第33話 ずっと。

「最近、どうよ?」

「どうって、何が?」


そんな会話で始まる

同期の結城薫(同じ病院の婦人科医)との距離感が、今は心地良い


「ちっ、引っかからないかぁ」

「え?何?」

「いや、ポロッと秘密でも喋るかなぁと思って」

「何それ」

「ほら!患者さんに、どうですかぁーって言うとさ、いろいろ喋ってくれるじゃん、いらんことまで」

「あぁ、それ!ドクターにだけみたいよ。看護師さんが言っても、話してくれないって言ってた...あ。」

「へぇ、そうなんだぁ。って、え?なに思い出して落ち込んでるの?」

「なんでもない」




「で、最近どうなの?」


「はい!薫先生!」

「はい、何ですか?祥子さん」

「最近、失恋しました〜」

「え〜‼︎」

「なんで喜んでるのさ」

ちょっと落ち込む

明るく話してみても辛い

辛すぎる


そんな表情を見てとったのか

「納得してないの?」

「出来るわけない」


「じゃ、なんで別れたの?」

「...だって泣くんだよ?笑った顔が好きだったのに、いつからか笑顔が少なくなってた」

そう、ぜんぶ私のせいだ


「まだ好きなんだ」

「好き。たぶんずっと」


「相変わらず一途だねぇ」

「薫が一途じゃなさすぎなんだよ」


「いいんじゃない?ずっと好きでいれば」

「いいの?」

「いいよ」

「そっか」

「泣くなよー」

「泣いてないよー」

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