居た筈の猫族の兵士も抜刀し、亜人の群れに突っ込んで行く。

 一瞬頭を混乱させられた私だが、鼠族と兎族の兵士も抜刀して亜人達を攻撃し始めるのを見て、遂に私は叛逆の狼煙を上げてしまったのだと気付く。

 私は退路を断たれるのを嫌い、自分達の後方に居る集団に飛び掛かる。


「ふっ!」


 息を吐くのと同時に小太刀を抜いた私は、体躯の良い獣人の鎧の隙間から胴体を斬り上げた。

 ずるり、と、上半身が半分ずれて、血しぶきが上がり、私はその獣人の下半身を蹴って少し距離を離すと、右側の獣人に身体を回転させながら斬り付けた。

 が、重い金属音と共に私の小太刀が弾かれる。 獣人の持って居る大剣も業物なのであろうか、鈍い光を発しており、


炎の剣フレイムブレイド!』


 ならば魔法攻撃ではどうかと炎の剣を右手に召喚し、全力で目の前の集団を右から横に薙いだ。

 魔法障壁を持たない亜人は一瞬で身を焼かれ、装備を溶かされ、やがて灰になり、魔法障壁を持って居た亜人はその障壁を何枚か削られながらも一撃を耐えるが、左から右への私の二度目炎の剣の攻撃で、炎に包まれる。

 大地を焦がし、炎の剣の攻撃を受けた全ての物質が焼けるか、溶けるかする状況を見て、私から距離を置く亜人達。


『今よ! 一旦リゼラ達のところまで下がって!』


 私は狐族の少女にそう命ずると、踵を返して振り返り、劣勢に見える猫族の兵士が視界に入り――――その兵士に加勢するように、高く跳躍してから彼を囲んで居る敵の右翼に炎の剣を叩き付けた。

 ドワーフの一人が果敢にも私の攻撃を読んで盾を構えるが、炎の剣はその盾をも溶かし、やがてドワーフの身体も炎に包まれると同時に、爆ぜた。

 が、炎の威力が高かったせいか、猫族の兵士の外套にも飛び火してしまい、私は慌ててその外套の焼けた部分を小太刀で斬り捨てる。

 戦場に慣れているのかどうか分からないが、猫族の兵士は外套を焼かれた事など気にも留めず、私の背中に自分の背中を合わせる様に移動すると、残る敵に睨みを効かせるように長剣を正眼に構え、私が再び地を蹴って敵に向かうと同時に、彼も私とは反対の方向に飛び出した。

 範囲攻撃が使えないのは私にとってはネックだが、こういう戦い方も悪くはないな、と、薄ら笑いを浮かべながら亜人を次々と斬り、焼き、私の後ろを取ろうとする亜人には渾身の回し蹴りを食らわせる。

 小気味良く吹き飛ぶ亜人の頭。 ――――が、軸にしていた私の左足に何かが付着するのを感じ、下を見る。

 と、ピキピキと音を立てて氷が地面から足に這い上がって来るのが見える。

 刺さるような冷たさに、痛みを覚える私だが、ブーツをプロミネンス化して一気に氷を溶かし、後ろに大きく跳躍する私。

 空中で周りを見渡すと、私に魔法を使ったであろうエルフが視界に入り、そのエルフから氷の礫が放たれるのが見えた。

 自由落下の途中で軌道を変える事が出来ない私は、マントもプロミネンス化して自分の身体を隠す。

 だが、隠れて居ない右足の脛に、尖った氷の礫が突き刺さってしまった。


「うぐっ!!」


 堪らず声を上げる私。 そして、左足を貫いた場所が、更に周りを凍らせようとするのか、鋭い痛みを左足に感じ始める、が、プロミネンス状態のブーツの効果で、氷結の効果が打ち消される。

 しかし、氷結の効果が打ち消されたのは良いが、礫が作った傷が裂傷である事に変わりはあらず、再び大地に足を付けた時には激痛と同時に鮮血が傷口から飛び散ってしまった。


「っ……くう!」


 私の苦悶の声と共に二人の亜人が私の左右を取り囲む様に移動し、そして同時に斬りかかって来た。

 これは黙っていれば避けられれないと判断した私は、右足に力を込めて右側から攻撃して来た亜人に硬化させたマントと共に肩から体当たりを食らわせる。

 態勢を崩した亜人は振り被った長剣を地面に叩き付けてしまい、そこを狙って亜人の首筋に小太刀の切っ先を突き出す私。

 喉を貫通した小太刀を、ぐり、と、回転させながら抜くと、鮮血が噴き出して私の身体をその血が染める。

 窮地を凌いだ事に一瞬安堵する私だが、同時に左側から攻撃して来て居た亜人の戦斧の、更に次の攻撃を予測して居なかった。 亜人は一度私の居た場所を空振りしていた戦斧を、更に回転させて勢いを付け、私の胴体に打ち付けて来たのだ。

