第51話 ロゼ公爵家の末路※書き直しました
シモーヌ夫人とサビーヌの逮捕劇から数日後、国外に逃亡を図ろうとしていたロゼ公爵の拘束が確認された。それから嫡男アラミスは彼が捕まる以前に出頭したそうだ。
「汚職ですか…」
父から聞かされたのはロゼ公爵の汚職についてだった。
数ヶ月前、ロゼ公爵は趣味の賭け事で大負けしたせいで多額の借金を背負ってしまったらしい。どうにか返済しようと目を付けたのが国の運営資金。財務管理を任されていた彼だからこそ帳簿の誤魔化すことが出来たのだろう。
それだけじゃない。娘を皇帝に嫁がせれば贅沢な暮らしが出来ると考えて邪魔者である私の暗殺計画を企てたそうだ。
「本当に馬鹿な話よね」
「ロゼ公爵は賢くなかったのですか?」
「昔は真っ当な人間だったらしいぞ。ただ努力を重ねても周囲からは成り上がりだと馬鹿にされ続けた。憤りを発散させる為に嵌ったのが賭け事。結果、碌でなしに転落したんだ」
私の問いかけに答えたのは呆れた表情を見せる兄だった。
ロゼ公爵が道を踏み外すきっかけを作ったのは成り上がりだと馬鹿にし続けた周りの人間達だ。
そう思うと彼には同情してしまう。
「ロゼ公爵は可哀想ですね」
「そうね。でも、罪は罪なのよ。許されない事をした彼を助けてあげる選択肢はないわ」
「分かっております」
ロゼ公爵家は取り潰し。一家は処刑が決まっている。
情状酌量の余地はない。
「それに一番可哀想なのは何もしていないのに巻き込まれたアラミスだよ」
父親は博打に汚職、母親と妹は殺人未遂を犯した。しかしアラミスだけは歪む事なく真っ当な生き方をしていたのだ。ロゼ公爵の汚職報告をしたのも彼だと聞いた。
どうやらに罪の意識に苛まれていたそうだ。苦しみからの解放を願ったのだろう。
「アラミス様は罪を犯しておりません。亡くなる姿を晒す必要はあるのですか…」
家族の罪によりアラミスも処刑からは逃れることが出来ない。仕方ないことだと分かっている。しかし彼まで公開処刑にする必要があるのか分からないのだ。
「アラミスもロゼ公爵家の一員、仕方ない事だ」
「そうですよね」
分かっていても複雑だ。
そう思っていると母が手を握ってくる。
「処刑の制度ってなかなか受け入れられないわよね」
私の気持ちを察してくれた母が声をかけてきた。
母も私と同じアルディ王国出身だ。同じ気持ちになったことがあるのかもしれない。
「お母様も慣れませんでしたか?」
「アルディの生温い環境で育ったのよ。初めて人の処刑を見た時は気分が悪くなったわ」
「今は慣れましたか?」
「全然よ」
母がフォルス帝国に、エクレール公爵家に嫁いだのはもう三十年近く前のことだ。つまり三十年経っても慣れないということ。
皇妃になる身としてそれで良いのだろうかと思ってしまう。
「慣れなきゃいけないんですよね」
「無理に慣れようとしなくても良いと思うわ」
「ですが…」
フォルス帝国の民からすれば処刑は普通に受け入れられていることだ。彼らの上に立つ人間として慣れていないとなると非難は免れないと思う。
「アリア、フォルスの民も全員が死刑制度を受け入れているわけじゃない。そう気に病む必要はないぞ」
「父上の言う通りだ。あまり深く考えるなよ」
父と兄二人から温かい視線が送られてくる。
私の気持ちを察して気にかけてくれる優しい家族を持つことが幸せだ。
「ありがとうございます」
彼らの為にも出来るだけ良い皇妃となろうと心に決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。