第46話 友達

 茜は目が覚めると、外は既に日が昇っており朝だった。


 茜の枕は濡れていた。


 目にはまだ涙が残っている…


 茜は夢で見た全てを鮮明に覚えていた。


「あれは間違いない。おじいちゃんだった…最後に見た人は誰だろう…」


 茜はそう呟くと起き上がる。


「よし!あたし頑張るね!お爺ちゃん!」


 そう気合を入れた茜は昨日までとは別人のように明るくなる。


 両親は茜のその元気さに、逆に心配になるくらいだった。


 茜の心の中で寂しさは消えることはない。


 しかし、お爺ちゃんとの思い出までは消えていない。


 そして二人でした最後の約束も…


 その日以来、おじいちゃんは夢に出る事はなかった…


 数日後、茜は眠ると、また前と同じように夢の中で真っ白な空間に自分がいた。


 そこで膝を抱えて寂しそうに座っているのは紛れもなく自分だった。


 しかし、自分はここにいる。


 なぜ??


 自分で自分を見ている。


 座っている茜はとても寂しそうだ。


 普段の元気な姿とは違う、本当の自分だ。


 座っている茜は泣いていた。


 すると、泣いている茜の後ろから茜よりも同じ位の年齢の少年が近づいて来た。


 少年は座っている茜に声をかけた。


「大丈夫?どうして泣いているの?何か辛いことでもあったの?」


 声をかけられた茜は顔を上げて少年を見た。


「また一人になっちゃった…大好きなお爺ちゃんが遠くに行っちゃったの…」


「そっかぁ…一人は寂しいよね…ねぇ、じゃあさ僕たち友達になろうよ!!僕ねシンって言うんだ!君の名前を教えてよ!」


「茜…」


「茜ちゃんかぁ!可愛い名前だね!よろしくね!もう茜ちゃんは一人じゃないよ!寂しくなったら僕がいるから!だからもう泣かないで…」


 少年は茜の頭をいい子いい子する。


「本当?茜…一人じゃない?一緒にいてくれる?」


「もちろんだよ、だって僕は茜ちゃんに会いたくて来たんだ。」


「あたしに?会いたい?」


「そうだよ!僕もおじいちゃんと約束したんだ。」


「おじいちゃんと?」


 少年がそういうと、茜は嬉しそうな顔になる。


「僕も茜ちゃんを見ているから、茜ちゃんも僕を見ててね。」


 そういうと少年と座っていた茜は消えていった。


「あの子は誰なんだろう…」


 一連の自分と少年の光景を見ていた茜は不思議に思った。


 そして何故かその少年の事が気になるのだった…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る