第1.5話 現地の人から見る転移者たち

 今年も無法者がやってきた。

 力だけは一丁前な奴らばかりだ。

 どこもかしこも若く、考えが浅く、今日のことばかり考えている。

 そんな奴らが話も聞かず、迷宮へと潜っていく。

 幾人ほど良識のある、というよりはこちら側の話をきちんと聞こうとする姿勢がある者がいたが、数の波に飲まれ多数決という名の呪いにより、巻き込まれていった。 

 ああいう子ほど早く死に、巻き込んだ奴ほど長く生きる。

 ひどい話だ。

 馬鹿が馬鹿を見ず、良心を持つものが馬鹿を見る。

 しかし仕方がない。

 一々止めるほどこちらにも余裕がない。

 何より、国から止められている。

 突如としてやってきた者たちの対処法。

 必要以上に関わらず、徹底して平等に扱え。

 これが国からのお達しだった。


 真実がある。

 これはギルド内部でも一定の、外に漏らさぬほどに口が堅く、約束を守り抜く自信と意識のある者だけが聞くことができる真実。


 国は被害者側だ。

 ある日突然、王城内に召喚陣が作り出され、年に一度、異界より『力ある無法者』がやってくるようになった。

 初代の王は非常に頭の回る方だったのが幸いし、力ある彼らを『勇者』として扱い迷宮踏破の足掛かりとした。

 結果的に言えば、成功とも失敗ともなんとも言えない成果で終わったのだが、それが毎年続くことになるとは初代国王でも見抜けなかった。

 以後、転移されてくる者たちの扱いは固まり、下手な刺激さえしなければ歯向かうことはよほどのことがない限り、起きないとされた。

 時折、災厄のごとく暴れまわる者もいた。

 だがそういう者に限って、訳もなくある日突然ポックリと死ぬのだった。

 まるで世界が守ってくれるかのように。

 ただ。

 女神の慈悲と多くのものが言うが、分かるものには違うと断じれた。



 もしそれが女神の慈悲だというのなら、初めから転移者たちの存在を阻止しているはずなのだから。



 これは女神からの試練かもしれない。 

 それを知るものは、正しく、神のみぞ知る。

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