エピローグ 炎天夏、雲を焼く

時計のアラームで目を覚ました。


むしゃくしゃするような暑さが部屋を包み込んでいる、私は部屋の中でエアコンのスイッチを入れた。




梅雨が明けて、暑さが顔を出す。


もう顔には汗が滲んでいた。




少し準備をして外に出た。燃える炎天の下にいる。



ひたすら歩いた。




途中で買ったアイスを口に放り込んで。



都会はコンクリートの熱が地面から押し上げる。履いている靴も溶けそうだ。



一人になった後も、生活はずっと続く。




君の鼻歌が欲しいんだ、願っても届かない。


駅前のベンチに腰掛ける、微睡むように遠くを見つめている。


もし、あの時に戻れたら、そんな未来もあったかもしれない。


もしあの日、貴方に出会わなければ、 案外つまらない世界だったかもしれない。




貴方がくれた時間を、私は大切に消費出来ただろうか。





随分平凡だった毎日も、忙しくなって、人と関われて、楽しくなった。



新しい仕事も始まったが、そこまで長くやることも無く辞めると思う。




音楽で生きていきたい理由ができたから。



鈴が鳴っている、駅前の人の声が響く。



ずっとベンチから動けないままでいる。



鈴が鳴っている。入道雲が空を覆う。



目が眩んだ夏も、淡く透明な夏空も、私はきっと忘れない。


ずっとベンチから動けないでいる。



夏の匂いがしている。

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