悪魔転身
孝太は、陽菜が餌の存在を探知した場所に向かって駆けていた。
それは比較的迷宮の入り口の近くであり、一分程でその餌が歩いている通路に辿り着く孝太。
陽菜が探知した一行は、松明を二本灯して通路を歩いており、孝太はその一行の背中に居た。
ふと、試してみたい魔法がいくつかある事を思い出す孝太だが、殆どは集団攻撃魔法なので、普通にバゼラルドでの直接攻撃を選んだ。
集団は男性3人、女性2人の、どちらも東アジア系に孝太の目には見えた。
その集団は、和気あいあいと会話を楽しんで迷宮の通路を進んで居たのだが、
「それでさ、内田の奴が――――え?」
話していた相手の首が二つ飛んで、自分の目を一瞬疑う一人の男性。
そして、呆けて居たところに、孝太のバゼラルドが襲い掛かる。
「――もしかして、日本人?」
が、男性の首のところでピタリとバゼラルドの燃え盛る炎の先端を止めた孝太は、そう男性に尋ねる。
「そ、そうだけど……。」
聞き慣れた日本語に対して、目の前で起こった事と関係があるのか無いのか必死で考える男性だったが、『君は一体何をしているのか。』と、聞こうと口を開いた瞬間に、
「好都合かな。 ……まあ良いや。」
そう孝太が言った後、他の2人と同じく首を飛ばされたのだった。
◇
「お待たせ。」
孝太はそれから5分程で、日本人女性2人の手首を片手で持って、その2人を引き摺りながら陽菜達の前に現れた。
女性2人は真っ青な顔をしており、歯をガチガチと打ち鳴らして居た。
流石の陽菜もこれから起こる惨状を考えて、少し顔を青ざめさせる。
だが、佳苗は逆に孝太の残虐性に惹かれたのだろう、うっとりとした目付きで孝太を見つめて居た。
「小野寺さん。 石塚君。 二人共聞いて欲しいんだけど。」
「な、何?」
「な、何だよ?」
多少想像は付いたのか、立っていた場所から後ずさる二人。
「迷宮を攻略するって言うのは、こういう事もするって事を二人にも分かって貰わないとダメなんだよね。」
「こ、こういう事って……。」
自分も歯をガチガチと鳴らしながら、孝太が引き摺って来た二人の女性を見る里香。
20歳前後と見られるその女性達は、魔法系の資質がある人物と思われ、それぞれ白いワンピースのローブと、水色のワンピースのローブを着ていた。
ローブは孝太に引き摺られて来た事で薄汚れており、そのローブに覆われて無い膝下に、無数の擦り傷が見える。
その更に下を見ると、彼女達はそれぞれブーツを履いて居たのだが、そのブーツの踝の部分に大きな切り口が出来ているのが里香の目に入ると、孝太に足の腱を斬られて歩けない状態なのだと認識する里香。
そして、手首にも刺傷があり、手首から先をだらりと下げている様子を見ると、腕の腱も斬られているのだろうかと更に顔を青ざめさせる里香。
そうやって殺さない程度に無力化された彼女達の表情は恐怖に満ちていたが、逃げ出そうという意思や、抵抗しようという意思は不思議と見受けられない。
まだ子供の部類に見える孝太に、まるで人体を壊しなれた手付きで的確に手足を斬られた事、そして無言でいきなり引き摺られ始めた事への現実を受け入れられず、ただ恐怖だけで感情が満たされていたのだ。
そんな彼女達を冷たい視線で見る孝太は、やがて口を開く。
「君達にはちょっと荒療治が必要なんじゃないかなと思ってね。 僕達と同じ日本人で、しかも女性を初めての人にして貰おうと思う。」
「ちょ、ちょっと待てよ! 何で俺達がそんな事しないとなんねーんだよ!」
「君達にも殺人集団との戦闘に参加して貰わないと、勝率が上がらないからね。 口だけで戦うって言ったって、いざとなった時に女が斬れないとか、身体が動かないとかなったら困るんだよね。」
「ちゃ、ちゃんとやるから! こんなのやめてよ二ノ宮君!」
「小野寺さん。 君が一番信用ならないんだよね。 まるで僕の事を死神か何かみたいに思ってるでしょ。」
「そ、それは……。」
「ほら。 彼女達の血で既に濡れているショートソードだよ。 ところで、剣とか、装備出来るの?」
「わ、私には……出来ない……。」
装備出来るか出来ないかでは無く、それを受け取って何かをする事も出来ないという意味で言った里香だったが、
