第28話 ウラリーは怖い
「お前は私のアリアと何をしている」
レナールと話していると少しだけ窶れたレオンスが入ってくる。
「何ってお話ですよ」
「何の話だ」
「普通の世間話です。それでは失礼します」
逃げるように出て行ったレナールに「おい、待て!」と怒鳴りつけるレオンス。しかしレナールが戻ってくる事はなかった。
あの二人やっぱり仲良いのね…。
ちょっとだけ羨ましいと思ってしまう。
「アリア、疲れた」
ふらふらと近寄ってきたレオンスはベッドに座ったままの私に抱き着いた。
ぐったりともたれ掛かってくる彼の背中に手を回して労うように撫でる。
「お疲れ様です」
「ウラリーは昔から説教が長いんだ」
「そうなのですか?」
「ああ。今日はアリアを待たせているから短く終わったけど、普段だったら半日はやっているぞ」
流石にそれは長い気がするけど半日も説教をされるような事をレオンスがしたのではないかと思う。
「説教をされるのはレオンスが悪いからでは?」
「うっ…」
図星なのだろう目を逸らすレオンス。
一体何をやらかしたというのだろうか。
「半日説教された時はなにをされたのですか?」
「内緒だ」
「知りたいです」
私は彼の事を全然知らない。
だから知りたいと思うのにレオンスは「嫌だ」と返してくる。
無理に話してほしいわけじゃないので良いですけど、ちょっとだけ寂しいです。
「アリア?」
「……私がレオのことをもっと知りたいって思うのは迷惑ですか?」
「え?」
目を大きく開いてぴたりと固まるレオンスは一瞬で身体を離してくる。
どうしたのだろうと彼を見上げると頬を緩めていた。
「私に興味があるのか?」
「ありますよ?」
もうすぐ旦那様になる人です。
知りたいと思うのは別に変な事じゃないはずなのに。
もやもやした気分になっているとレオンスが勢いよく抱き着いてくる。大きな身体を支えきれず二人揃ってベッドに倒れ込んだ。
「アリアが私に興味を持ってくれて嬉しい」
「そうですか?」
「勿論だ、アリアが知りたい事なら何でも教えるぞ」
「では、半日説教をされた時の事を教えてください」
押し倒された仕返しに意地の悪い質問をするとレオンスは苦笑いで「そう来たか」と呟いた。
なんでも教えてくれると言ったのは彼だ。
聞いても良いだろう。
「また今度話してやろう」
「本当ですか?」
目を逸らさないよう彼の両頬を手で固定して尋ねると「ああ」と笑顔で頷かれた。
「約束ですよ」
「勿論だ」
小指を絡めて指切りをしていると部屋の扉が思い切り開いた。中に入って来たのはウラリーだ。
その表情はとても冷めている。
私がレオンスに押し倒されているからだろう。
「陛下、お話が足りなかったのですか?」
「い、いや…。十分だったぞ?」
焦った声を出すレオンスを見上げると額に脂汗を掻いていた。
皇帝なのに侍女に負けるってどうなのだろう。
普通なら幻滅するかもしれないがちょっとだけ可愛いと思ってしまうあたり私は変わっているのだろう。
「じゃあ、どうしてアリア様を押し倒していらっしゃるのでしょうか?」
そう言われたレオンスは慌てて私を抱き起こした。
彼の胸元にすっぽりと収まっているとバクバクと物凄い音が聞こえてくる。
少しでも楽になれば良いと彼の脂汗を拭っているとウラリーからお叱りの言葉が飛んできた。
「アリア様!陛下を甘やかしてはいけません!」
「え?ご、ごめんなさい!」
咄嗟に謝ってしまった。
ああ、なるほど。ウラリーに怒鳴られるって結構怖いのね。
レオンスが恐れる理由が少しだけ分かった気がする。
「全くお二人ともここは公共の場ですよ!少しは節度ある行動をお取りください!」
彼女の怒声にレオンスと揃って「すみませんでした」と叫んだ。
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