第29話 兄がやって来た①
ウラリーから小言を貰った後、花祭りに戻ると変わらず多くの人で溢れ返っていた。
「アリア、どこに行きたい?」
「とりあえずご飯にしませんか?」
レオンスに宿屋に連れ込まれて色々とされてしまった為、お昼ご飯を食べ損ねていたのだ。
意識した途端にお腹が空いてきた。
「そうだな。何が食べたい?」
「レオは何が好きですか?」
「私?そうだな。好んで食べるのはやっぱり肉だな」
「レオっぽいですね」
彼は体格が良いからお肉を食べている姿が想像しやすい。
くすくす笑っていると「アリアは何が好きなんだ?」と尋ねられる。
「私ですか?野菜は好きですね」
「野菜か…」
遠い目をするレオンス。おそらく野菜が苦手なのだろう。
彼の手を握って「好き嫌いは駄目ですよ」と注意をすると苦笑いを向けられる。
「分かっているけど苦手な物は苦手なんだ」
「弱点は減らさないと」
「それは……確かにそうだな」
ぎゅっと手を握り返されると頬が緩んでしまう。
にやにやしていると「どうしたんだ?」と尋ねられるので首を横に振った。
「なんでもないです」
「そうか?」
「はい。早くご飯に行きましょう」
彼の手を引っ張った。
子供っぽいかもしれないと不安になったが笑顔でついて来てくれる彼に頰を緩ませる。
「普段の凛としている姿も愛らしいが無邪気なアリアも可愛いな」
「やっぱり子供っぽいですよね」
「まだ十八歳なんだ。多少子供っぽくても良いだろう」
もう十八歳なのだ。
成人してから三年も経過しているのだから子供扱いは勘弁して欲しい。
「もうやりません」
「子供扱いは嫌か?」
「大人なので」
この発言自体が子供っぽいような気がするが気にしていられない。
くすくすと笑う声が聞こえてくる。
「アリアを子供扱いしていたら先程のような事はしないぞ」
耳元で囁くように言われて背筋がぞわりと震えた。
確かに子供はキスをしたり、あんたふしだらなことはしないと思うけど人前で言うようなことではないだろう。
彼を睨みつけると「揶揄って悪かった」と頭を撫でられた。やっぱり子供扱いだ。
「もう良いから行きましょう」
「そうだな。腹が減って仕方ない」
レストランに行った後、色々な露店を見て回っていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
気が付けば夕方、そろそろ帰らなければいけない時間になっていた。
「アリア!」
後ろから大きな声で名前を呼ばれた。
レオンスと顔を見合わせてから振り返るとそこに居たのは。
「ジェイドお兄様」
笑顔で手を振っていたのは義理の兄だった。
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