第10話  母は強し

お世話係の爺や達は 午前中子供達を乗馬などで遊ばせて その間に私と個別面談するつもりだったようだ。


しかし 子供達が「ママと一緒でなければ嫌だぁ~」と言い建てたので 私も子供達と一緒に馬にのって過ごすことになった。


最初 じい様たちは、「母君にお外は無理」とか「女性に乗馬はむつかしいのでは」などと言って、子供達だけを部屋の外につれだそうとしたのだ。


ところが

「ママは なんでもできるもん!」

「よその人について行ったらだめだもん!

「いっしょでなきゃいや~」

5人が一斉に自己主張を始め、私にまとわりついていたので お爺さんもおじさん達もお手上げ。


だって どさくさまぎれに 一人は私の肩にのっかり、一人は私の背にしがみつき、二人が私の腕にだきついてワイワイ。 

あぶれた一人は私のお腹に背中を張りつけながら 理路整然と「知らないところで 知らない人と」と防犯注意をまくしたてていたのだから。


最後は 私が 一人を肩車して もう一人をおんぶして 両腕に一人づつ子供をぶら下げて 残る一人は私の体の前がわにしっかりとだきついた状態で、子供達をベッドの上まで連れて行き、そこでみんなでくすぐりっこして騒いで やっと落ち着いた。


か細い女性が 体重15~20キロのこどもを5人もまとめて運んでいるのを見た男どもはあっけにとられていた。


母は強し。


というか こどもってのは、ハイハイを始めたときから 母親をゆりかごか椅子がわりに乗っかってきますし、双子を育てていれば 子供を両腕にぶら下げて歩くのも、肩車とおんぶまたは抱っこで運ぶのも毎朝・毎夕・毎晩のあいさつ代わり

そこに3つ子が加われば 子供達も頭を働かせて 私にしがみつく方法を編み出しますって。


ようは バランスです バランス。

子供をぶら下げる筋肉は 私の体幹さへしっかりしていればだいじょうぶ。

あとは バランスよく 子供達が私にしがみつけばそれでよろしい。


後日 筋肉自慢の男どもが 子供達をまとめて運ぼうとして筋肉痛を起こしたらしい。

こどもって 騒ぎますからね。


日ごろから 息を合わせる練習していれば 就学前の子供の4人や5人、己の体にしがみつかせて運ぶことはできますが、初めてのお子を抱き上げる時には まず互いにアイコンタクトして、息をあわせてからお互いに抱き合い、抱えあげた子供に 自分の体のどの部分にどのように収まって欲しいか 手足をどこに巻き付けてどの程度力加減でしがみついてほしいか ちゃんと伝えて、お子さんからの協力も得ないと しんどいですよ。 つまりは 自分の体の上に バランスよくお子さんに乗っかってもらうことが大切。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る