川沿いの公園にて
暖かくなり始めた春の気温に少し高揚しながら、目的地へと足を進める。雲がほとんど無い青い空で、空気がいっそう美味しく感じる。 公園に着くと、途中の店で買ったたまごサンドを頬張りながら、案を考える事にした。
自分の頭の中の情景やテーマを、ノートに書いていく。 季節は春で、爽やかで、疾走感も付けて、とにかく書いていった。
気づけば、2時間程時間が経った事に気づいた。 周りの音があまりなく静かな分、時間を忘れ没頭していた。
「えっ早!、もうこんな時間!?、」
仕事では1時間が24時間に感じていたが今は2時間が30秒ほどの感覚だった。
ふと前を見ると自分よりちょっと先に、いつの間にか黒い服装の男が現れ、金色の髪をして座って一点を見つめている事に気づく。
「あ、人がいる」
「平日のこんな時間に珍しい、どうしたんだろう見た目も若そう」
すると、男がユズハの気配に気づいたのか、くるっとこちらを向いた。
こちらを向いたかと思えば、逃げるようにその場から立ち去った。
「あ、行っちゃった」
「私何かしちゃったかな?、大丈夫かな」
「私もそろそろ帰ろっと」
気づけば夕暮れが街を染めていた、足早に家路についた。
夜になっても、あの人の事が気になって仕方がなかった。
人を惹きつける何かがあった。一目見てわかる。
「次絶対話しかける、絶対」
そんな決意を胸に秘めて、眠った。
夜が明け、そして2日後
「あの人また居るかな...同じ時間も今日も行ってみよ」
その日もよく晴れた空で、吸い込むよく澄んだ空気が身体中に浸透して気分が良い。
買ったばかりのスニーカーを身に付け、公園へ向かった。
2日前と何も変わらない公園に、昨日居た男の姿は無い。
「もう少し待ってみるか〜」
いつも通りカメラで写真を撮ったり、 曲の案をノートに書きながら過ごした。
その時は、突如として訪れた。
「あの、」
「!?」
少し鼻にかかったような優しい声が右側から聞こえてくる、驚き振り向くと、確かに前に見かけた男が立っていた。
「前もここに居ましたよね... 若そうな人だからこんな時間に何してるのかなって思って、あと何かノートに書いてたので、気になってました」
完璧なまでに自分と考えが一致していた事に驚きを隠せなかった。
「わ...私も気になってました!、若そうな人だなあって思って、」
それから二人はお互いの事を伝えあった。
仕事を辞めたこと、これから新しい仕事を探しながら音楽制作をしようとしていること。
男の名前はカヲルと言い、最近ここへ引っ越してきたばかりで、一人で暮らしているらしい。 歳は27歳で、ユズハの7つ上。
仕事は音楽関係。
金髪にしている理由は、気分転換というだけだった。
話を聞いていくうちに、どんどん彼に興味が湧いてくる。この人はどんな人なのだろう、もっと知りたい。
「なんでここに引っ越して来たの?」
「元々こっちで生まれて育ったんだよね、親の仕事の事情でここから遠いところで過ごしてたんだけど、自立出来たからこっちに戻ったんだ。」
「なるほどねえ〜」
「ちゃんと聞いてる!?」
「ええっ!聞いてるってごめんごめん」
ユズハは普段こう言われる事がよくある。上の空でふわふわしている。
良くも悪くもある1面。
「俺もよく言われるからわかるよ〜」
「そんな風に見えないけどな....」
「ほんとほんと」
少しずつ打ち解けていく二人、その場所には笑い声が絶えず響いた。
「あ、忘れてた写真撮らなきゃ!」
急いで撮る物を探すユズハをカヲルは微笑みながら見つめていた。
どこか懐かしそうな顔をしている。
慌てた姿を見せてしまったと思い、ユズハは顔を赤らめる。
「次はいつここに集まろうか、桜が咲いたらまた来よう」
「良いね、あと一ヶ月後くらいかな」
「多分そのくらい」
「じゃあまたね、それまで元気で」
「うん!、またねー!」
「よっしゃ〜話せた!、嬉しい!!」
「しかもあっちから話しかけて来てくれた、」
興奮して胸の高まりを抑えられずにいた。
思わず声が出そうになったところを、ギリギリでこらえた。
夕暮れが近づく街を、二人は別々の道で帰った。
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