第13話 マッチョサン

王様が部屋を出て行かれると、子供達がそろっと 居間に通じる寝室の扉のところまでやってきました。


「入ってきてもいいよ」


「わ~い!」


お世話係のおじいちゃんたちに頼んで おやつを用意してもらいました。


子供たちは 紅茶の代わりにミルクがついたアフタヌーンティをパクパク。

 サンドイッチとスコーン

 どちらも糖分高め 柔らかいですね


 これからは糖分控え目、ミネラルを含んだナッツや干し果物の入ったクッキー、

小魚や干しエビのはいったせんぺいなど歯ごたえのあるおやつもあるといいなぁ。


 スルメやパリッとしたみりん干し小魚せんぺいや骨せんべいとかあるかな?




おやつのあと、お世話くださっている方々から お名前などをうかがうことにしました。


今までは 激変した状況についていくのに精いっぱいで、

しかも小さな子供が5人もいると

 安全確保・食べさせて着替えさせて 子供の要求にこたえてバタンキューで

気になりながらも 誰かの名前を聞くどころではなかったのです。


だって いろんな人が出たりはいったり 入れ替わり立ち代わり 

しかも皆さん割とよく似てらっしゃるので よほど個性的でなければ見分けがつかなかったというのもあって・・



その結果わかったこと


・ブックストック60代:図書館長

 閑なので、興味本位でのぞきに来たそうです。(こわー)


 彼は それだけを告げるとさっさと部屋から出て行きました


・ホーリー隊長35歳:私達の護衛責任者 とってもイケメンです。

  10年前の事件の時に、当時3歳の息子と新婚気分のぬけきらない若妻を失った。

  なので 今は子供達がかわいくて仕方がない。


・マッチョサン25歳:城内最年少魔導士

  私の髪を乾かしてくださった方。

  見かけだけでなく 名前もマッチョサンとは偶然の一致にしてもすごい。


  魔導士長は勇者召喚を行ったはずなのに母子が現れ極めて不機嫌になったのであるけれど、お世話係に誰かを派遣する必要があるので とりあえず一番若い彼が選ばれたそう。


  マッチョサンは 魔法にも自信があるので、子供達の安全確保に努めたいそうだ。

 「たったの2日間で おぼれかけたり落馬しかけたり こどもってなんと危うい存在なのだと驚きました!


  でも自由闊達な子供達と一緒に過ごす日々は新鮮です。

  これから よろしくお願いします」


 と直立不動の姿勢をとったあと きれいにお辞儀をしてくださった。


 私と子供達も 彼の姿勢にあわせて一斉に起立して、彼の礼をうけたあと返礼した。


それを見たホーリー隊長

「奥様のお国では 女性もまた軍事訓練を受けているのですか?」


「そういえば 私達の自己紹介もまだでしたね。

 こちらの国では 名前を尋ねたり名乗ることに何か約束事があるのですか?」


「目下の者から目上の者に名前を問うてはならないことになっています」


「ですから 陛下方が遠慮して 皆さまにお名前を尋ねてはいないのですが

 やはり 国王陛下と法皇猊下に 皆さまから名前を尋ねることもお控えになったほうがよろしいかと存じます」(ホーリー隊長)


「でも 間接的に名前を尋ねることは認められていますから、名前を知りたい人がいたら 僕に尋ねてくださいね。

 職業柄 僕は城内全員の名前を知っていますから」(マッチョサン)


「それを言えば 俺も全員の名前を知っている」(ホーリー隊長)


「この国は けっこう序列とか階級とかといろいろ細かくてややこしいんです。

 だから外から来た人は そういうの全然知りませんって自由にふるまうのが一番いいと思います。


 ただ いわゆる社交的知識として最低限知っていた方がいいかなっていうことは

質問された時にお知らせしますね。


 でも ほんと「知らない」で押し通した方が 絶対に生活しやすいと思います。


そういう意味で 最年少・万年下っ端の僕に個人的にお尋ねになったことに関しては

「そんなの聞いてない=知らない」でごまかせます。


ホーリーの場合は それをやられると彼の隊長としての立場が損なわれますからね。


もちろんホーリー隊長の仕事は護衛任務であって指導係ではないですから、彼から聞いた習慣を「自分の習わしと違うから」って奥様が却下しても 彼には何のさわりもありませんが、その場合悪意ある連中から 「習慣を知っていて無視した」って奥様が非難されることになるので 知らぬが仏を貫くのが一番いいと思います」(マッチョサン)


「わぉ すごく貴重な情報と丁寧な説明をありがとう。」

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