第16話 愛の勝利!は水着から♫

「う~で う~で ごしごしごし」

(中略)

「おなか おなか くるくるやさしく くるくるりん」


浴室から元気な声が響いてくる

 これは隊長さんが先頭にたって アルフレッドやマッチョサン&サンに体洗い体操を指導しているから ではなく・・

私が子供達と一緒に唱和しながら体をあらいつつ、上記の3人に体洗いのコツを が説明しているところであった。


(なんでも 将来、魔法師団と騎士団の新人教育にこの体洗い体操を導入するためなんだそうだ。 子供達が戻ってきたときの為に学んでおきたいという熱意と希望をだれが 断れようか?)


♫ ♬


紆余曲折の末に 私は 水着を作ってもらえることになった。

 短パンと裾の長い前開きチャック付きの上着半袖タイプの水着


 上着の裾が腰から少し広がっているので泳ぐには不向きだが

 見た目的には リゾートウェアっぽくて気に入った。


 ライトグリーン系の縦じまグラデーション


 これだと体型を気にせず着用できるし 半袖なので日焼け防止にもなる


子供達の入浴介助法を男達に説明するためには 大人は全員水着着用にならざるを得なかったのだ。


それに水着を開発してしまうと 温水プールで子供達の水泳指導を行えるから

双方にとってのメリットも大きく うちの子達の楽しみも増えるというわけ。


サンおじさんは ローゼンタールの思想を子供達に植え付けることはあきらめて、私達の下に来た第2目標「教授法を盗む」ことを最優先課題に切り替えての参加でありました。


 別に盗まなくても 子供達のお世話をしてくれるなら いくらでもそのやり方を説明しますがな。母として我が子の為に。


私としてもおっかないお偉いさんに囲まれて「法の概念」を尋ねられるよりは

子供達が快適に暮らせるように協力体制を作って行く方がよっぽどいいです


(この情報がこの国にとって有益か?混乱をもたらなさいか?なんて抽象的に考えながら話すのはたいへんなんだもん。

 それより現実の必要性と可能性を追求するほうがいいわ。)



さて、水着を作るために 糸の素材から布の製法とその品質までレクチャー受けつつ

いわゆる伸縮素材(織の工夫)で、透けたり 変に張り付いたり広がったりしない水着の開発に参加。


 騎士団からは訓練着に応用できると資金面で全面的にバックアップいただきました。


 神官さん達と魔導士たちも 日ごろの確執を脇におき共闘作戦で技術開発にいそしんでくださいました。


(いつもなら 片方が参加を決めると それだけでもう一方は自動的に妨害にまわるので、ここ30年ほど技術革新がまったくなかったんですって この国では。

 むしろ 足の引っ張り合いがたたって 既存の技術まで消失しすぎることの方が問題になっていたそうな。

 隠ぺいとかく乱が技術崩壊を招く典型ですな)


お世話係に来てくださっていたお爺ちゃんたちというのは 実は技術部門の重鎮だった方々だそうで・・

そのおじいちゃま達がこぞって前線復帰で檄を飛ばせば・・

 たいていのものが1日で完成すると言う噂が現実のものになったそうな。


 お爺ちゃんの 孫愛パワー恐るべし! 愛が勝つ! ですね)


☆ ☆ ☆


体を洗った後は、子供達の頭洗い。

 

まず最初に バスケットボールを使って 子どもの頭に湯をかける時と水量と勢いについて説明


予想通り、サンとアルフレッドはお湯のかけ方が下手でした。

勢いが強すぎたり 水量が多すぎたり

 「子どもの目や耳に湯が入らないように気を使って」(私)


 「子が自分で目と耳をふさいでおけばよいではないか」(サン)


 「なんという思いやりのないせりふ!」(私)


 「幼いころ 首がもげそうなほど召使に頭を振り回され いきなり湯をぶっかけられては 鼻がつーんとするのが嫌で 俺は風呂ではなく川で自分で洗うと言って出かけて行って、散々なめにあったな」(ホーリー隊長)


 「僕のうちは 父が風呂に入れてくれたのですが 湯が暑かったりぬるすぎたり

  今にして思うと 子どもにとってちょうどよい湯加減というのがわからなかったんですかねー」(マッチョサン)


なんか 悲惨な子供時代の体験談がボロボロと・・


 というわけで サンは浴場から退場し・・Aおじいちゃんが水着で登場


Aって服を脱ぐと 意外と若々しい立派な肉体をしている


「Aって おじいちゃんではなく おっちゃんだったの?」(3男)


「ほっほっほっ どっちでもよかろう。

「わしにも 手伝わせてもらえんかな」(A)


ボール相手になかなかの手つきを示すA


長男がさっそく「あらって~」と立候補


「う~ん 気持ちいい―♡」

  確かにAの洗い方は見事でした。これなら 安心して子供達をまかせられます。


「そうか 子どもの頭を洗う時は 撫でるように指を使うのがコツなんだな」(隊長)


「そうですね 大人の頭を洗う時と 全然 力の入れ方がちがいますね」(アルフレッド)


「掌で子供の頭をおしたりしてもいかんぞ。

 洗う部位をかえる時には あくまでも自分の体の位置や手の角度をかえるのだ。

 皿とはちがって 子どもの頭は体につながっていおるのだから

 子の頭の角度や向きを変えようと 子供の頭を押したりつかんではいかん!」(A)


「目からうろこです!」(マッチョサン)


扉の所から見ていたBも海パンを履いて入ってきた。

肉体的には ちょっとだけAより年上かな?


「私にもお手伝いさせていただけますか?」


Bはバスケットボール相手に実力を示した後、三男の頭を洗った。 これも問題なし。


「じゃ 次は ぜひ 僕にやらせて下さい。ぼうやりしているとCDEと入ってきそうだから」マッチョサンが焦り気味に声をあげた。


彼もまたバスケットボールのテスト受けた後、次男の頭をあらって

「まあ まあ」と言われた。


「まあまあ って失礼な言い方をするんじゃありません」


「ママよりへただけど 嫌っていうほどじゃない って言えないよ」(次男)


「具体的に説明すれば マッチョサンの参考になるけど、その言い方だと子供のあなたが大人を評価していることになってものすごく失礼です」(私)


「えーと えーと いきなりバシャ―とくるから 息を止めるのがまにあわない

 ママみたいに 湯をかけるよー とか こする力が強すぎないか?弱すぎないか?とか こすり忘れているところない?とか 全然聞いてくれないのがやだ」(次男)


「参考になりました。以後気を付けます」(マッチョサン)


「そういう時は 素直に「ありがとう。わかりやすい説明を」と言えばいんじゃよ」(A)


「常々 妻は過保護で煩い女だと思っていたが 子どもにとっては意味のあるやりとりだったんだな」浴室の入り口に立って見ていたサンが ぼそっと言った。

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