第2話「Her daughter」


彼女は、病弱だった。


初めは隠し通していて、僕もそれに気づけなかった。


気づいたのは、大学を卒業して、同居を始めたときだ。


さすがに・・・と言うべきか、一緒に暮らすと、彼女が病弱なことは一発で分かった。


僕は彼女を問い詰めた。


少し強引で、卑怯だったかもしれないけど、彼女から自身の全てを聞き出した。


そして知った事実。


彼女の余命は、



あ と 二 年 。



彼女は泣いていた。死ぬのが怖いというより、僕に嫌われる恐怖からの涙だった。


僕はそれを察していたが、どうすることもできなかった。


ただ抱きしめて、「大好き、愛してるから、絶対離れない」と、そう言うだけ。それしかできなかった。


翌日、僕は一晩かけて考えたことを、彼女に話した。



「子供?」


「そう、僕と君が、愛し合った証。君が生きていた証。それを、こういう形で残したいんだ」



僕が提案したのは、僕と彼女の、二人の子供を産むということだった。



「お医者さんに相談しないといけないけど、それ以前に、いいの? 簡単に言うけど、子供を産んだら育てなくちゃいけないんだよ?」


「もちろんだ。僕が責任を持って育てる」



このときの彼女は、少し難色を示していた。


はっきりとは分からないが、恐らく、自身の身体を気にかけてのことだろう。


生まれてくる子は、僕と彼女の子供なので、当然子供にも、お互いの遺伝子が遺伝する。


そう、彼女の病弱な遺伝子も・・・だ。


恐らく彼女は、それを気にしているのだろう。


だけど、僕は必死に彼女を説得させた。


決して強引ではない。


彼女が安心して、そして納得いくように、説得した。



「でも、私がママになるのか・・・そして、あなたがパパだ。あはは」


「パパか、なんか照れるな」


「パパさん、あはは。素敵かもね。それに、そういうコトも経験してみたいしね」



後日、医者に相談したところ、余命となる二年後の残り半年。つまり、今から一年半以内であれば、安全に出産が可能という見解が出た。


こうして、イチゴは生まれてきたのだ。


ちなみに、名前の由来は、植物の『イチゴ』から取っている。


決め手となったのは、



「イチゴの花言葉は、幸福な家庭」



彼女の言った、その一言だ。

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