第16話 瞬殺
赤鬼は開始の合図と同時に全身を炎に包ませた。
「がっはっは!どうだ?びびったか?近寄るだけで燃えカスになるぜ!カスのお前にはピッタリだな。」
赤鬼は余裕そうに笑う。
「ふん、くだらない。」
誠は鼻で笑った。
その様子を見て赤鬼は激昂した!
「いい度胸だ!一瞬で決めてやるよ!!」
そういうと赤鬼は体格に似合わず、物凄い勢いで誠にタックルをしてきた。
しかし、誠は動かない。
「動けないか!馬鹿め!もらった!!」
「アイスミスト…」
誠は小さくそう呟き、手の平を赤鬼に向けると周囲の気温が一気に氷点下まで下がる。
コロシアムのリングは凍りの霧で包まれた。
「何!!!」
それと同時に赤鬼の纏う炎がかき消され、タックルを中断した。
赤鬼は何が起こったか理解できずに、目の前を見るとそこに誠はいなかった。
「くそ!水の使い手か!どこ行った!!」
赤鬼は叫ぶ。
誠は周囲を凍らせて赤鬼の視界を遮ると、一瞬で立ち止まっている赤鬼に接近し…
「ラピスラズリ…」
と呟き、赤鬼の両腕をもぎ取って赤鬼の背後に立つ。
ラピスラズリとは叡智の石と呼ばれる青く透明な石である。
そしてその名を冠する技は、第三の目で全てを見透かし、相手の急所を捉えると一瞬で凍らせてしまう。
いくら体が頑強な赤鬼でも腕の関節は脆い。
そして誠は、凍って脆くなった両腕を目にも止まらぬ速さでもぎ取ったのだった。
「ここだよ、鈍間」
誠が赤鬼に自分の居場所を告げる。
赤鬼は後ろから聞こえた声に反応し振り返ると、先端の凍った赤い腕を2本抱えている誠を見つけた。
「そこか!逃げ足だけは早えな、くそ餓鬼が…ん??その手に持ってるのはなんだ?」
見覚えのある腕だった…
「それは…まさか…」
赤鬼が自身の腕を見ると、肩から先の両腕が消えていた。
「今頃気付いたか鈍間め…もう勝負はついた。ママの乳でも吸っておけばよかったな…雑魚が…」
「腕がぁ!!!俺の腕がぁ!!!!」
誠が持っている腕が自分の腕であることを認識した赤鬼は、恐怖から体を発火させてしまい、凍って痛覚が無くなっていた肩の氷を解かしてしまった。
「ぎゃああああああああああああああああ!!」
リングに赤鬼の叫びが響き渡る。
赤鬼は余りの激痛に叫び声をあげ、赤い顔を真っ青にさせて崩れ落ちた。
「そうだった、この汚い腕は返すぜ。」
そういうと誠は赤鬼に腕を投げ捨て、背を向けてリングから降りようとする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
会場はあっという間の決着に何が起こったのかわからず、静寂に包まれた…
「し、試合終了!!大和町の勝利!!!!」
遅れて審判の声が会場に響いた。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
会場は大歓声に包まれる。
「なんということでしょう!!圧倒的!!圧倒的です!!大和町!初の一回戦突破!!これは凄い事になりました!前回の準優勝チームがまさかの初戦敗退!これが!これがオニンピックです!!早くも大番狂わせだ!」
解説者の興奮した声が会場に響いた。
しかし、まだ1回戦…オニンピックはまだまだ続くのだった。
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