Her future
第1話「Her future」
私の隣には、とても大切な人がいる。
大切な彼、私の好きな人。
もう付き合って三年か四年経つのかな。
体感的にはまだまだ一年も経っていないように感じるけれど、それって、彼と過ごす日々がそれだけ楽しいってことだよね。
「イチゴ、今日はどこ行こっか」
私の名前を呼ぶ彼には、一つだけ、たった一つだけ、言えないことがある。
言うべきなのか、言わないべきなのか・・・。
正直な話、まだ迷っている。
私は彼を信頼している。そして、彼は優しい人だ。
だから、私のそれを話しても彼は受け止めてくれると思う。
では、なんで私は言えないでいるのだろうか?
この矛盾に私は答えを出せる気がしない。
同じ境遇をした人とかいないのかな?
そんなことを思っていたが、身近にそんな人がいたら苦労しない。
でも、客観的に見て彼の立場に立ったことのある人が身近に存在していた。
「ちょっと相談があるんだけど・・・お父さん」
身近というか、家族だ。
夕食の片付けがひと段落したところで、居間にいた父に相談を持ちかけてみた。
私が彼に言えないこと、それは私自身のタイムリミットについてだ。
私は病弱だ。父が言うには、母親からの遺伝が要因らしい。
もちろん私は母親のことを恨んだりはしない。
だけど、私にはタイムリミットがある。それは事実だ。
だからこそ、父の意見を聞きたいんだ。
だって今の彼は、昔の父と同じ立ち位置にいるはずだから。
「彼氏って、イチゴに恋人がいたんだな」
「ま、まぁ・・・でも、彼にそれを言ったら嫌われちゃいそうで」
「うーん、どうだろうねぇ」
「お父さんは、お母さんの病気のこと どう思った?」
「どうって、そりゃショックだったけど、だからこそ、残りの時間を大切にしようと思ったよ。その結果、最高の思い出も、イチゴって言う宝物もできたからね」
「ちょ、そんな恥ずかしいこと言わないでよ」
「あはは。イチゴも子供ができれば・・・あいや、申し訳ない」
「別にいいよ。でも、私はどうすべきなのかな。参考までに、お父さんの話を聞かせてよ」
「まぁいいけど、前にも話さなかったか?」
「そうだっけ?」
「まぁいい、知らないのなら話すよ。お母さんの病気は、お父さんと同棲を始めてから気がついたんだ。最初は否定していたけれど、問い詰めた結果、自身が病気ってことも、それ以外のことも、全部話してくれたよ」
「そうだったんだ」
「あれ、ほんとに話してなかったっけ」
「初耳だけど・・・まぁ、少し参考にはならなかったな」
「悩んでいるなら話した方がいいと思うよ。だってそれが現実なんだから」
「やっぱそうだよね」
「最後はイチゴが決めることだ。お父さんからはそれだけだ」
そう言い残し、父は私の前から姿を消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます