第11話 数字は人を辞めていく証
不磨七五三夫です。
今、僕はステータス欄とにらめっこしています。
中級に潜り、はや二年。そこそこの強さを得ることができたものの、正面切っての戦いができるモンスターが限られているのが現状です。
これもチートスキル【怪力】があってこその物種。
なくなれば、ただの盗賊……いや鍵開けが苦手な分、初級冒険者よりひどいことになるかもしれない。いくら研鑽を重ね、経験を積んだところで、どうやら現地の人と転移者はステータスに差が生まれやすいことは、調べて分かったことだった。
それを補うためのチートスキル、ということなのだろう。
つまるところ、クソザコナメクジに毛が生えたのが今の僕というわけだ。
そういえば。
ステータス欄の【
これ、怪力の補正抜きでこの数字。
いや怖いな冒険者。
この前リンゴにヒビ入れることができたよ……道理で冒険者が尊敬と同時に畏怖の目で見られてしまうわけだ。
冒険者は――正確に言えば迷宮挑戦者は、迷宮からの恩恵を受けることができる。
見知らぬの宝、豊富な資源、未知の技、そして、人並外れた
それは同時に人を辞めていくということだ。
新しい酒場のマスターから聞いた話だが、冒険者の大半は中級で留めることが多いらしい。
一つは上級迷宮にあまり旨味がないということ。
もう一つは、人を辞めていくということ。
上級冒険者の大半は、滅多に人前に出ない。
その存在そのものが異常に見えるそうだ。
酒場のマスターは過去に一度、上級冒険者の一人を見たことがあるらしい。
気が付けば、病院のベットで起きたそうだ。
何が起きたか覚えていない、と本人は言うが、そのことを語る時の顔は青く、手は震えていた……恐らく言いたくないのだろう。
うーん、上級冒険者になりたくないなぁ。
このままソロでどうにか、中級で生き続けることができたなら、隠居も考えよう。
もう元の世界に帰る気も起きないし、何か特別な理由がない限り、今の生活を維持できるように頑張ってみよう。
ソロだけど。
ぼっちだけど。
……つらいなんて、そろそろ言えないかもしれない。
がんばろう。
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