 だが、右側からの攻撃だったのが幸いした。 マントと硬化した右腕でその戦斧の衝撃を受け止める事が出来、踏ん張った右足が地面を凹ませる。

 戦斧は柄の部分から先が折れ、明後日の方向へとその戦斧の先が飛んで行った。

 折れた戦斧の柄を絶望の表情で眺める亜人の腹に、左手に持った小太刀を突き出し、切っ先が背中まで貫通したと手で感じた私は、その腹を左方向に薙ぐ。 すると、内蔵と鮮血が傷口から零れ、足に両膝を付ける亜人。

 間髪入れずに硬化した右腕で亜人の顔を殴ると、中身の入った水瓶を割った様な音と共に兜と亜人の頭が砕け散った。


 しかし、私への攻撃はまだ止まらない。 エルフの次の攻撃は範囲攻撃の様だ。

 周囲の温度が一気に下がり、氷の礫が今度は上空から舞い降りて来た。

 もう味方への被害も考慮していないのか、私を再度取り囲もうとしていた亜人達にもその氷の礫が降り注ぐ。

 ならばこちらも、だ。


業火ヘルファイヤ噴出エラプション!」


 願わくば味方を巻き込みませんようにと、無駄に祈りながらも魔法を唱える私。

 周囲の氷の礫は展開された私の業火によって蒸発させられ、そして周囲の亜人達は私の業火で燃やし尽くされる。

 パリン! という魔法障壁が割れる音が聞こえ、その方向に左手を向け、左足を引き摺りながらも右足と尻尾を使って距離を詰める。

 業火が収まった瞬間、エルフを距離5mで目視した私は、


真紅炎噛クリムゾンフレイムバイト!」


 叫ぶ様に魔法を唱え、次々に割れて行く魔法障壁の後に続いて、


真紅嚥下クリムゾンスワロー!」


 私の唯一の回復魔法である連続攻撃を唱える。

 左足が段々と回復していくのを感じた私は、完全に魔法障壁を無くしたエルフに炎の剣を再び召喚して業火を浴びせるのだった。


 ◇


 亜人の死体は242人。 その中に、猫族の兵士が1人、鼠族の兵士が2人、そして兎族の兵士3人の数が入っている。

 彼等は、少数ながら良く戦ったと思う。 特に、私に背中を一度預けた猫族の兵士は、それからも奮戦して、劣勢になっていた兎族の兵士一人を庇った時に命を落としたらしい。

 名前が無いのは悔やまれるが、私は共に戦った戦士たちの為に黙祷を捧げるのだった。


『リゼラ、こっちは片付いたわ。 荷車を引いてこっちに来て頂戴。』

『狐族の少女がこちらに来て居ますが、何かあったのですか?』


 隠す必要は無いので、事実をリゼラに伝える私。


『……拙いですね。』

『え?』

『戦いの間、リープポイントから誰か飛んだのを見ましたか?』

『いや……そこまでは気が回らなかったわ。』

『その4種族の集落に、私ならすぐ軍を派遣しますが?』


 猫族が戦端を開いたのは周知の事実だ。 そして、兎族と鼠族も呼応したのも事実。 私達が狐族だという事も、もう亜人には知れ渡ってしまったのだとリゼラは言いたいのだろう。

 拙い一手だったのか? と、自分の行動を振り返る私。


『ですが、私に考えがあります。 取り合えず合流して話をしましょう。』


 ◇


 リゼラと共に現れた3人の兎族の少女に、駆け寄る2人の兎族の兵士。

 猫族の少女達と兵士が会った時の様に、5人は抱き合って自分達の無事を泣きながら確かめ合う彼等。

 一度兵士になった獣人は、2度と集落に帰る事は許されない。 戦場の秘密を守るのは勿論の事だが、エルフとドワーフが人間の肉を食して居て、それがどの様に補充されているのかも、彼等は知ってしまうからだ。