「そうか。 装備出来ないのか。 じゃあ、特殊効果は使えないかもしれないけど、普通の刃物として使って。」
笑顔でそう言った孝太は、里香の手を無理矢理開いてショートソードの柄を持たせると、再び無理矢理閉じて、彼女に握らせる。
「もし落としたら、何か罰があるかもしれないと考えておいて。」
ちらり、と、女性二人に視線をやる孝太。 その仕草で、あんな風になりたくなければちゃんとやれと言う意味なのだと解釈し、戦慄を覚える里香。
死神なんかじゃない。 ――――この人は悪魔だ。
額と手の平に急に汗をかくのを感じる里香。
「石塚君。 君は自分の剣でやってくれるかな。 ――それじゃ、二人とも自己紹介してくれる?」
笑顔のまま、女性二人にそう言う孝太。
だが、状況が分かっていないのか、これから何をされるのか想像して怯えたのか、女性はどちらも声を上げる事が出来なかった。
「そうか。 お姉さん達も分かって無いんだね。 ……それじゃ、小野寺さんと石塚君の復習も兼ねて、この迷宮のルールを説明してあげようか。」
腕を組みながらそう言い出した孝太。 固唾を呑んで孝太を見る六人。
「迷宮を攻略出来るのは全部で六人。 だからちゃんと攻略する事を考えるなら、今ここで七人居る誰かの願いを叶えないという事になる。 僕達は
と、いきなり孝太は白いワンピースを来た背の低い方の、ショートカットの女性の太腿をブーツの踵で踏み付け、ぐりぐりとつま先を左右に動かし始めた。
「ぎゃぁぁ!! いたぃぃぃ!!」
女性の悲鳴が、通路に響き渡る。
「お願い! もう許して! 何でもするから!」
放心していた状態から、いきなり痛覚を刺激されたせいだろう、女は生命の危機を感じると命乞いをし始めた。 もう一人の女性も、その女の懇願する声を聞いて自分もそうした方が良いのかと、一度彼女に視線を向けた後は、自分も孝太にすがるような視線を向ける。
「へぇ? 何でも? 僕達に協力してくれるって言うの? でも、それはちょっと信じられないな。 初対面だし。 そうだ。 自己紹介してくれたら僕の考えが変わるかもしれないね。 じゃあ、お姉さんからどうぞ。」
「えっ……わ、私から? わ、分かりました。」
明らかに年下に見える少年に、敬語を使って答える女性。
「ぬ、
「ふぅん。 沼田さんか。 よろしく。 そっちのお姉さんは?」
「
「あれ? 修善寺さんは一歳年上なのに同じ学年なの?」
「一浪したので……。」
「あ、そうか。 人生色々あるよね。」
笑顔でそう言う孝太。 と、話が通じる相手な事に安堵したのか、少し顔を綻ばせる清美と明美。
「さて。 こうして知らない人も迷宮に居るという事は、競争しないとならないと言う事になるね。 だから、必然的に挑戦者同士の戦闘がある。」
「「え?」」
考えを変えてくれるんじゃ、と、孝太に少し期待し始めていたところで、どん底に突き落とす様に話を続ける孝太に、再び顔を青ざめさせる二人。
「基本的に他の挑戦者はあまり他の挑戦者に介入してないみたいだけれど、迷宮の中では僕達の暴力性が増していて、もし他の人を殺せば、その人のポイントと経験値を奪えるというのを知ったなら……僕達を狙った殺人集団の様な人達が産まれるって事で、かく言う僕や陽菜も、樫木さんも既に殺人集団の部類に入る。」
「私と石塚君は……まだ人を殺した事が無いから……。」
「そう。 小野寺さんも石塚君も、まだこっち側には来て無いんだよね。 そんな状態で奴等とやるとなって、腰が引けてしまえば、頭数でもLVでも負けている僕達はもっと不利になる。 まあ、それでもなんとか勝てるかもしれないけど、君達は死体になっているかもしれないね。」
「俺達の為に……これをやってるって事なのか?」
「さっきからそう言ってるじゃないか。 同級生で、知っている間柄だからこそ、君達にはこっち側に一緒に来て貰いたいんだよ。」
目を細めてそう言う孝太。 その目を見て、遂に頷く石塚。
「殺す前に……どっちかと
「石塚君。 意外にゲスいね……けど、それはダメだよ。 こっちに女の子三人が居るんだよ? そんな事したら君、完全に嫌われちゃうだろうね。」
「じゃあ、本当に殺す、だけなのか?」
