第26話 女子会

「そーだ、来週末、地元で女子会する予定なんだけど、いいかなぁ」

しょうちゃんの地元は県内だから近い

車で30分くらいの距離だ


「うん、いいよ」

前もって言ってくれるから嫌とは言えないけど

女子会かぁ


普通、恋人が『合コン』ではなく『女子会』ならば安心するところだろうけど

しょうちゃんの場合の女子会は、誘惑が多いんじゃないだろうか?


私の心配を知ってか知らずか

テレビでスポーツニュースに夢中な、しょうちゃん

やっぱりテレビは要るなぁって呟きながら。


「高校の時の友達?」

「うん」

「実家に泊まるの?」

「いや、帰ってくるよ。実家にも顔は出すけど」

「じゃ、迎えに行くよ」

「いいの?助かるよ」


大丈夫だよって

遠慮して断られるかと思ってたら

すんなりok

ちょっと嬉しいな



教えてもらったお店の近くに、無事に駐車する

早めに着いたらお店に入ってきていいよって言ってたけど

入りづらいから待っている

一応、着いたことをラインするけど既読にはならない


10分くらい待ってたら

あ、出てきた?


3人の女子

楽しそうに戯れてる

しょうちゃんが頭ポンポンしてるのは

オペ室の河合さん?


「お〜友希!お迎えありがとう。

あ、紹介するね。美樹...は、知ってるか」


『ども』

「あ、こんばんは」


「で、こっちが、

美樹のお姉ちゃんで

私の親友の河合一美かずみ。いちみちゃんって呼んでる」


「で、こちらが私の彼女の友希ちゃんれす。可愛いでしょ、ふふ」

「ちょ、しょうちゃん?」


『ごめんねぇ、酔ってるから。これ、たぶん記憶ないわ。とりあえず車乗せるね』

一美さんが誘導する


『ほんとに来たんだ〜来なかったら、お持ち帰りしようと思ってたのに〜』

美樹さんの挑発的な発言にびびる


『ちょっと何言ってるの〜本気にしてるじゃん。ごめんねぇ、この子昔から祥子のファンで。冗談だからね。じゃ、あとよろしく』


「はい。ありがとうございました」


『心配しなくても大丈夫だよ!祥子、友希ちゃんのことしか見えてないから』

小声で言って、去っていった


当の、しょうちゃんは


車へ戻ったら、後部座席で爆睡中

もう〜ずっと寝てろ!




「しょうちゃん、着いたよ〜」

「ん〜あれ?なんで?」

「なんでじゃないよ、歩ける?」

「歩ける歩ける!え?あれ?」

「もう〜」


なんとか部屋へ


「友希〜今日はありがとう〜」

キスしようとしてくるから

「酔っ払いとは、しません」


拒否したら、シュンとなって


「なんか怒ってるの?」

「怒るようなことしたの?」

「してない。と思う」


おもいっきりしてたじゃん


「え?なに?」

「河合さん、一緒だって知らなかった」

「言ってなかったっけ?」

「美樹って呼んでた」

「前からだけど」

「頭ガシガシやってた。私、あんなことやられたことない」

「なんだぁ、やって欲しいの?」

「嫌っ」

触れようとした手を逃れる

「誰かと一緒なんて嫌だから!」


謝るかと思ったら

いきなりキスしてきた


「ちょ、しょうちゃん、やだって言ってるじゃん」


「キスしたいと思うのは、友希だけだよ」

え?泣いてる?

「ごめん、ソファで寝るね」


ちょっとキツく言い過ぎたかなぁ



「ぅわっ、あ〜」

あ、起きたらしい


「頭痛い?」

「ん〜」


「コーヒー飲める?お水がいい?」

「コーヒー、ブラックで」

「ブラック飲めるの?」

「飲んでみる」

「ん」



「あのさぁ、全然覚えてないんだけど、ソファで寝てたってことは、なんかやらかした?」

「覚えてないの?全然?どこから?」

「お店で飲んでるところで終わってる。迎えに来てくれたんだよねぇ、やばっ、それも記憶がない」


なんだ、怒り損か


「そーなんだ」

「ちょっとシャワー借りるね」

何したんだろ

思い出さないかなぁ

ぶつぶつ言いながら出ていく


コーヒーを一口飲んで

「苦っ」

やっぱりね


「頭痛は良くなったけど、記憶は戻らないよ」

「無理に思い出さなくてもいいんじゃない?」

「思い出したくないくらい、酷いことした?」

不安そうな顔

「そうでもないよ、押し倒されたくらいだから」

「げ!最悪じゃん・・・ごめん」

「冗談だよ!あ、そういえば。オペ室の河合さんに私達のこと知られちゃったよ」


しょうちゃんが自慢げに喋ったんだよ


「そっか。美樹なら言いふらしたりはしないだろうけど」

「信頼してるんだね」

「妹みたいなもんだよ」

「妹かぁ...いいなぁ」

「ゆきは、妹じゃないよ!」


何ムキになって...

あ、昨夜のアレか

『私の彼女、可愛いでしょ』ってやつ

うん、あれだけは思い出して欲しいかも


「うん」

「もうお酒は飲まないから、許して」


「もういいよ。あ、今日準夜だから朝ごはん食べたら帰ってね」

「ん」



「そろそろ帰るかな」

「うん」


「友希、キスしていい?」

「キスだけなら」


しょうちゃんのキスは、ほんとに分かりやすい

その時の気持ちがダイレクトに伝わってくる


今日のは

『好き』で溢れていたから

結局、全て許してしまった



「もう、しょうちゃん、お昼には帰ってよ〜」


「うん、わかってる」



「ねぇ、しょうちゃん、私これから仕事なんだから、少しは手加減してよ〜」

「ごめん。ちゃんと送り届けるから」


「当然です」




「友希、ありがと」

「ん?」

「出逢ってくれて」


もう〜普段言わないクセに

時々こういう事言うんだから〜


ドキドキするじゃん



「ダメだ、しょうちゃん、遅刻する!」




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