第9話 生き残るだけでは駄目な世界

 随分と、みずぼらしい。

 あれらは同じクラスでも人気のある奴らばかりだ。

 それが今、初級でくすぶる人たちとそっくりの見た目で中級迷宮を潜っている。

 なんで、という感情が湧いてきた。

 僕の中では一種の一つのあこがれというか願望というか、一定のラインというものが勝手に作り出されていたようで。

 つまるところ。

 現代でうまくいっているはずの分類で振るいにかけられていた彼らは、例え異世界にきても上手くいくはず、と。

 でなければ。

 なぜ現代で、元の世界で、僕は。


 あ、どうも。

 七五三夫です。

 不磨です。

 ちょっと感情が煮えたぎっていました。

 危ない。

 殺意なんか滲み出したら、ほかのモンスターに気付かれる。

 なにより彼らがどんなチートをもっているかもわからない。

 僕のチートは怪力。

 隠蔽を使用して隠れているこれを看破されたとして、対抗できる手段が少なすぎる……なんで僕は戦う前提なんだろうか。

 もしかしなくて、僕が同級生だと分かれば、彼らは別に襲わない。

 ……そんなことは、たぶん、ない。

 イジメもなかった。

 でも関わられることもなかった。

 空気。

 それが元の世界の僕。

 今の僕も、空気。

 彼らをやり過ごそう。

 ついでにどんなチートか見れれば、儲けもんだ。


 しかし、まあ、みずぼらしい見た目でも、いや顔は立派に綺麗だわ。

 さっき暴言はいてた奴も凛々しい顔立ちで、ええ。

 いや、なるほど、これはこれは。

 うん。

 黙ってみてる分には問題なさそう。


「……そういや、聞いたか。あの話」

「ああ、不磨くんのこと?」

「もし本当なら……」

「ああ、助けが欲しい」


 一生彼らに関わることはやめよう。

 あれは、知っている。

 あの眼は知っている。


 人を、騙そうとしている、暗い眼だ。

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