第20話 親子クッキング
もはや 離宮「子供の城」と言っても良さげな様相を示して来た我が住まい。
食堂の両側には、親子クッキング可能な子供サイズの調理室と、コックさんが使う厨房がついている。
調理室の調度品は 小学生が足台無しで使える高さ。
なので幼児さんには足台が必要なのだけど、なんとなんと 3歳児用と5歳児用の2種類の足台が用意されていた!\(◎o◎)/!
ローゼンタールの人々には 親子クッキングの発想そのものがなかったので、
3歳の子が 三角巾にエプロンつけて、粉や牛乳を計って混ぜて、蒸しパンを作ったり、包丁でキュウリやハムを切ってサンドイッチを作るのは かなりの衝撃だったみたい。
そしてまた 子どもと一緒に作る楽しみにはまっちゃったんですよ、お爺ちゃんたちは!
(もっとも根が科学者である神官爺ちゃんたちなので、幼い子どもが楽しんで計量する=科学の基礎学習をする「調理」の真価に気付かされて感激したという要素もつよそうなのだけど・・
結果的に料理人も科学の一翼を担う人材と認められ、ローゼンタールにおける地位が向上したと コックさん達から後日感謝されました)
おかげさまで 私はレシピを書き出し、厨房さんと材料や用具の確認をして
足りない道具を裏方さんに設計図を書いて渡すだけの係になっちゃいましたよ・・
子供達が 楽しく過ごせるのならそれでいいんですけどね。
子供たちにとって料理をするのは、あくまでも自分達が食べたいものを作ることが目的。
そしてうまくできた作品(料理)を 皆に見せたい・食べてもらいたい♡と思うのも
褒められるのが大好き&みんな仲良しな雰囲気が大好き♡な子供達にとっては、あたりまえのこと。
というわけで、いつもお世話になっているお兄さん達・おじさん&お爺ちゃんたちと一緒に食べたい♡配りたい♡ と思うのも これまたこどもにとっては当たり前の感覚。
そこに便乗したブックストック達は、せっかくだからとサーブの仕方や おもてなし役・お客様役のふるまい方をしっかりと子供達に伝授。
もちろん事前にその旨伝えられていた私は、厳しいお作法教室ではなく、「ごっこ遊び」として楽しい遊びの形で伝えてねとお願い。
「ごっこ遊びってなんです?」(サン)
「お客様の役とか、大人社会のいろいろな立場の人の役になって、対人マナーを演技(=ごっこ遊び)として学ぶのです。
お互いに役を交代しながら遊ぶので、自然と立場の異なる人に対する思いやりと礼儀作法&言葉遣いの両方を身に着けることができるわ」
「遊びだから あくまでも和やかに楽しい雰囲気で。
大人は役のお手本となっても 無理に教えようと紙習わせようとかしてはダメよ。
きれいにふるまえば 子供は自然にマネをして覚えるから」
半信半疑で お客様ごっこに参加した官吏や神官さん達は、緊張感なく、どころか楽しそうに マナーを子供達が身に着けていく様を見て いたく感銘をうけていました。
「おれも 子どもの頃に「王宮ごっこ」してれば、所作や言葉遣いに緊張せずに勤めを果たせたんだろうなぁ」とは騎士達のつぶやきでした。
サンやマッチョサン・アルフレッドの提案で、城内の各部署に アフタヌーンティーの配達に行くことになりました。
図書室 魔導士のたまり場 詰所など、毎日1か所づつ回っては、その場その場にふさわしい挨拶をしてお土産を渡して回るのです。
一番むつかしかったのは 王様や法皇様のところへの差し入れ。
王様の前 法皇様の前 それぞれにお辞儀の仕方が違うんですって!
そして お二人がそろっている時と どのお部屋にいるかでも違うというのだからもうびっくり!
サンは喜々として お辞儀練習の指導をしてくれましたww
私はと言えば 毎日 お城物語を考えて就寝前に語って聞かせたので、子供達は 物語の登場人物になりきったつもりで 楽しく お辞儀や歩き方の練習をしていました。
各部署を回り終わったころ、今度は いろいろな人達が お客様としておやつ時に来てくれるようになりました。
おかげで 子供達はすっかりおもてなし上手に。
お城の皆さまのおかげで、子供達は この国の「身分に応じたマナー」の基本を身に着けることができるようになりました。
これを企画したブックストックさん凄いです!
「こどもが大人のマネをするのを「不敬だ」と押さえつけずに、ごっこ遊び=「マナー教育」と肯定することにしよう」と報告を受けた王様と法皇様は決定したそうな。
親子クッキングをきっかけとして、子供達にローゼンタール流の作法を教え、大人の児童観の変容にまでもっていった宰相様の手腕に感心しました。
「いやいや 蒸し器の導入により料理の新領域をもたらし、子供もできる簡単調理法を導入して我々男の手料理を充実させた あなたの功績もすばらしい」とホーリー隊長
「子供達の調理を手助けするためにあなたが行っていた『調理の為の補助技術』や『下ごしらえの手法』は、我々調理場の人間にも刺激的でした。
これまで 毎回 提供する時間にあわせて、人海戦術でゼロから一斉に作っていたのです。
しかし これからは、空き時間を有効活用して、提供前の調理の手数を減らすことにより、より効率的に厨房を経営するとともに、調理法の多様化をはかることができそうです」(調理師の方々)
「それなら 奥さんたちが戻ってきたら 家庭で夫が家族の為に料理をして 妻の休息日を作ることも可能になりますね」
「えっ! なぜ妻に休息日を与えねばならんのです?」(アルフレッド)
「男の人は お勤めがお休みの日があるでしょう。
妻は 毎日家事をしていたら お休みの日は1日もないですよ」
「それそれ この10年で実感しましたなぁ。
妻がいなくなってからというもの 休日には自分で家事をしなくてはならないことが はじめは不思議でしかたなかったのですわ・・」(図書館勤めの方々)
「最初の頃は 洗濯係を捜しに城中を歩き回ったな そういえば」(マッチョサン)
「くそっ 妻がもどれば もう自分で洗濯も料理もしなくて済むと思っていたのだが・・」(某騎士)
「何をバカなこといっておるのじゃ」
突然フェンリルが 言葉を発した。
その後 私達以外の人々は眠り込んでしまい 夢の中で 家事労働の分担と夫婦の役割分担の在り方に関する講義をたっぷりと受けたそうだ。
フェンリル先生とエリザベス先生から。
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