 だからだろうか、猫族の少女と兵士が前のリープポイントで解放された事を知った猫族の兵士二人も、涙ぐんで私の前で膝を付き、私の手の甲に口付けをした。

 言葉では伝わらないが、彼等にとって最上級の謝辞だと言うのが分かった私も、釣られて少し涙ぐんでしまう。


『その猫族の兵士の一人に、亜人の部隊に戻って報告して貰います。』

『……え?』


 突然のリゼラの指示に、口をぽかんと開けて反応してしまう私。


『猫族の少女が人間に人質にされ、戦わざるを得なかった、と、伝えるのです。』


 苦しい言い訳の様に聞こえもするが、一族への思いというのは、私が考えている以上に重いのだろう。

 猫族の涙ながらの私への謝辞は、それを裏付ける信頼性が、ある。


『他の4種族も、人間側に人質にされて、戦わざるを得なかった。 次の標的は、北のリープポイントだ、とも。』

『まさか……主力を次のリープポイントに集める気?』

『そうです。 そして、そのリープポイントに貴女の究極魔法を放って下さい。』


 開いた口が塞がらないとはこの事、か。


『簡単に言うけれど、誰が私の究極魔法の対価を払ってくれるっていうの?』

『その狐族の少女に聞いてみたらどうですか?』


 リゼラが何を言いたいのか分からない。 が、狐族の少女に私の魔法の対価の話をする私。

 一瞬驚いた顔をする少女だが、他の猫族と兎族にも説明し……


『私が、王女さまの弾に、ないます。』


 と、意外な返答が少女から帰って来た。


『私も、王女さまの為に何か出来う事が無いか、考えてました……。』


 そういう意味ならば彼女に確かに出来る事は、正に、一つだけある。

 だが、個人的にこの少女にはまだ生きて居て欲しい。 あんな酷い目に遭っていた彼女に、残りの人生は穏やかに過ごして欲しいという私の我儘だけれど。


『実は、王女さまに言って無い事があうです……。』

『……? 何?』

『私、妊娠したと思います……。』

『何ですって……?』


 妊娠って……まさか人間の子供を? そんな事が可能なのか?


『人間との間にたまに産まえる事があう子供は……人の形をしてないんです……。』

『どういう事?』

『聞いた話ですけど、透明な膜に内臓が詰まった様な……子供だそうです。』


 透明な膜。 内臓……。

 下手に遺伝子が近いが、少し違うせいで、遺伝子異常が起こるの……か?

 人間の妊娠期間の約三分の一で子供が生まれる狐族の遺伝子が、先に内臓を作り、だが外側が作られない状態で産まれて来る?

 推測でしかないが、こんなところか……。

 それで納得した。 他の女の子は殴られても居ないのに、この子だけ殴られていたのは、妊娠したのが発覚して、破棄・・される寸前だったから、なのか。


『そして一度その子供を産んだあ、子供を産むここが、壊えてしまうんです。』


 言って、自分の腹を指す狐族の少女。

 ……何とも胸糞悪い話である。 が、合点がいってしまう。 一度異常状態になってしまった子宮が、その出産で欠損してしまうのだろう。


『それで、貴女は……集落に戻れると知った時、嬉しい顔をしなかったのね……。』

『本当は、帰いたい……です。 けど、こんなかあだじゃ……もう誰も、相手になんかしてくえないです……。』

『……リゼラ。』

『なんですか?』

『貴女、この子が妊娠してるの、知ってたの?』

『聞かされては居ませんよ。』

『そういう言葉遊びは要らないから!』

『痩せて居るのに不自然に下腹が膨らんで居るのは知っていましたよ。』

『この子が……私の究極魔法の対価になる事も、それで察した?』

『いえ。 そもそも私はその魔法の対価という物がある事を知りませんでした。 なので、相談してみればどうかと提案したまでです。』


 飄々と話すリゼラに一抹の不信感を抱く私だったが、対価という話をしをした時点で、リゼラが考え付いたのは事実だろう。 それまで、確かに対価が必要だと伝えた事は無かったからだ。 


『このリープポイントを奪取したならば、司令官を呼び寄せます。 貴女の言う、メリダを攻撃出来る力を、その司令官に見せて頂けますか?』


 リゼラの提案に、私は懇願するような顔をして私を見る狐族の少女を一瞥して――――決めた。


『この一手が、この世界の戦争を変える、始まりの合図になる。 貴女はそう言いたいのね?』

『亜人側も本気で来るでしょう。 何千、何万かはわかりませんが、それを相手に撃滅出来たならば……人間も亜人も、貴女を脅威と見做すのは確実でしょう。』

『わかった。 やるわ。』


 もう一度深く頷いて、覚悟を決める私だった。

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