第25話 新たな年

「ねぇ、友希。年末年始はどうするの?」

「31日が準夜勤だから病院で年越して、そのまま、久しぶりに実家に帰ろうかなと思ってる」

「そっか」

「寂しい?」

「ん〜ゆっくりしてきて」

「も〜そういう時は、嘘でも寂しいって言うもんだよ」

抱き枕が飛んできた

「え?え?寂しいよ、もちろん嘘じゃなくて!寂しいけど久しぶりだからゆっくりしておいで!って言う意味だよ」

「なにアワアワしてんの?」

クスクス笑ってる


さっきまで抱き枕がいた場所にスルリと滑り込む

「帰るんじゃなかったの?」

「もうちょっとだけ」

「かわいい」


言われ慣れてない言葉を囁かれ

耳が熱くなる


気づかれないよう

友希の胸に顔を埋める

「いつ帰ってくるの?」

「2泊の予定だから、3日には」

「駅まで迎えに行くよ」

「いいの?」

「早く会いたいし」


「しょうちゃん、、」

「ん?」

「もっかい、しよ!」

「御意御意」

「え?なにそれー」



〜〜〜


電車からホームに降り立つ

顔をあげる

歩き始める

目が合う

少し驚いて

そして笑顔になる


想像通りすぎて

つられて笑顔になる


「ホームまで来てくれたの?」

「おかえり!」

「ただいま!」


手を差し出すと

繋ごうとするから


「荷物...持つよ」

「あ、ありがと」


逆の手を、そっと繋ぐ



「ん〜やっぱり我が家が1番!」

世間でよく聞く台詞を、複雑な気持ちで聞いた

「なに?」

「ううん、なんでも。楽しかった?」

「うん、まぁ。田舎だから何もないけど」

「田舎、好きだなぁ」

「あ〜しょうちゃんの好きな自然はいっぱいかも」

「いいなぁ」


「...いつか連れてくよ」

「うん...何かあった?」

「何かって?」

「ん〜初恋の人に偶然会ったとか、ナンパされたとか、お見合いさせられたとか、その他いろいろ」

「ないよ〜、何?そんな心配してたの?」

「してたよ。心配だったし、寂しかったし」

「しょうちゃん、なんか今日、素直だね」


「えっと、いつもは素直じゃない?」


「じゃない。わかってるけどね、照れ隠しだってことは」

「・・・ごめん」

「いいよ、好きって言ってくれなくても、わかってるから」


「言ってなかったっけ?」

「1回しか」

「・・・ごめん」


いいよ、態度で示してくれれば

って、微笑むから


我慢できるわけない


「会いたかった」

顔を見られたくなかったので

耳元で囁いて

そのまま首筋にキスをした



「しょうちゃん、ごめん」

「・・・なにが?」

「母親がね、いろいろ言ってきて」

「・・・結婚しろって?」

「うん、そんな感じ」

「お年頃だもんね、どこも同じだと思うよ」

「今まではそんなに言わなかったんだけど、ちょっと体調崩したみたいで気弱になってて」

「大丈夫なの?」

「うん、身体の方は大丈夫。それで、しょうちゃんとのこと、ちゃんと言えなかった」

「うん、親の気持ちもわかるし、簡単には言えないよね」


「しょうちゃん家も?」

「うちは、もう知ってる」

「カミングアウトしたの?」

「話す前にバレた。んで勘当された」

「え?」

「父親が激怒してね、母親のおかげで亡くなる前に和解は出来たんだけど、時間かかったな。だから、今は無理に話さなくてもいいと思うよ。時期を見て、2人で一緒に考えていこう」


「2人で?」

「ん、もう1人で決めさせないよ」

「しょうちゃん、なんか、今日かっこいい」

「え?いつもは?かっこわるい?」

「ふふ、カッコ悪いしょうちゃんも好きだからね」

涙目で言うなよ〜

全然フォローになってないし









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