「言っている意味が良く分からないけど、そう。 ――殺すだけ。 それには必要以上に悪意も要らないし、むしろ義務感を抱いてやると気持ち的に楽だと思うよ。 小野寺さんもそろそろ覚悟出来た?」
「わた……私は……。」
「君が悪いんじゃない。 この世界がそういう風に出来ているのが悪いんだ。 そう考えて、この人達を殺してみようと考えて。」
孝太の正直な言葉は、里香の胸に突き刺さっていた。
悪魔だと思っていた彼の言う事に、反論出来る言葉が何も見つからない。
やがて、自分の意思でこの世界の義務という言葉を繰り返し頭の中で思い浮かべ、そして目の前に居る女性二人を見る里香。
「あっ!」
あまりにも意外な結論を出した自分の心に、思わず声を上げてしまう里香。
彼女の心は遂に二人を殺す事を受け入れ、里香が産まれて始めて覚える嗜虐心という感情を湧き上がらせたのだ。
それは、少し性的興奮に似ていると感じた里香。
厳粛な家庭で生まれ育った彼女であり、性的な行為は神聖な物として受け止めて居たが、彼女自身が産まれてから一度も性的欲求を感じた事が無いのかと言えば、勿論ある。
嗜虐心と性的欲求は違う物として考えて居る人も居たが、彼女の場合はそれが一緒くたになってしまったらしく、これは抱いてはいけない感情だと頭の中で一旦否定するが、既に心で抱いて居た嗜虐心は、押さえつける事で逆に大きくなってきた。
『自分が悪いんじゃない。 自分をそうさせるこの世界が悪いんだ。』
彼女は、遂に自分の言葉で自分の全てを納得させ、嗜虐心を解き放ったのだった。
「やれそうかい?」
「……大丈夫。 私、やれるよ、二ノ宮君。」
◇
「やめて! お願い! 殺さないで!」
そう懇願し、先の動かない手と足を必死に使って床を這って逃げる清美。
結構厚化粧をしていたらしい彼女の目は、自分の涙の線に添って流れ落ちたマスカラで真っ黒になっていて、そんな無様な格好が彼女を追い詰める石塚と里香の嗜虐心を煽る。
里香と石塚には、それぞれ一人づつ女を殺して貰うつもりだった孝太だが、これならこれでもっと良いかもね、と、腕を組んで首を何度か縦に振るのだった。
「えいっ!」
これから人を殺そうとするには可愛すぎるであろう声が里香の口から漏れる。
まるで、子供が悪戯をしているかの様な口調だった。
そんな可愛い声と共に、血まみれのショートソードを突き出す里香。
「あぁぁぁ!!!!」
ショートソードは、清美の腹に突き刺さった。
先端は10cm程埋まり、更に、
「えいっ!」
という里香の声と共に、もう10cm清美の腹に沈み込む。
里香が一思いに殺さなかった事に、驚愕を覚える孝太だが、里香の表情を見て、『ああ。』と、納得する。 里香は、恍惚とした表情で微笑みを浮かべていたからだ。
逆に、石塚の方がぎょっとした表情で里香を見る。
彼の場合は、殺す前に犯して良いかと孝太に聞いた事から、嗜虐心と性的欲求が違うところにあったのだろう。 彼は一思いに首を跳ねようと振りかぶっていた長剣を一旦引き、まるで里香の行動をトレースしなければならない義務感でも感じたのか、
「こうか?」
と言って長剣の先を清美の太腿に突き立てた。
「あぁぁ!!!! 何してんのよあんた達!! 何してんのよ!!」
「……刺してる。」
小声でそう答える里香。
彼女は今まで、欲求を押さえる事しか知らなかった。 そうしないと、堕落すると思っていた。
遂に彼女の中での根っこの部分であるとある神様への信心が、全てこの世界の倫理で塗り替えられると、自分の欲求を押さえる必要が無くなったのだ。
更には、堕落したならば自分は悪魔と等しいとそれを受け入れたのである。
「こ、孝太……小野寺さん、壊れてしまったのではないですか?」
孝太に向かって小声で話す陽菜。
「……ちょっと荒療治過ぎたんだろうか……。」
「これ、後から滅茶苦茶後悔するパターンだと思うんですが……。」
「……僕達も最初こんな感じだったのかな。」
「ああ……。 そう言われると、そんな気も……。 なら大丈夫ですかね。」
次は腕を刺し始めた里香を眺めて、そう呟く二人だった。
◇
清美は全身を里香によって9回、石塚によって8回刺されると、ようやく絶命した。
