第47話 波乱のお茶会④※書き直しました
「皆様!アリアーヌ様は、いえ、アリアーヌはアルディ王国で罪を犯し国外追放を受けた罪人です!」
まさか正面から喧嘩を売られるとは思わなかった。
サビーヌ嬢の一声によって周囲の視線が一変する。厳しく突き刺さるそれはアルディ王国で断罪を受けたあの日に感じたものとよく似ていた。
ちらりと兄の様子を確認すると何も言わずサビーヌを睨み付けている。
「アリアーヌはアルディ王国の王太子オディロン殿下の最愛の人を傷つけ殺そうとした罪があるのです!」
久しぶりに元婚約者の名前を聞いたような気がしますね。
レオンスを始めとする周りの人達は彼を『屑男』『馬鹿王子』『浮気殿下』など酷い呼び方をしていましたから。
しかしオディロンは本当にあの顔だけ男爵令嬢と婚約したのでしょうか。
よく陛下達も許しましたね。
国を追い出された私には関係ありませんし、どうでも良いので知る必要もない話だ。
ぼんやりと考えている間にもサビーヌの演説は続く。
どこから仕入れたのか私が断罪を受けた時の話を細かく説明する彼女にはある意味で感心する。
「アリアーヌ!罪人であるくせによくもまあフォルス帝国にやって来られましたわね!その上レオンス皇帝陛下を誑かすなんて酷い悪女ですわ!今すぐ国から出て行きなさい!」
私を指差してほそく笑むサビーヌ嬢。
なにも知らないのと思いますけどフォルス帝国に来る選択しか与えてもらえなかったのですよ。
思い出すのはレオンスに連れて来られた日のことだ。
あの時はどんな扱いをされるのか不安でいっぱいでしたけど今ならお持ち帰りされて良かったと笑顔で言えますね。
そうこうしている間にも周囲から非難の声が上がり始める。
「アリアーヌ様が罪人?本当なのか?」
「私達を騙していたって事?」
「彼女を引き取ったエクレール公爵達はこの事を知っているのか?」
「ふざけやがって!出て行けよ!」
「罪人は消えろ!」
会場全体を味方に付けたサビーヌ嬢は勝ち誇った表情で愉快に笑う。
言葉を返した方が良いのは分かっているけど、その役目は私ではないのだ。
後一分くらいですかね。
私に対する出て行けというコールが始まる。
『余裕そうだな』
『ジェイドお兄様こそ余裕そうですね、連絡を取ったのですか?』
『さぁな』
隣を見ると肩を竦めて笑う兄が居た。
まるで今から起こることが楽しみで仕方ない笑顔だ。
そう思っていると青が澄み渡っていた空が一瞬にして薄暗い雲で覆われる。
『天候まで操れるのですか…』
『アリアもその気になれば出来るだろ』
『試そうと思ったことがありません』
『今度やってみたら良い』
念話でどうでも良い話をしていると会場の空気が重くなる。
周囲の気圧と温度が一気に下がり、地面が大きく揺れ動く。全身の血が逆流するような感覚が若干の気持ち悪さを感じさせた。
「貴様らは何をやっているのだ」
凄まじい威圧感と共に姿を見せたのは我が婚約者レオンスだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。