第19話 極秘情報!?

その夜 ふと目が覚めると傍らには 黒猫と白狼がいました。


「えっ」


「にゃ~ん」黒猫はペロリと私の頬をなめて言いました。

「ついてこい」


半信半疑で起き上がり ちらりと時計を見ると深夜2時。

 夜中は全員寝ているんじゃなかったっけ?


「早くしろ」今度はフェンリルにせかされました。


とりあえず着替え、フェンリルに促されるままにその背中にまたがると

ひらり 彼は窓から外に飛び出し

 えっ?窓 いつ開けたの??


気が付くと満月の見えるあずまやに

 バラのすがすがしい香りがする ???ここはどこ?


「第2の王宮だよ。お前が居た王宮とは結界でへだてられている」(フェン)


「ここの住民達と引き合わせる前に あなたと少し話したくてね」(黒猫のベス)


「はあ」


「あそこの暮らしは快適か? いじめられていないか?」(フェン)


「あそこって さっきまで寝ていた王宮のこと?」


「そうだ」(フェン)


「今までの所は よくしてもらってます。

 いつ 元の世界にもどれるかは気になるけど」


「あなたは 元の世界に戻りたいの?」(ベス)


「子供達のことを考えるとね。」


「何が気に入らないのだ?」(フェン)


「気に入らないと言いうよりは 心配なのよ。


 子供達にとって 父と会えないことが気になってこないかなとか

 同世代がいない環境で育つことって これからつらくなるんじゃないかな

 幼児期はともかく 学童期以後は 同世代の仲間がいたほうがいいんじゃないかな 


 それにこのままいくと 最後はうちの子5人だけがこの世界に取り残されてしまうわ。それって残酷じゃない。


 どっちみち戻らなくてはならないのなら 速く戻してあげたいわ

 ここでの生活が 楽しい休暇と感じられる間に」


「ふむ」(フェン)


「しかし あなたにとっては あっちでの世界も厳しいものだったのでしょう?」(ベス)


「まあね ワンオペの限界というか 綱わたりの生活への危機感はあったけど・・

 とにかく走りぬかなければどうしようもないという覚悟で生きてましたよ」


「わしは ローゼンタールの女子供や民人の懇願の勢いに負けてな」

ゆっくりと 低い声でフェンリルが語り始めた。


「懇願の勢いに負けた?」


「そう あまりの訴えの多さとその内容のひどさに気押されてな、

 つい結界を敷いて、こっちの世界に女子供を移したのだ」


「そして 私が 城外に居た者達の姿を見えなくした」(ベス)


「女こどもを こちらの世界に引き入れたのはいいのだが・・

 その扱いがたいへんでなぁ 皆を眠らせて対策を考えていたのだ、つい最近まで」


「え~!」


「まったく ローゼンタールの男達は ふがいない奴ばっかりでのう」(ベス)


「はぁ」


「おかげで 私は この10年というもの 町の男どもを叱咤激励して城内に居る者達への必要品の生産に当らせる羽目になったが それもとうとうめんどうになってねぇ・・」(ベス)


「ご苦労お察し申し上げます」


「そのあたりは 適当に眠りの魔法なども使って」(フェン)


「あやつらは10年たったと思って居るが 実際には30年たっておる」(ベス)


「えっ?」


「さすがに あやつらもこれまでの自分たちの生き方が悪かった。生活態度や考え方・ものの見方を変える必要があると思うようになったので、気づきの種をまくことにしたんじゃよ」(ベス)


「はあ」


「その種が お前達親子だ」(フェン)


「なんで 私達が?」


「親子無双できそうだったから」(ベス)


「はぁ~~~~~!」


「お前達なら ここの男どもの頭の中を塗り替えて」(ベス)

「女性達の向上心も刺激して」(フェン)


「ローゼンタールをまともな国に戻す力があると思った」(ベス・フェン)


「しかし それには時間がかかる。

 時間というものが 幼児にもたらす意味についての認識が甘かったと 今きづかされた」(ベス・フェン)


「すまん」(フェン)

「ごめんさなさい」(ベス)


「では その点に関する問題解決に向けて いかなる手をうつおつもり?」


「ふーむ・・」(フェン)


「あちらの世界に干渉できる者を探し出し お子達が向うに戻っても困らず過ごせ、 お子達が こちらの世界とあちらの世界を行き来しながらのびのびと健やかに育つようとりはからいたい」(ベス)


