第4話 冒険の終わりに
白パンをレモン水で流し込むことの最強さ、よ……。
どうも、こんばんは。
不磨七五三夫です。
あの後、ゴブリンは欲しいところだけ毟り取り、とどめを刺して放置しました。
迷宮のほかのモンスターが彼らを食すので何の問題もありません。
解体で汚れた使い捨ての手袋等も置いておきました。
小遣い稼ぎの連中が拾っていくでしょう。
杭は回収しましょう。
まだ使えます。
きちんと洗って、使いなおしましょう。
今は、仕事を終え、迷宮から地上へと帰還し、酒場に寄っているところです。
未成年なのでお酒は飲みませんが、冒険者には食事を格安で提供してくれますし、ここのレモン水が好みなので欠かせません。
昔は黒パンでしたが、余裕が出てきたので冒険後は白パンを頼みます。
最高にうまいです、ええ。
それはさておき、もう一年が経過しました。
この世界にきて一年ですよ、ええ。
よく生き残れてきたものです。
ステータスもそこそこになりましたし、スキルも充実してきました。
なによりようやくチートという名前、ズルの面目躍如というのでしょうか、怪力が活躍してくれるようになりました。
先のゴブリン解体のモツ抜き、あれは怪力を利用しています。
あ、普通の方ならこんなチート使わなくても普通にできます、大丈夫です。僕だけは、この力が必要なんです。このチートのおかげで毎日の寝床と食事が得られるようになったのは、本当にありがたい。
もう寒空の下、死ぬかどうかわからずに路地で寝るようなことはないのです。
本当に。
ありがたい。
そういえば他のクラスメイトの情報が偶に入ってくるようになりました。
風のうわさってやつでしょうか、活躍している子は活躍しているみたいです。
死んだ子もたくさんいるようですが、嘘だろと思いました。
どうにも強すぎるチートに驕って、くたばってるらしいです。
この話を聞いて、僕は正直なところ、よかったと思いました。
クラスメイトが死んだこと、ではなく僕のチートがそこまで強力じゃなかったことにです。
怪力というシンプルで、しかしながら、この世界じゃ埋もれやすいもので、かつ僕自身の能力のなさが、ただのステータス補正程度に収まっている現状。
普通の冒険者として活躍するくらいに役立つ、今の立ち位置が一番いいのかも。
死なない。
生きて明日を迎え、安心して眠ることができ、食事もとれる。
最高だ。
偶に風呂にだって入れる。
最高だ。
風の噂だとクラスメイトのイケメンたちがハーレムを作ってるらしい。
死ねばいいのに。
なんか拗れまくって刺されて死ねばいいのに。
くそが。
あ、マスター、お酒を一杯。
おススメで。
え?
未成年の飲酒?
大丈夫ですよ僕、実は大人なんで。
ええ。
キツイ奴で。
……レモン水じゃないっすか。
あと二年だろって?
わかりました。
二年後、おいしいやつください。
え、来年でマスター辞めるんですか。
…………。
そっすか。
なんか、つれえわ。
明日も、がんばろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます