転移したって『ぼっち』は『ぼっち』

雨のモノカキ

第一章

初級編

第1話 始まりも、ぼっち

みなさん、こんにちは。

不磨七五三夫ふましめおといいます。

数か月前にですね、ええ。

異世界に転移したんですよ。

学校のクラスの人たちと一緒に、突然、転移しちゃったんですね。

そしたら、もう目の前には王様がいて、王城の中!

興奮冷めやらぬ中、王様から勇者云々の話を聞きまして。

あー、これはあれだ、と思いました。

もしかしたら友達ができるチャンスかもしれない、と。

貰ったチートが、もう羨望のものかもしれない、と。

もうすっごい期待しました。

みんなはすごいの貰ってましたよ、たぶん。

見てないからわかんないけど。

ステータスチェックっていえば、こうね、ステータスが確認できるんですよ。

そこにね、わざわざチートスキル欄ってのが設けられてましてね、ええ。

僕のね、所にはこう書いてあったんですよ。


【怪力】


いや、うれしかったですよ。

ヒョロヒョロな自分には持ったいない、ね!

もうすごいうれしかったです。

でね、適正職業ってのがありまして。

王城の中で検査してもらいまして。

僕のはこうでした。


【盗賊】


ね!

力のある盗賊、っていうね!

そのぉ、ステータスがね、肉体にしっかり反映してるんですよ。

ヒョロヒョロだと力がなかったり体力がなかったり。

デブデブだと早さがなかったり体力がなかったり、とか。

その人の本当のスペックがステータスに反映されてるんですよ。

どうもね、この世界の力の平均値は大人で10くらいなんです。

僕は、3でした。

子供より低いそうです。

それでもね、怪力補正がつきまして、ええ。

8になりました。

はい。

やべえな、って思いました。

これアカン奴やって思いました。

物語の主人公とかだったら、これが最強の組み合わせになるんでしょう、ね!

モブには関係のねえ、お話でございあんすぁ。

速さもそこまで高くないですし、体力もねえ、賢さもねえ、運もねえ。

何が残っているのか。

もうこれはあれでしょう。

転移、転生特有のね、謎コミュ力のが、培われて、発揮されて。

かつてのクラスメイト達とね、仲良くなってね。

友達どころか、親友もできちゃってね!

ね!

ないわ。

そんなん、なんもなかったわ。

ぼっちだ。

どうあがいたって、ぼっちなんだ。

話しかけようとしたら避けられた僕の気持ちがわかるか?

クラスメイトじゃねえよ、現地の人にだよ。

しかもギルドの受付だよ。

女性じゃないよ、男性にだよ。

すっごい厳つい強面の人にだよ。

どうすりゃいいんだよ。


今は、なんとかなったけど。

ぼっちは変わらねえな。


は。


つれえわ。


がんばろう。

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