10回めまでは急所を外して居たせいか、元気に呪いの言葉を二人に吐いていた清美だったが、その10回めの石塚の腹部への攻撃が急所だったらしく、それからは唸るような声を上げるだけだった。
そして17回目。
里香は自分で最後の止めを刺したかったのか、まだ無傷だった喉にショートソードを突き立てた。
「あはっ。」
またしても可愛い声を上げながら清美に止めを刺した里香に、けしかけた張本人である孝太も若干の恐怖を覚えた。
陽菜に至っては、ちょっとやり過ぎだと片手で頭を抱えて俯いている。
一転、佳苗は、良いぞもっとやれという感覚だったらしく、もう殺してしまうのか、勿体無い、と、里香の最後の一撃に落胆の溜息を漏らしていた。
そして、溜息の後に、孝太のリュックサックを頭に被せられて、手足を縛られたもう一人の女性、明美に目をやる佳苗。
返り血で血まみれになっていた里香と石塚は、佳苗の視線でもう一つおもちゃがあった事を思い出したのか、びしゃびしゃと音を立てながら清美の身体から溢れて出来た血溜まりの中を歩いて明美の所へと向かう。
元の里香から見たら、全く別人の様に感じる孝太達だが、博愛主義者の素顔が見えたようで、以前の里香よりも何故か人間らしさも感じていた。
その人間らしさとは、人間の生物としての本能に近い部分を里香が見せた事でそう見えるのだろうが、彼女も迷宮でけしかけたならば多少暴力性が出るだろうと考えて居た孝太の予想とは、度合いの意味では大きく外れたと言える。
かつて、里香が信じている神様の一部の宗派が、若い女性を魔女として火炙りにして殺して居た時期があるが、まさか神の教えとして人を殺すことで心の安寧を保って居るのだろうかと里香を見る孝太だが、誰かの名前を言う訳でも、神の名前を言う訳でも無い彼女には、そんな宗教じみた様子は無い。
ならば一体何故? と、首を傾げる孝太だったが、自分が既に堕落し、悪魔の道に足を踏み入れたのだと彼女が自覚して居るとまでは想像が出来なかったらしい。
「こんばんは。 明美さん、だっけ? お友達、殺しちゃいました~。」
顔に被せられた孝太のリュックを取ると、まるで観光ガイドがスポットを紹介する様な口調で言う里香。
彼女は自分の事を悪魔だと定義すると、湧き上がる嗜虐心をその定義に合わせ、自分の行動基準としており、彼女が定義する悪魔、すなわち彼女が考える二ノ宮孝太を演じていたのだ。
「清美!! 清美!! 何て事を!! 何て事を!!」
「自分の事よりもお友達の事を考えるなんて、偉いねぇ、お姉さん。」
満面の笑顔でそう言う里香。
「こ、今度は俺に止め、刺させてくれよな。」
と、里香の暴虐さに完全に乗せられた石塚が、血まみれの長剣を肩に担いで言う。
「ひぃぃぃ!! やめて!! お願い!!」
「でも、明美さん仲間じゃないから。 ごめんね。」
「何でもする! 何でもするから殺さないで! お願い!!」
「何でも? じゃあレイプされる?」
「……は?」
「されようか。 私それを見ててあげるよ。 もしそれで私達が満足したら開放してあげる。」
「……い、いや……それは……。」
先程それはやるなと言っていた孝太をちらりと見やる明美。
頷くな。 頷いたらレイプされた後に殺されるぞ、と、首を横に振る孝太。
ガクリと身体を項垂れる明美。
「あれ? 残念。 分かっちゃった? うん。 そう。 明美さんは絶対殺されちゃうんだ。」
「あぁぁぁぁ……。」
里香の言葉に、孝太に足を斬られた時に一度失禁しているにも関わらず、もう一度漏らしてしまう明美。
彼女も態々漏らした部分を見なければ良いのだが、自分の下腹部に視線をやって、漏らした事を里香に気付かせてしまう。
「漏らしたんだ? でもさっきからお尻のところ濡れてたよね。 じゃあ、二回目のお漏らし?」
「……っ……はっ……。」
「ねぇ。 聞こえてないの? 二度目のお漏らしなのかって、私は聞いてるんだけど。」
血塗れのショートソードを明美の首筋に当てて言う里香。
「二度目……です。」
「そう。 汚いね。 恥ずかしいね。」
明美は栗色のロングヘアの髪型で、長さは彼女の腰まであり、その彼女の髪の毛を小さく一房つまみ上げると、まるでお漏らしのお仕置きだと言わんばかりにつまみ上げた髪の毛をショートソードで、ぞりっ、と、引き切る里香。
