第13話 適正

『汝に新たな力を与えよう――挑み、励み、未知を、満たせ』


 今しがた、教会で適正職業が更新されました。

 元盗賊シーフ改め、暗殺者アサシンの不磨七五三夫です。

 ……。

 …………。

 えぇ……。

 なんでだ。

 戦い方の問題なんだろうか。

 確かに正面切っての戦いは、他の人に比べたら圧倒的に少ないかもしれない。

 でも、暗殺って感じは……しますね、はい。

 甘んじましょう。

 どうやら盗賊時代にできてたことも出来て、暗殺能力の向上、更にはステータスにも相当な補正が掛かっているようで、今まで倒せなかった相手も倒せるようになったかもしれない……。


 でも油断は禁物だ。


 職業が更新されても、強くなっても、僕は一人だ。

 戦いは常に避けていく気概でいかないと駄目だ。

 隠密能力も向上していると聞いて、とても助かる。

 僕は一人じゃない、でも一人なんだ。

 命の掛け方を間違えちゃいけない。


 でも、それはそれとして、力を試しに行ってみよう。


 一階層でちょろちょろ戦ってみよう。


   〇


 七五三夫です。

 これはダメだ。

 暗殺者は、異常だ。

 見るだけでどこをどうすれば殺せるかわかる。

 最適解が常に表示される。

 自信の持てる最低行動及び最大限界行動による討伐、殺傷可能数がわかります。

 戦い、ではない。

 殺す。

 ただそれだけの力。

 命に対する敬意がない。

 ただただ、命を奪うだけの力。

 僕は。

 怖い。

 そう思いつつ。

 この力がないとどうしようもない自分に、嫌気がさしそうになった。

 それでも。

 そんな道を選んだのだから、これはただの、わがままなんだ。

 だから。

 敬意を持つために、戦いにするために、もっともっと。




 強い相手を探さなくては。

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