第9話 特別
※※※
「あ〜ショックぅ」
そう言いながら
ナースステーションの奥にある休憩スペースに、1番の若手である村上さんが入ってきた
「どうした?きょうちゃん!」
先輩看護師の藤井さんが反応する
「祥子センセイに、振られました〜」
「また〜?ご飯誘って断られたんでしょ?」
なんだ、いつものことか。という感じだ
「はい、2人じゃなくて皆で行こうって言われちゃいましたぁ〜あ、今度みんなで焼肉行きましょう〜って!」
「お!いいねぇ焼肉。祥子センセイファンいっぱいいるんだから、抜け駆けはダメだよ〜きょうちゃん」
その言葉にドキッとした
「っていうか、センセイ、誰かと2人でご飯とか食べないよね〜」
「誰かを特別扱いはしない主義なんじゃないの?前、そんなこと言ってたよ」
私は
気付いてしまった恋心は封印したまま、何度か祥子センセイとご飯を食べに行ってる
そして、今日も。
「なに?なんの話?」
そこへ、当の祥子センセイが現れた
「きょうちゃんがセンセイに振られたってハナシ〜」
「え、いつの間に告られたんだろ?私」
「デートの誘い、断ったじゃないですかぁ」
「え?あれデートのお誘いだったの?」
「もぉ〜天然なんだからぁ」
「あ、それより、3号室の田中さんのガーゼ交換したいから、誰か包交車持ってきてくれる?」
「あ、私行きます」
私は、手を上げた
3号室に向かいながら
「今日7時くらいでいいかなぁ?終わりそう?」と聞かれ
「あ、今日は...」
「ん?」
断ろうと思ったけれど、センセイの横顔を見たら、つい
「いえ、なんでもないです。大丈夫です」
と言っていた
「じゃ、いつものところで」
「はい」
※※※
「ねぇ、何かあった?」
「え?」
ご飯食べてる間、ずっと態度がおかしかった友希ちゃん
本人は普通にしてるつもりみたいだから気づかないフリも出来るけど...
思い切って聞いてみた
「お昼にみんなが話してたこと?」
「なんで...」
「友希ちゃん、すぐ顔に出るから」
「ウソ...」
思わず顔を触ってしまう仕草も可愛いと思ってしまう
「村上さんとは、なんでもないよ?」
「え?あ、きょうちゃん?」
「あれ?違うの?」
なんだか、話が噛み合ってないなぁ
家へ向かってたけど
途中の公園で車を停める
「ちゃんと話そ。何が気になってる?」
「お昼にみんなが話してたんです」
「うん」
「祥子センセイは誰かと2人きりでご飯食べに行ったり、出掛けたりしないって」
「うん?」
「センセイのファン、いっぱいいるから、あんまり親しくしてると その、抜けがけ?とか言われて、いろいろやりにくいというか...」
「え?」
「だから私、こんな風にセンセイと会ってること言えなくて。悪いことしてるわけじゃないのに後ろめたくて。今日もせっかく誘ってくれたのに、心から楽しめなくて」
「私と仲良くしたら、友希ちゃんがやりにくくなるってことか…」
「ごめんなさい」
今にも泣きそうな顔で謝らなくても…
「友希ちゃんは特別なんだけどなぁ」
「え...」
「ごめん、なんでもない。もう、誘わない方がいいんだよね?」
「・・・はい」
「わかった」
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