「何かあんまり綺麗な髪じゃないね。 髪の色とか抜いたりしたからじゃないの?」
そう言いながら、斬った髪をぱらりと地面に落とす里香。
「何でそんな事……。」
あなたに言われなきゃならないの、と、髪を斬られた事に一瞬腹を立てて言おうとした明美だが、そうやって何かを言う事を期待していたであろう里香の表情を見て、続きを言うのを止めた。
「全部言い返したらお仕置きでレイプしたんだけどな。 残念。 途中で言うの止めちゃった。」
「いやー、小野寺。 流石にレイプとかしたら二ノ宮に怒られるって。」
「石塚君が言い出したんでしょ。 殺す前にしても良いのかって。 私は大丈夫。 石塚君の事、そんな事で嫌いにはならないよ。」
「そ、そうか? それじゃ……やっちゃうか?」
「やっちゃえ。」
親指を一本上げて満面の笑顔で言う里香。
「――時間の無駄になるよ。 石塚君が下半身丸出しの所にもしあいつらが来たらどうするの。」
正直同級生が他人をレイプしている光景を見たく無いだけだったが、もっともらしい理由を付けてそれを止める孝太。
「ちぇー。 生レイプが見れると思ったのにな。 石塚君。 今度暇な時やろうよ。」
「えっ!? 小野寺が俺としてくれんの!?」
「……違うよ? 何言ってるの? 私はレイプされたいんじゃなくて、したいの。」
「あ、あぁ。 そういう事か。」
「そう。 だから、暇な時に一緒にレイプしよ。」
「そりゃ、小野寺一人じゃ出来ないからな……。 い、いいぞ。」
変に話を纏めた里香だったが、自分の見ない所でなら良いと陽菜と孝太は判断したのか、二人の会話を遮る事はしなかった。
ちなみに、佳苗は実は今やって欲しい派だったが、孝太と陽菜の空気を読んで何も言わなかった。
◇
明美の場合も、孝太と陽菜から見れば酷い殺し方となった。
簡単に死なない様に、石塚はブーツを脱がせた明美の足の先端から、そして里香は手の指から順番に剣を突き刺して行ったのである。
明美の死因は失血性ショック死だった。
里香が明美の右肩を突き刺して、石塚が右足の付け根を刺した時、身体に血が足りなくなって死んだのだが、急に死んだので逆に二人は驚いていた。
だが、最後に殺したのがどっちなのかがポイントなのか、
「多分私かな。 だってこっち見てたもん。」
「いやいや。 俺だって。 刺した後に身体がビクンって跳ねてたし。」
そうやって言い合う里香と石塚。
流石に明美が死んだら冷静になるかと思っていた孝太だが、一度熱の入った彼等は、中々冷める事無く湧き上がる嗜虐性に身を委ねており、次に来たと陽菜に知らされた獲物に、舌舐めずりをし始める。
「ねぇ、二ノ宮君。 その人達も殺すの?」
「俺も前線に立っても良いか?」
「君達……。」
ちょっと度が過ぎると言いたくなった孝太だが、もうこれはこれで仕上がりだと思うしか無いと決めると、
「じゃあ、石塚君は僕の指示する相手に斬りかかってみて。 小野寺さんはヒーラーなんだから、前線に出ちゃダメだよ。」
そう二人に指示する。
「えっ? じゃあ、私は見てるだけなの?」
「……最後に止めを刺す時はやっても良いよ。」
「その時は二ノ宮君、また武器貸してくれる? あーあ。 鈍器買っておけば良かった。」
「鈍器は装備出来るんだ……。」
「うん。 何でだろうね。 刃物はダメなんだけど鈍器は大丈夫なんだ。」
「……じゃあ、鈍器を買えたら前線に出るのを考えておくよ。」
「楽しみだなぁ。 一方的に殺すのも楽しいけど、やっぱり殺し合う方がドキドキするよね。」
「……まあ、それに関しては同意見かな。」
一向に以前の里香の方に戻らない彼女に、自分のした事の罪の重さを感じながら会話する孝太。
あの博愛主義者をこんな風に変えてしまうだなんて、と。
だが、前の状態だと使い物にならなかったが、これならば本気で前線に立たせても戦えそうだ。
彼女は作田志乃とは違い、バトルプリーストと言うカテゴリーに分類される素質らしい。
彼女が喜々としてその鈍器で人を殴り殺す事しか想像できない孝太は、軽く頭を押さえるのだった。
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