第14話 上級へ
不磨七五三夫です。
今は一週間ほど体と心を休めています。
というのも。
強い相手を求めて迷宮を潜りまくってたら、鍛冶屋のドワーフさんにめちゃくちゃ怒られました。
はじめは武器や防具を雑に扱っているからだと勘違いしていました。
問題は別にあったのに、指摘されるまで全然気が付きませんでした。
迷宮に魅入られていた。
はっきりと、そう、指摘されて、ようやく気が付きました。
半年も迷宮に潜り続けていたそうです。
戦う装備がなくなったから、一度地上に戻ろうとして、入り口の憲兵に取り押さえられて、訳が分からないまま拘束されて。
周りの、自分を見る眼が、化け物のそれだったことに、その時ようやく、気が付けたんだ。
僕はどうなっているんだろう。
どうなっていくんだろう。
そうして、しばらくした後、僕は中級迷宮を出禁になった。
新たに命じられたのは。
「……上級迷宮」
事前情報は一切ない。
潜っているものが少ないからだ。
そして。帰ってくるものも少ない。
ずっと死んだからだと思っていた。
違う。
迷宮に魅入られて、帰りたくなくなったんだ。
僕は、どうやら、戻れないところまで行ってしまったらしい。
いっそ。いっそ死んでしまえば、いいんじゃないだろうか。
死ねるか?
体が勝手に動き、相手を殺し、生き抜いてきた。
中級迷宮の一番の底で、ずっと戦い続けてきてしまっていた自分が。
死ぬイメージが、湧かない。湧けない。
死にたくない。
だから。
相手を殺す。
上級だから何だっていうんだ。
生きてやる。
生きて、生きて、生き抜いて。
きっと、ようやくその時、みじめに死ねる。
頑張ろう。
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