第8話 前の彼女

ん〜良い香りだ


「やっぱり豆から挽くコーヒーは美味しいね」

「センセイ、砂糖もミルクも入ってますけど?」

「ごめん、お子ちゃまで」



「あの、今日は本当にありがとうございました

お寿司、美味しかったです」

「うん、また行こうね!あ、ほら!1人じゃなかなか行けないしさ」


「前は...」

「ん?」

「誰かと行ってた...んですか?あ、この前言ってた、付き合ってた人?」


友希ちゃん?

なんでそんな悲しげな顔?



「あぁ、うん。そうだね」

「あの、その人とのこと、聞いてもいいですか?」

「ん、いいよ」



「えっとぉ、その、お付き合いは長かったんですか?」


「ん〜付き合ってた期間は2年くらいかなぁ〜

でも、知り合ったのが高校の時で、その頃からずっと好きだったから、片想いの期間が長かったかなぁ」


「そんなに長い間...どうして?」

「ん?」

「どうして別れちゃったんですか?」


なんで友希ちゃんが、そんな悲しそうに

今にも泣き出しそうな顔なんだろう



「どうしてだろ。何度も考えたんだけどわかんない

理由も言わず出て行っちゃったから」


「今でも好き、、なんですか?」


「今?今は……」


答えられなかった

自分でもわからないから



「すみません、変なこと聞いて」

「ごめん、ちゃんと答えようと思ったんだけど」



「辛いこと、思い出させちゃったみたいで」

「ううん、大丈夫だよ。そりゃ当時は辛かったけどね。そういえば、師長の家で大泣きしたわ」

「え?」

「それが、アレ!弱み握られてるってヤツ」

「あぁ、アレ」



あ、ちょっと笑った?



今は、前の彼女の事より

ゆきちゃんが悲しくなったり泣いたりする方が気になるんだけどなぁ




※※※


聞いてしまった

聞かなくてもいいことなのに

ずっとモヤモヤしてたから


センセイは嫌な顔もせずに

ちゃんと答えてくれた


誤魔化したり

笑い話にしたりせず

正直に

誠実に


そういうところが

好き。


気付いてしまった

そうだ、私、センセイが好きなんだ



性別なんて、関係ない よね




でも

言えないなぁ

誰にも


※※※

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