第48話 運命【完結】

2年後…


 茜が旅館の若女将として働いていると、外から物凄い音が近づいて来る。


 仁だった。


 仁は何にそんなに慌てているのか、ひどく余裕のない様子だ。


 そして服はボロボロ、顔だけは何故か傷がなかったが、全身傷だらけだった。


「おふくろ!!茜!!すまねぇ!急ぎの用事ができた。緊急を要するんだ!親父もいたら来てくれ!!」


 仁は今まで見たことがないほど余裕のない様子だった。


 そして家族は慌てて仁のところに集まった。


「なんだ仁、えれぇボロボロじゃねぇか?誰にやられたんだ?まさか…羅刹の奴らじゃ…」


 豪鬼は仁に尋ねる。


「ちげぇよ、あいつらじゃねぇ!この怪我は俺が兄貴に気合を入れられただけだ。だから問題ねぇ。兄貴はすげぇ人だぜ!」


 なぜか仁は嬉しそうだ。


「兄貴?あたしはあなたと茜以外生んだ覚えはないわよ?」


 小百合はバカな事をいう仁に優しく尋ねる。


「おふくろ、ちげぇんだ。兄貴ってのはなぁ、俺が尊敬する兄貴ってことだ!おふくろの子じゃねぇよ!!」


 なぜか隣で豪鬼がほっとしている。


 少し面白い…


「それでおにいちゃん、何をそんなに焦ってるのよ?意味がわからないわ。」


 茜は仁の言う事が支離滅裂すぎて意味がわからない。


「おっとそうだった!後5日後に兄貴達がこの町に来るんだ。俺は舎弟として兄貴を盛大に向かい入れなきゃなんねぇ。だから、宿の準備や兄貴達がこの町で着る服なんかを用意してほしいんだ。他にも色々手続きしなきゃなんねぇ、時間がねぇんだ!この通りだ!頼む!力を貸してほしい!」


 仁はそういうと今まで一度も家族に頭など下げたことないのに、その襟足金髪リーゼントの頭を必死に下げた。


 息子のその様子を見て豪鬼は大きく笑った。


「がっはっは!!これはめでてぇ!仁!お前やっと一人前の面になったな!その兄貴に感謝しねぇとな。こうしちゃいけねぇ、じゃあさっさと準備するか!なぁかあさん!」


「そうね、仁をこんなに変えちゃうなんて、どんな人なのかしら…興味あるわね。」


「兄貴は人族で年は俺と同じくらいだと思う。名前はシンっていうんだ!」


 すると仁の言った名前に茜は全身に雷が落ちたように痺れて固まった。


 茜は茫然としている。


「おい!どうした茜?」


「ん?茜?大丈夫か?」


 仁と豪鬼は茜のその様子に心配する。


 しかし茜は答えない。


 言葉が出ない程の喜びが全身を貫く。


 そして…


「会える!遂に会える!やっと会える!!お兄ちゃん!!早く連れてきて!!」


 今度は茜が必死な形相で仁に詰め寄った。


「お、おう…いや、無理だろ…だから5日後だって…」


「いいから早くして!おにいちゃんでしょ!!早く連れてきて!!」


 茜の急変ぶりに仁が後ずさった。


 その勢いは凄まじかった。


 二人の両親は困惑する。


「茜、その人の事知ってるのか?あったことあるのか?」


 豪鬼は茜に尋ねた。


「ううん、会ったことない。でも知ってる。私の運命の人よ。」


 今度は豪鬼に衝撃が走った。


 愛してやまない娘の運命の人だと??どこのぼんくらかわからないが許せん!!


 なぜか豪鬼の顔が険しい顔となった。


「おう!仁?どういうこった、これは?あぁ?」


「いや!俺しらねぇよ!なんだよその話!!」


 仁は茜と豪鬼の二人に詰め寄られる。


 そして小百合が間に入る。


「まぁまぁ、とにかく急がなきゃいけないんでしょ?まずはそれからよ、みんな今から戦争よ!急いで迎え入れる準備をしなさい!!」


 小百合の厳しい声に家族全員が我に返り、シン達を迎え入れる準備をするのだった…


 そして、シンと茜はその後運命的な再開を果たすのだった…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とある鬼が歩む…愛の軌跡 キミチカ @okujapan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