第15話 新しいお世話係と家庭教師

数字の話をマッチョサンは王様に 神官さんたちは法皇様に報告したそうです。


(これは 事前にマッチョサンや神官さんから打診され許可しました。


 万が一にも この数唱と表記法が採用されたら 私も助かるし、国の経済管理の合理化にも役立つと思ったからです。)


 もちろん 大きな数字を楽に扱えることから徴税が厳しくなったり軍事開発が進む危険性を考えないでもなかったですが・・

その危険性を具体的に指摘することにより、かえって悪用されてしまっては困るので「伝えるにあたって、あくまでも民人全員の幸せと 子供達の学習を容易にするために利用してください。けっして誰かを不幸にしたり傷つける結果になるような利用はしないでくださいとお伝えください」とお願いしておきました。


すると 「こどもが学習しやすい?」とマッチョサンが怪訝そうに尋ねます。


一方長男たちは、数字の書き方の説明を始めたときから熱心に私の話を聞きながら手元を覗き込み、自分達用にもらった紙で 数字を書く練習を始めていました。


そこで 私はいったん 大人向けの話を打ち切って 子供達と過ごしたいと告げました。

彼らが それを受け入れてくれたので、私は子供達と数字を書く練習にのぞみます。


5歳児には まずは1~3を書く稽古

3歳児には 線や丸を書く練習用紙を作って渡しました。


そうやって 子供達が学習している様子も王様に報告したいと言われたのでそれも了承。

「でも これはあくまでも子供達の興味関心にそった活動であって、大人の都合でやらせることではないということを強調して伝えてね」とお願い。



翌日 新しいお世話係が現れるとともに、幼児教育について話を聞きたいという呼び出しがありました。


呼び出しについては、「今はまだ子供達が親離れできないので、もう少し待って欲しい、せっかくマッチョサンたちに慣れかけてきたところだったのに 新しい人が現れたので子供達の負担が増したので さらにいっそう子供だけを残して私が出かけることがむつかしくなった」と伝えるとこれまた 驚かれました。


「世話係を増やしたのは 子どもを置いてお主が出向できるようにするためであったのに」(ブックストック)


「そのことについては 今ここで説明するすのはふさわしくないので 後日あらためて。この理由についても後日一緒に説明します」


むっとした顔のブックストック。


とりあえず 今は私は子供のそばをはなれるわけにはいかず、その一方で大人の話を子供の耳に入る場所で行うことも好ましくないので、しばらくは 我が家のペースで物事を運ぶことを了承してもらった。


そのかわり 大人の打ち合わせは 主に 子供達が入浴中に行うことにした。


その為に アルフレッドとマッチョサンで子ども達の入浴介助が行えるように

「体洗い体操」を覚えてもらうことになった。


ホーリー隊長も ほんとうは 子供達と一緒に体洗い体操をしたかったそうだが、

立場上 安全管理のための護衛として一緒に入浴するそうです。


(彼らは 初日に次男がおぼれかけたことに 非常に責任を感じているようでした。

 この件についても 後日子供達のいないところで話し合う必要がありそうです)



アルフレッドがだれかって?

ホーリー隊長が新たなお世話係として連れてきた25歳の青年、城内最年少騎士です。

子供達の遊び相手を務めながら護衛もするのが彼の仕事。


 金髪碧眼の美形です。ほっそりとした優し気な風情なのですが若手一の剣の使い手だそうです。


「この城の中は そんなにぶっそうなの?」と思わず尋ねると


「剣士として目ざとく瞬時に対応する力を養われているので、突発的な子供の事故予防にも役立つのではないかと」(ホーリー隊長)


(なるほど。しかしそれだけでは 子どもの事故は防げないんだよねぇ

 子どもの動きを予期する洞察力=発達段階別「子供の行動」に対する理解がないと)


↑学生時代、入学した大学の法学部の授業だけでなく、国立大学の単位互換制度を使って教育大学で発達系の授業や教授法の研究室にまで遠征した中で学んだことです。

はるか昔の教育大学の良いところは 教育熱心な教師たちが自腹を切って大学の研究室に入って実戦の裏付けとなる理論を学んでいたこと。

 だから まじめな学生もまた 現場の教師の研究課題意識を通して、子供達の発達上の課題についてリアルな観点に気付く機会を得られたことです。

 今の大学はあらゆる意味での縛りがきつくて こういう創造的発展的交流などのぞむべくもありませんが。


もう一人新しく加わりに来たのがサン。40代のおじさんです。

彼はお世話係ではなく 家庭教師として派遣されてきました。


サンはブックストックの息子。


だからというわけではないのですが、「今はまだ この国のことについて子供達が学習できる段階ではなく むしろ生活の基本的なことを体験的に学んでいる途上なので」と子供への家庭教師をお断りしました。


