第2話 迷宮も、ぼっち

こんにちは。

不磨七五三夫ふましめおです。

今日は迷宮に潜って、金を稼いでいます。

レベルという概念もありますが、そんなん知りません。

勝手に上がっておいてください。

今日の目標は一層目の踏破ですね。

むろん、ソロです。

え、仲間はいないのかって?

いるわけないでしょ。

受付にあんな態度とられる人間に近づきたい奴なんか一人もいねえよ。

僕だって近づきたくないよ。

僕だけど。

ぼっちでいいんだ。

一層目くらいならソロでも余裕なんですよ。

金が稼げるわ、稼げるわ。


そんなわけない。

チート?ああ、ウチのは勝手に死んだよ。

添え物みたいなもんですよ、これ。

名前負けしてるんですよ、怪力。

いやすごいですよ?

今まで5キロも持てなかった僕が、5キロ持てるようになったんですから。

ええ。

名ばかりチートじゃん、って言いそうですけどねえ。

あなた。

元いた世界で魔法使えましたか?って話になるんですよ、これ。

つまりですよ。

元の世界でできなかったことができるから、チートなんです。

はい。

僕のは怪力です。

そして盗賊です。

基本は忍び歩いて、聞き耳を立てて、敵を見つけたら、背後から刺す。

相手の命を確実に仕留められる場所を探し、何度も繰り返しました。

なんどもです。

命がけでした。

そりゃそうですね、命のやり取りですもの。

命取ろうとしてるのなら、取られるくらいの覚悟が必要なんですねえ。

何度も死にかけましたよ。

だあれも、助けてくれませんよ。

そもそもですね。

迷宮って、パーティで挑むこと前提なんですよ。

というのも、個別で、それぞれの次元で、探索するっていう感じなんです。

同じ場所で出会ったりなんてことが一切ないんです。

死んだらそれまでなんです。

誰も助けてくれず、一人さみしく死ぬんです。

突然かっこいい人とか美女とか表れて、助けてくれるなんてことないです。

死にます。

死ぬんです。

だから強くなるために、殺すんです。

何度も殺します。

お金が欲しいし、力も欲しい。

何よりも。

安心が欲しい。

ほっと一息つけるような、そんな安心が僕は欲しい。

だから、頑張るんです。


つれえわ。


がんばろう。

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