第13話 コードブラック

※※※


最近知ったのだけど

私が憧れる、祥子センセイは凄い人だった


救命救急医でありながら、時々、難しい手術に呼ばれているようで

手術の腕はピカイチらしい


「もったいない」と言う人が多い


外科で、もっと多くのオペをこなすべきだと言う人も多い


そんな人に私は

告白してしまったのだ


そして

「今度デートしよう」と言われてしまった


デートはまだ実現してないけど


なんせ忙しすぎて時間が合わないから。


でも

今夜、仕事が終わったらご飯を食べにくることになっている


ドキドキだぁ

部屋に来るのは初めてじゃないけれど


何作ろう?

希望を聞いたら、和食がいい!って言ってたけど


あ〜悩む


※※※


「ごめん、遅くなって。それで、実はすぐ戻らなきゃ行けなくて。ホントごめん。でもご飯だけ食べさせて!」


約束してたのに

せっかくの手料理、ゆっくり味わいたかったのに


「あ、はい。それは良いですけど。何かあったんですか?」


煮物を温めつつ

ご飯をよそってくれる


「うん、近くで玉突き事故。コードブラック一歩手前」

「え?」

「あ、アメリカの方のコードブラックね」

「あぁうん。ERの許容範囲を超えるってやつですね」

「ちょっと落ち着いたから抜けてきた。

ごめん、ゆっくり出来なくて」

「大丈夫ですよ!いつものことじゃないですかぁ」


明るく言ってくれるけど


「はぁぁ」

落ち込むわ

だって、、


「とりあえず、食べましょ」 

「うん。いただきます」


美味しく食べるために

話は後にしよう



「ゆきちゃん、ありがとう!美味しかった〜」

「あ、残ったやつ持ってってください。詰めますから」

「いいの?やった!ゆきちゃん、絶対良い奥さんになるよねぇ」


「あはっ、じゃ貰ってください・・・って、すみません、ありがちな返しで」


「ふっ、じゃぁ遠慮なく」


肉じゃがをタッパーに詰めてるゆきちゃんを背後からハグ


「わ!」

「あ!」

「スマホ、震えてますね〜」

「うん、そうだね」

「出ないんですか?」

「そのうち止まるから。それより...

急なんだけど、来週研修で東京へ行くことになってさぁ

しばらく会えないんだぁ。たぶん一週間くらい」

「研修って、心臓外科の?」

「うん」

「そっかぁ」

「ごめん、いつも。連絡するから」

「あ、だから今日、わざわざ抜けてきてくれたんですか?」


一度止まったスマホが再び震えた


「あ〜じゃ、行くね」

「あ、これ。タッパーは、いつでもいいんで」

「ん、ありがと。

さっきの答え、私が会いたかったから。だからね。」



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