第20話 告白

『昨夜はごめん。呼ばれたので、先に病院行きます』

起きたら、そう書かれたメモが置いてあった


謝られても困るよ、しょうちゃん



病棟に行くと、緊急オペに入っていた

午後、患者さんの指示を聞きたくて探していたら

「祥子センセイなら、お昼で帰ったよ。たぶん、お通夜に行くんじゃないかなぁ。普通は行かないんだけどねぇ」

と、師長が教えてくれた。


顔を合わせなくてホッとした反面、

不安が広がっていく

これから、どうなっていくのか。


仕事が終わっても

ご飯を食べても

お風呂に入っても

連絡はない


はぁ、何してんだろ、私。

ずっと、しょうちゃんの事考えてんじゃん

もう、寝ちゃお


と思った時、着信


「遅くにごめん、寝てた?」

「寝てないよ、まだ9時半だよ!」

寝ようとしてたけど...


「今から行っていい?」

「うん」

「近くまで来てるから、すぐ行くね」


え?そうなの?



「いらっしゃい」

「お邪魔します。あ、ごめん。寝るところだった?すぐ帰るから、ちょっとだけいいかな?」

「うん。あ、そういえば。お通夜に行ってきたの?」

「ん、今日はほんとに大丈夫だから。ちゃんと気持ちの整理、ついてるから。」

「そか、良かった」


「それで、コレ。良かったら使って!」

長方形の包み

「開けても?」

「うん」


出てきたのは、2本のボールペン

シルバーで高級そう

クリップの部分に、イルカとクジラ?


「なにこれ、めっちゃ可愛い」

「でしょ?見つけた時、コレだ!って思ったの」

「嬉しい!けど、なんで?」


しょうちゃん、なんだか改まって


「いまさらなんだけど。ちゃんと言ってなかったから。もう、わかってると思うんだけど。


好きです。付き合ってください」



「はい」


「よかった」


あ、その笑った顔

めっちゃ好き

思わず、胸に飛び込んだ

背中に回される、しょうちゃんの腕を感じた


「ホントはさぁ、指輪とかのが良いのかと思ったんだけど。よくわからなくて...」

「ううん、全然いい。指輪は仕事中付けられないし。じゃ、しょうちゃん、クジラの方使ってね!」

「ん。あとさぁ、昨日の。嫌じゃなかった?」

「全然、嫌じゃないよ。しょうちゃん、優しくしてくれたし。それに...」

「ん?」

「しょうちゃん、慣れてる?」

「そんなことないよ。ドキドキだった」

聞こえる、しょうちゃんの鼓動

「・・・ホントだ。今も頻脈だね」

「うん。今もドキドキ」


「今日、泊まってく?」

「いいの?」

「うん」

きっと、私も頻脈だ

「じゃ、遠慮なく」


ふふ

また、脈が早くなってる。


嬉しくて

キスしようとしたら

手で制される


「今日は、私から」って。


そっと、目を閉じた









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