「ほんとに?」


「ほんとにほんとうだ」(ベス・フェン)


「で 私は?」


「その点については 協力者と相談の上 お答えしたい。」(ベス)


「正直に言えば 私は あんたが 女達の世界と王宮と 城外とを行き来しながら調整を図る役を生涯つづけてくれることを期待していたのだ」(フェン)


「それじゃぁ 私は人さらいにあったようなもんじゃないですか」


「むむ」


「しかし 生活の心配なく 子育てと仕事に打ち込める暮らしはあなたの理想ではないの? それに生活の苦労でそのパワーを消費しつくし せっかくの才能を活かすチャンスを見送る暮らしの中にあなたを置いておくのはかわいそうだと思ったの」(ベス)


「だってしょうがないじゃない。 人間は配られた手札で勝負するよりしかたがないのだもの」


「だから 異世界と言う大きな手札をプレゼントしたつもりよ 私は」(ベス)


「無双したければ 手札をつかんで手札を活かせということですね」


「そうね」「そうだ」(ベス&フェン)


「①子供達がどこに居ても 手厚いサポートが受けられ 親子の情と絆が守られ維持されること。②子供達も私も夫も どこに居ても周囲からきっちりと受け入れられた存在であること。③子供にも私にも十二分な成長のチャンスと報酬がえられること

この三つは確約してください。

それ以外にも こまごま出てきたら きちんと納得のいく解決が図られることを求めます」


「いいわ」(ベス)

「約束しよう」(フェンリル)


「念のために あなた自身に関する希望も出して」(ベル)


「いつまでも若々しく元気 才能たっぷり 心身ともに健康 負担なく自由往来できて違和感をもたれないこと 家族から愛され 友人から認められ 仕事仲間から尊敬されること 嫉妬・中傷・悪意にさらされないこと かな?」


「王宮の中での幸せは私が保障しよう。こちらの女達の世界でお前が不幸な眼にあわぬよう心を砕こう。こちらの世界の女達がお前の負担にならぬようにできるだけのことをすることを約束する」(フェン)


「あなたなら(おまえなら)どちらの世界に居ても 子供達から悩まされることはないだろうな。おまえが(あなたが)どの子に対しても献身的であることは おのずと子供達に伝わるから。だが献身的であるがゆえに あなたにかかる負担は 私達にはいかんともしがたない」(フェン ベル)


「それはそうだと思う。だから 負担がかかることを厭う気持ちはないの

 ただ 疲れたときに エネルギ―補給できないのは哀しいし、哀しいと感じれば力がさらに抜けていくのが困るわ。

 生まれた時から 努力ばかり。

 エネルギーは出て行くだけ、

愛と言う名の他者からの供給がないままの人生は疲れる

意志の力だけで 自分を支え続けるのもね」


「こちらの世界で 伴侶とするに足る者に出会ったときに ためらうなとしか言いようがないな」(フェン)


「私既婚者です」


「両方の世界で伴侶をもってもよかろうに。

 どっちみち元の世界の配偶者は すでに単身赴任先で浮気をしているぞ」(フェン)


「推測はしてましたけど 知ってすぐどうこうできんでしょ。


 5人の幼児さん抱えての離婚調停は無理。

どっちみち資産は全て私が結婚前から持っていたもの。子供達の生活費も4分の3は私の稼ぎだし、私の生活費も全額私の資産でまかなっているのだもの。

この状況で離婚を切り出せば「慰謝料」とかって寝言を言いだしそうな阿呆ですよ、夫は。

(結婚前は そんな阿呆とはおもいもよらなかったんだけど・・

 男性との私的な交際経験がなかったのが 誤りのもとでした><

 公の場で女性に理解を示して見せる男が、私的な面では真逆の態度をとるなんて思いもよらなかったんだもの・・)


夫が、有害無益な「面会権・親権」とかって主張して子供にちょっかいかけてこられたら現状手に負えない。

今の世の中 男が養育費を女に要求する為に親権を主張するところまで来てますから。

 ならば 知らぬが仏の現状維持。


そこへまぁ デリカシーの無いこと言ってくれますね!」


「こればっかりわね。私には何も言えないわ。

 だけど 私はあなたが その時々にどのような選択をしようともそれを助けることを約束する。それが私のあなたへの信頼の証よ」(ベス)


「ありがとう。大きな愛をくださって」ベスに向かってきちんとお辞儀をした。

 

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