代わりに深夜 子供達が寝静まった後に、私がこの国について学ぶための教師役をお願いできないかと打診したところ


なんと なんと この城の人達は 真夜中の0時~朝6時まで強制睡眠にはいるのだそうです!!!


(わぁー ここは おとぎの世界ですか?\(◎o◎)/!)


だからこの城の中の人達は全員 夜の11時半までに ベッドに入る習慣なんですって。もしベッドの外で0時を迎えると そのままバタンキューなので、

 調理中とか入浴中だと危ない 危ない 事故の元!


「え~~ そういうことは 最初に教えて欲しかった。

 もし私が入浴中に0時になっていたら 大惨事です!」


「いつも お子様たちと早い時間に就寝なさっていたので」と爺ちゃんたちに頭を下げられた。


「子育てをしていると 子どもの就寝時間にあわせて夜の8時にはベッドにはいりますが、ここに来るまで だいたい0時~朝の4時ごろまでは自分の仕事や研究のために起きていました。


あるいは入浴しての洗髪なども深夜帯を利用してました。


だって 子どもの安全を守るためには 子どもから目を離せないし

しかし調理や身支度など 集中して行わなければならない作業を行うためには

子供達が眠っている深夜 もしくは早朝を利用せざるを得なかったから。


こどもが生まれてからずっと 分割睡眠で時間をやりくりしていたので

ここに来てから 夜は連続睡眠になっておかしいなぁとは思っていたのです。


ただ 異郷の地だから疲れているのかなくらいに思っていたのですが・・

強制睡眠とは。


うーん これは私の時間の使い方も変えないといけないようですね」


「分割睡眠では じわじわと疲労が蓄積していくのではないか?」(ホーリー隊長)


「さすが隊長!わかってらっしゃる、経験者ですね?」


「10年前まで近衛にとって宿直は日常業務。

 軍人にとって野外の深夜行動も必須経験。

 だからこそ 体調管理も隊長の務めのうちだ。」


「ですです」


「あなたは どのような周期で連続睡眠をとっていたのだ?」


「子育て中の女性は こどもが学校に通い出すまでの6年間は分割睡眠しか不可能ではないかなぁ。

 市民平等が行き渡りすぎて お手伝いさんとか子守とかを雇う習慣がなくなってしまったから 家事労働も育児もすべてが 一人の女性=母親に覆いかぶさる時代になってしまっていたから」


「男は?」


「甲斐性のある男は 仕事で疲れて家では休養。

 甲斐性なしは 元から自分が苦労することを厭う性格だから家庭でも役立たず。


 たまに イクメンとかって いいかっこしたがる男もいるけど、それはあくまでもポーズで役にたたないどころか 子育てに関して無知すぎて有害無益、子どもにとって危険な存在になりうる。家事に関してもしかり。


 女だけが 仕事も家事も子育ても すべての責任をとらされる。


おかげさまで 毎日15分から1時間程度の睡眠を ばらばらな空き時間にちょこちょこっととって生きてきましたよ~私」


「子供が夜泣きした時の わが身の行いを反省しました」(サン&ホーリー隊長)

 

市民平等についても質問されたが それはまた今度ということで・・


それでもブックストックがしつこく質問してきたので


「一時期 お手伝いさんを見下す人が権勢をふるったことがあったの。


 そこで 「お手伝いさん・子守」と言う仕事の重要性や必要性を強く訴えて

人を見下すことの過ちを正せばよかったのに


安直に 「人から見下されることのある仕事に我が子をつかせない・過去に見下されることがあった職業をなくす社会」にしてしまった。それが「市民平等」主義。


おかげで 私達の世代が ものすごく苦労してます」と答えておいた。


(いささか過激な説明ではあるけれど 事実の一面ではあるから・・

 それにまあ 双方どちらにとっても異世界物語だからいいよねー ということでごめんあそばせ)

 


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