第34話 送別会

「センセイ!はい、これ」

「ん、なにこれ?」

「送別会の案内です。参加でいいですか?」

「あ、うん」

え?嘘でしょ




「ちょっと、師長〜」

「なに?」

「これ、どういうことですか?」

「ん?後藤さんの送別会だね。4月からオペ室へ移動になるんだけど、聞いてないの?」


「聞いてな...い。いや、それよりなんで?まだ1年だよね?」

「希望が出てたんじゃないの?ねぇ、どうなってるの?」

「え?」

「ん?」

迫力ありすぎ


「えっと...振られました」

「...そう。じゃ、良い機会じゃないの?お互いに」

「えぇ〜」

「何があったか知らないけど、振った方も辛いんじゃないの?気持ちよく送り出してあげたら?」

「・・・努力します」




とは言ったものの。



「ちょっとセンセイ、飲み過ぎ〜」

「飲まずになんて、やってらんない。ほら師長、呼ばれてるよ〜行って!私は1人で大丈夫だからぁ」



「センセイ、お酒はもうそれくらいにして。はい、烏龍茶」

「あ、主役の友希ちゃん登場!?」

「すでに酔ってるし…もう飲まないって言ってなかった?」 

「その約束は、もう無効でしょ」

別れたんだから

そう言ったら、寂しそうな顔をするから


「なんで行っちゃうの?そんなに嫌なの?」行かないでよ...

ホントだ酔ってる。つい本音が...


「ここへ来る前に希望を出してたんだよ」

「でも、断らなかったんでしょ?」


しょうちゃん...ごめん

消え入りそうな微かな声だったから、聞こえないフリをした



数日後。


ナースステーションから

「元気でね」

「たまには遊びに来てね」

という声が聞こえて

ゆきが挨拶してるのが見えた


今日で終わりかぁ

そう思ったら、体が勝手に動いてた


更衣室近くの自販機で待つ

荷物を持った、友希がやってきた

「あ...」私に気付いて歩みを止める


「これ、あげる」

ブラックコーヒーを渡す

「間違えて買っちゃった」


「ありがとう」



「この間は、ごめん」

「お酒、弱すぎですよ」

「だよね」

微かに笑う



「ずっと好きでいてもいいかな」

「・・・」

「あ、私の気持ちだから許可はいらないか。ずっと好きだから...やばっ、2回も言っちゃった...」


クスリと笑う


「頑張ってね」

「...はい」

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