第24話 ビギナーズラック

※※※


目が覚めたら、しょうちゃんの代わりに抱き枕のカーターくんがいた

『ちょっと走ってくる』のメモがついていた

元気すぎるよ


二度寝した

ドアが開く音で、2度目の覚醒

「起きてる?ねぇ、雪降ってるよ!テンション上がっちゃって、いつもより長く走っちゃった。はい、お土産!」


しょうちゃんの手に乗ってるのは、ちっちゃな雪だるま


無邪気すぎる

「子供かー」

ま、そんなところも大好きだけど


「やばっ、ちっちゃいからすぐ溶けちゃう。冷凍庫入れていい?」

「え?取っておくの?」

「だめ?」

「しょうちゃん、雪なんだからさぁ

溶けるのはしょうがないよ。そういう運命」


え?なに?


「そうだね、シャワー借りるね」


一瞬だった

気のせいかな

寂しそうな表情




「ねぇ、今夜、何食べたい?」

コーヒーを淹れていたら

背後からハグされて

石鹸の匂いに包まれた

「ん〜久しぶりにお寿司がいいな」

「お、いいね!じゃぁお店は結果次第だな」


ん??


で、連れてこられたのが




「なんで、競馬場なの?」

「だって今日、年内最後の日曜日だよ?」


「...うん、ん?ごめん、わかんない」


ニヤニヤして

なんか企んでる顔?

「じゃ、好きな数字、2つ。教えて!」

「ん〜『3』と『5』」


※※※


なるほど。

『3』『5』ね


馬連、枠連、単勝、複勝くらいでいいか。

「じゃ、コレ。メインレースの馬券ね、持ってて!馬、見に行こう」


パドックまでは、人混みだから

手を繋いで歩く。


「わ〜お。馬って、こんなに綺麗なんだ!筋肉凄っ」

「筋肉、好きだねぇ〜気になる馬いたら、馬券買っていいよ」


買い方を教えながら、一緒に買って

「競馬場なのに、遊具もあって子供もいっぱいだし、公園みたいだね」

最初は不安顔だったけど、今はノリノリだ


実際のレース見て

「かっこいい〜」


馬券が的中したら

喜んで


外れたら

がっかりして


コロコロ変わる、その表情が面白くて。



「そろそろだよ!」


関東で開催される、今年最後のG1レース


今は

パブリックビューイングってやつかぁ?

って言いながら、大画面に魅入っている


ファンファーレからの盛り上がりに

「鳥肌立っちゃった〜」って


それは、同感。





そして、結果。


「しょうちゃん、今日は私の奢りね!」

「ごちそうさまで〜す」




食後のコーヒーは、友希の部屋で。


「しょうちゃん、今日はありがとう。楽しかった」

「ん、私も。友希のおかげで、美味しいお寿司が食べられた。あ、でも今日のはビギナーズラックだからね、あんまり嵌まらないでよ」

「しょうちゃんと一緒の時にしかやらないよ、それならいいでしょ?」

「ん、それがいい」

「今日は帰っちゃうんだよね?」


「うん。..うっ..んっ」

不意打ちのキスをするから


応戦のキスをした



「やっぱり...しょうちゃん、何が不安なの?」

「え?なんで?」

「わかるよ...私はずっとそばにいるよ。いなくなったりしないからね」

「ん」

抱いていた腕に、さらに力を込める


しばらくそうして、全身でゆきを感じて


「ありがと。たぶん、自分が思うよりずっと、友希に恋してるんだと思う。今が幸せすぎて、時々ふと怖くなる時がある」

この恋をなくしたら生きていけない。と思うほどに

「あ、でも今日ずっと、友希のこと見てたら、元気出た」

「あ、そうだよね?今日やたら見られてた気がしたもん。自意識過剰じゃなかったんだ」

ふふ。と照れたように笑ってた


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