第3.5話 我が命、銅貨一枚也

 不磨七五三夫です。

 くたばりかけてます。

 ほんの一瞬のミスや油断が命につながるということを、嫌というほど思い知らされました。

 原因はゴブリンの解体に集中しすぎてしまったこと。

 背後から迫るプチの存在に気づけず、思いっきり背中を打たれてしまった。

 プチとは5歳児の頭ほどの大きさの液体生物。

 つまるところのスライム。

 しかし、考えてほしい。

 子供の頭ほどの大きさの液体が突進してくるのである。

 そんなものが背中に向けて全力で突進してくる。

 背骨が折れなくて本当に良かった。

 痛めた程度で済んだのは防具の上からなのと、当たった角度が良かったからだ。

 運がよかったとして言いようがない。

 下手をすれば迷宮で死んでいた。

 本当に危なかった。

 今までプチを普通に狩っていたことも相まって、ソロの自分でも何とかなる存在だと思い込んでしまっていた。


 違う。


 相手はこちらを捕食するために全力を尽くしてくる化け物だ。

 簡単に狩れるかもしれない。

 同時にこちらも簡単に狩られる存在だということを忘れてはいけない。

 もっと、もっと研ぎ澄まされなくてはいけない。

 しばらくは安静と言われた。

 これを機に意識を改める必要がある。

 時間と貯蓄はある。

 しっかりと焦らず生きることを中心に考えよう。


 ちなみに治療には銅貨が10枚、銀貨で1枚必要だった。

 プチの討伐及び素材の売却で銅貨が1枚。

 僕の命は銅貨1枚でお終いになりそうだったのである。


 がんばろう。

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