第26話 休憩④
休憩③はムーンライトノベルズに掲載しております。
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レオンスに捕食されてぼんやりとしてくる意識を取り戻してくれたのは部屋の扉を叩く音だった。
びくっと体を震わせる私とは違い、レオンスは慌てることなく深く息を吐くだけ。
邪魔しやがって、と乱暴な言葉を吐き出した後に足元でぐちゃぐちゃになっていた布団を引っ張り上げて乱れた私を隠した。
「アリア、私が良いと言うまで布団から出るな」
息を整えている私の額にキスを落としたレオンスは立ち上がり部屋の扉を開けた。
「わざわざ邪魔をありがとう」
「怒らないでください。ウラリーさんやエクレール公爵に睨まれたくないのです」
部屋を訪ねた声の主はレナールだった。
「捕まえたのか?」
「はい」
「雇い主を吐かせておけ」
「畏まりました」
二人の会話を聞いてすっかり頭から抜け落ちていた暗殺者の存在を思い出す。命が狙われているというのに自分達はなにをしているのだと恥ずかしくなる。
被せられていた布団をぎゅっと掴み、羞恥心で悶えている横で二人は会話を続ける。
「ウラリーさんに来てもらってますよ」
「何故ウラリーなんだ…」
「本人の希望です。手の早い陛下を叱る為じゃないですか」
どうしてウラリーが、と思ったところで無駄な察しの良さを発揮する。
彼女が来てくれたのはおそらく私の乱れた格好を直す為だ。
ウラリーは私がここに連れて来られたと知った時点でなにをされるのか予想をしていたのだろう。
さらに恥ずかしさが増す。
「もしかして事を済ませたのですか?」
「こんなところで済ませるわけがないだろ」
レナールもどんなことをしていたのか察していたのね。
もう耐えきれない恥ずかしさを布団を握る事で発散させていると「もう少しだけ二人きりにさせろ」というレオンスの声と共に部屋の閉まる扉が聞こえてくる。
彼が乗っかったことでベッドがぎしりと短い悲鳴を上げる。
「アリア、大丈夫か?」
「だ、大丈夫じゃありません」
「すまない。アリアが可愛すぎてつい調子に乗ってしまった」
またそれですか。
可愛いって言っておけば全部許すわけじゃないですからね。
布団で身を隠しながら彼を睨み付けた。
「私を嫌いになったか?」
布団に顔を埋めて言葉を発さず首を横に振った。
嫌いになれるわけがない。そもそも嫌いだったらあんな恥ずかしいことを受け入れたりしない。
自分の中に芽生えた気持ちは思ったよりも成長しているようだった。まだ名前を付けることは出来ないけど、おそらく考えは間違っていないだろう。
「嫌いになりません…」
「そっか。良かった」
優しく頭を撫でてくれるレオンス。
心地良さに身を任せていると再び部屋の扉が叩かれる。次にやって来たのはウラリーだった。
「身支度が終わったらまた祭りを回ろう」
「分かりました」
それだけ言うとレオンスは部屋から出て行った。
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