第23話 クリスマス

「ねぇ、ゆき ...でも降りそうなくらい寒いねぇ」


『そうですねぇ、ホワイトクリスマスになるかも〜あ、後藤さん、私ラウンド行ってきちゃいますね』

「ありがと、きょうちゃん」


しまった、油断した

仕事中だった

二人きりじゃなかった


今夜はクリスマスイブ

きょうちゃんと友希は準夜勤、私は当直


「うまいこと誤魔化したねぇ」

「あ、バレた?」

「何か言いかけてたの?」

「あぁ、明日の夜、終わったら行くね」

「ん」



『おつかれさまでーす』

「あれ?美樹、どうしたの?」

『イブなので、差し入れでーす』

「おぉ〜ありがと」

『あと、お姉ちゃんからの伝言。クラス会の出欠の葉書出して!って』

「あ〜忘れてた。ごめん、連絡するよ」

『どうせ欠席だろうけど、たまには会いたいって』

「うん、わかった」

『今度、女子会しましょ?私も一緒に!で、その後どうですか?やっぱりエッチして仲直りしたの?』

一応、声をひそめて聞いてくる


「また、そういうこと言う〜おかげさまで仲良くやってるよ」

『なんだ、イブに当直なんかしてるから振られたのかと思った』

「そんなイベントっぽいのは、やらなくてもいいんだって」

『ねぇ、それ本気にしてるの?』

「え?どういう意味?」

『知らない。自分で考えて!じゃ、私これからデートだから』


手を振って、去っていった



「ねぇ、今のオペ室の人だよねぇ?」

「うん」

「仲良いんだぁ」

「うん、友達の妹だし」

「へぇ、それにしてはデレデレだったじゃん?」

「へ?そう?」

「しょうちゃん、モテすぎ」

「んなわけないじゃん、今からデートって言ってたし」


「もう〜鈍感にも程があるよ」



翌日、夜

友希の部屋へ向かう


あと数時間でクリスマスは終わり

あと数日で今年も終わる


ほとんど病院で過ごしているので、季節感はあまりないけれど


「クリスマスかぁ」

考えない わけないじゃないかぁ



ピンポーン♪


「いらっしゃ〜、わ!なに?」

「クリスマスプレゼント」

抱えていた、ペンギン(の形をした抱き枕)を渡す


あ〜スッキリした

軽いけど、かさばるんだもん


「あ、ありがと」

「おじゃましまーす」



「可愛いね」

「お腹のところ開いてるでしょ?湯たんぽ入れるとあったかいんだって。温かい抱き枕ってサイコーじゃない?」

「うん、じゃ早速入れよ」

「え?今日は要らなくない?」

「なんで?今夜冷えるって言ってたよ」

「え〜今日は私がいるじゃん」

「しょうちゃんより、カーターくんの方がいい」


抱き枕に負けた?早速名前付けてるし、ってか カーターくんってなんだ?

ま、笑ってるから、いいか。


「あ、これ。私からの。全然大したものじゃないけど」

「わっ、ありがと。え?手編み?」

カーキ色のネックウォーマーだった

「うん。マフラーより、走る時にも使えるかなって思って」

「すご〜い!嬉しいよ。じゃ、早速!走ってこよっかな」

「今から?私といるのに?」

「ん〜、じゃ明日の朝にする」


そういえば。と呟いて

不思議そうな顔をする



「そういえばさぁ、、しょうちゃんも明日休みなんだよね?」

「うん、どっか行く?」

「うん。あ、そうじゃなくて。最近このパターン多いなぁと思って」

「ん?」

「夜勤と当直の後の休み。もしかして合わせてくれてる?」

「職権濫用だね。あ、でも今回はイブだったから喜んで代わってくれたよ」


もう〜しょうちゃんったら、大好き!

って言いながら

カーターくんに抱きついてるし


抱き枕なんて、あげなきゃ良かったかな。


いいなぁ、カーターくん。

つぶやいたら


「しょうがない、貸してあげるよ」

とか言うし

「いや、違うから」


クスクス笑いながら

腕を首にまわしてきて


「拗ねてるしょうちゃん、かわいい」

耳元で囁くなんて、反則だよー


「覚悟は出来てるんだよね?」

「ん?」

「今夜は寝れないよ?」






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