第8話 無駄なものなどない

 ゴブリンは素材の宝庫である。

 生き胆は薬に、目玉は珍味に、脳や血、臓物は呪術の媒体に。

 肉や骨や皮は迷宮に住む別のモンスターがすべて平らげる。これらの物は迷宮生物であるモンスター以外が食すと必ずあたる。

 つまるところ食材関係は迷宮内では見つからない、わけではない。

 モンスターは食せないが、宝箱の中には食材が入ってる場合がある。しかも鮮度も採れたてクラスばかりで『入手即食す』なんてこともできる。

 この迷宮に無駄なものはない。


 挑戦する僕たちも含めて。


 こんにちは。

 七五三夫です。

 生きています。

 中級迷宮ソロという、どうあがいても絶望な状況の中でも一定の収入を得ることができるようになったのは、ドワーフの工房の人たちのお陰である。

 僕は確かに迷宮では一人だ。

 それでも、たくさんの誰かに助けられている。

 それを実感できる、この片手剣。

 攻撃力が上がったとゲームではないが実感できるほど、狩れる速度が上がった。

 血を拭い、研ぎ、大事に扱い、数か月経った今でも謙遜なく使える。

 なんどか鍔競り合いになっても持ちこたえてくれる耐久性。

 信頼と信用。

 まさしくそれが形となったこの片手剣は、たとえ折れたとしても僕の大事な宝物として置いておこう。

 今日の狩りは、あと二匹ほどにしよう。

 隠蔽からの強襲を繰り返していく様は正しく暗殺者のようだが、剣士のように正面から戦うわけにはいかない。

 僕は盗賊で、チートだって大したもんじゃない。

 一匹ずつ、確実に、仕留めていく。


 近くで誰かが戦っている。


 僕は隠れ、その様子を窺う。

 モンスターか、他の冒険者か、あるいは。


「くそ、チートを使ってこれとかクソゲーかよこの世界!」


 僕の、かつての同級生か。

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