第14話 鬼ヶ島

地獄の合宿から2か月後、誠達はオニンピックの会場である


   鬼ヶ島


に来ていた。


「やっと着いたな…明日は開会式で大会は明後日からか…」


 誠は鬼ヶ島に着くと、独り言を呟いた。


「緊張するね!誠は全然緊張してなさそう。」


 誠の独り言を後ろで聞いていた美琴は誠の横に並んで誠に話かける。


 チームメンバーは全員同じ船に乗って、この島にきていた。


「緊張か…その感情もまだよくわからないな…」


「誠ってたまに変な事言うよね、それなんなの?」


「気にするな、ただの独り言だ。さぁ行くぞ。」


 親の愛も知らず、友達との出会いも無かった誠は、本来あるべき感情が大きく欠如していた。

 故に、今回の合宿を通じて多くの経験と仲間とのふれあいの中で自分の知らない感情が芽生える。

 しかし、それがなんなのか誠に知る術はない…


 その夜、町長と秘書が誠達の滞在する宿場に訪れ、決起集会を開いた。


 誠はそういう雰囲気にまだ慣れておらず、一人で窓際に座っている。


 すると町長が誠の傍に来た。


「調子はどうかな?誠殿、今回の大会は君にかかっているからな。」


 誠は町長を横目でチラリとみると…


「別にお前の為に来たわけじゃないぞ?勘違いするな、殺すぞ?」


 誠から殺気が漏れる…


「ひっ!」


 町長から思わず小さな悲鳴が漏れる…


「まぁまぁ、誠君。町長も悪気があったわけじゃないんですよ、お酒の席の事ですからここはお納めてくれないか。」


 秘書が助け舟を出した。


「ふん、まぁお前には借りがあるからな。殺さないでやるよ。だが目障りだから消えろ。」


 チームメイトとは大分打ち解けてきた誠であるが、やはりそれ以外の人間には相変わらずである。


 町長と秘書はすぐに誠から離れて話し合った。


「どういうことだ?道徳教育はうまくいってるんじゃなかったのか?」


 町長は秘書に詰め寄った。


「はい、あれでもかなりマシになったほうです。昔なら町長は既に死んでますよ。」


「あれでマシか…まぁよい。大会で勝てばそれでいい。隣町だけには負けるなよ?」


「私に言われても…どうしようもないかと…」


「うるさい!絶対どうにかしろ!わかったか!」


 それだけいうと、町長は一人酒をがぶ飲みし始めた。


 そんな町長を見て秘書は静かに呟く。


「ゴミが…まぁせいぜい今の内に偉そうにしておくんだな…ふふふ。」


 そういって秘書は静かに笑うのだった。

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