4章:愛のカタチ

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 会社の屋上で缶コーヒーを片手にイヤホンを両耳に付けていた優也。

 そんな彼の肩を後ろから近づいて来た人が軽く叩き優也は片方のイヤホンを外しながら振り向いた。そこに立っていたのは帆花。



「何聴いてるですか?」



 優也はそれに対し外した方は再び耳に付け反対側のイヤホンを彼女に差し出した。それを受け取ると帆花は答えを聴く。



「これって先輩が前好きって言ってた人ですか?」

「そう。蛇希」

「へぇー。良い声ですね。それに曲もいい感じ」

「昔から辛い事があっても楽しい事があっても特に何もなくても蛇希を聴いてるんだよね」



 それからは二人共黙り、聴こえてくる蛇希に耳を傾けた。

 その曲が終わると帆花はイヤホンを外して優也に返し、優也もそれをポケットに仕舞う。



「いいですね、蛇希。家に帰ったら色々調べてみよっと」

「どれもいい曲だよ」

「楽しみです」



 帆花はそう言いながら笑みを浮かべてた。



「あっそうだ。先輩。今日仕事終わったらご飯行きませんか?」

「いいけど、八木って意外と飲むよね。昨日も飲みに行ったのに」

「いや、今日は違いますよ。飲みにじゃなくてご飯です」

「居酒屋とかじゃなくてってこと?」


「はい。ちょっと前から行ってみたいお店があって、どうせなら先輩と一緒に行こうかなって。確か先輩ってカツ好きでしたよね?」

「好きだね」

「カツが美味しいって聞いたお店があるんですよ」

「ほんとに?」


「はい」

「じゃあ休憩してないでさっさと仕事終わらせないと」

「そうですね。カツの為に頑張りましょう!」

「カツの為に」



 そう言うと二人は仕事へと戻った。これが終わればカツという気持ちのおかげかどうかは定かではないが、早めに仕事を終わらせた二人は定時に退社。

 そして帆花の言っていたお店へと向かった。

 その道の途中、急に足を止めた優也は開店前のバーに張ってあったポスターに目が留まっていた。



「どうかしたんですか?」



 急に足を止めた優也のところに戻ってきた帆花は当然のことながらそう尋ねた。それに優也はそのポスターを指差す。



『2月14日 開店記念LIVE 蛇希』



 それは開店とそれを祝う特別LIVEのお知らせ。



「この人って」

「うん、蛇希。ここでライブやるんだ。知らなかった。行こうかな」

「でもこれ見てください」



 帆花が指差した場所には特別LIVEの参加条件が書かれていた。



「男女ペア限定って書いてある」

「バレンタインだからですかね?」

「あぁ。そういうことか」



 その文字を見ながら優也は一緒に行くような蛇希好きの女性が思い浮かばなくて、というより一人しか思い浮かばず諦めていた。

 それが無意識で表情に現れポスターの前で落胆を浮かべる。



「もし良かったら一緒に行きます?」



 そんな表情を見たからかそれとも優也と一緒に行きたかったのか帆花は顔を覗きこみながらそう尋ねた。



「え? いいの?」

「はい。蛇希のことはまだ全然知らないですけど今日聞いてみた感じ良かったですし、先輩が行きたいならいいですよ。付き合います」

「ありがとう」



 蛇希のこのLIVEに行けるということに、自然と顔には笑みを浮かべながら帆花にお礼を言う。



「いーえ。でもその代わり今日のご飯は先輩の奢りで」

「ちゃっかりしてるなぁ」

「そんなに褒めなくてもいいですよ」

「分かった。僕が奢るよ」

「やったー! なら早く行きましょ。私お腹空きました」



 そして二人はそのバーの前から歩き出しそのお店へ向かった。



「先輩の奢りなら値段気にしないで好きなのたのんじゃお。あっ! デザートも食べていいですか?」

「さては遠慮というものを知らないな? でもいいよ好きなのを好きなだけ食べな」

「やったー」



 それから二人はカツが美味しいというお店で満足五つ星の食事をした。

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