春風クリエイション

ユズリハ

プロローグ 始まりの部屋

「うーーーん、、行き詰まったなあ、」



ユズハ、20歳、1週間前に仕事を辞めた。地方から東京へ引っ越してきて二年ほど経った。思えば入社した当時から、こんなはずじゃなかったと、思うような事ばかりだった。


理不尽に上司から怒られ、罵詈雑言の嵐。

人手が足りなくなったから、と希望もした事がない別な部署への異動。パワハラやセクハラ等、挙げだしたらキリがない。それでも何とか耐えてやってきた。 ある時、ぷつりと、何かが切れた。何を考える訳でもなくて、さっさと辞表を出して辞めた。幸い貯金は少しあるので、この1年間で仕事を見つけつつ、やりたい事をやろうと決めた。


この期間で、何か創作をしようと思った。

高校生の時、少しだけ音楽制作をしていた事があった。幼少期からピアノを弾いていたので、音楽の知識はある程度はあった。

昔の夢を思い出した。


音楽で生活をしたい、そんなことを夢見ていた時期もあった。



また、音楽を作ろうと思った。そして、いずれ世に出そう。押し入れの奥にあったアコースティックギターを引っ張り出してきた。突然考え出したものの、何も思いつかず行き詰まっていた。甘いカフェラテを飲みながら考える。


「....何も浮かばん、どうしよっかな」




試しにギターを鳴らす、チューニングもろくにされていない弦からまるで不協和音のお手本のような音が部屋中に響いた。



「うわっなにこれ...音きったな....」



「チューニングしなきゃ〜チューナー家にあったっけな?」





「どこ探してもないな、、」



探し始めると自分の部屋の汚さを痛感した。

物で溢れかえっている。 物同士が喧嘩をしているように見えた。



今度は1階にあるグランドピアノを弾いた。ピアノは大の得意だ。


楽譜を取り出す、滑らかな旋律が部屋に流れた。


「ピアノだったら弾けるんだけどな〜」


「でもギターも弾いてみたい、めっちゃかっこいい」



ユズハは思った、ずっと部屋に篭って考えているからいけないのだと。



外へ出よう、外の世界へ踏み出そうとした。



今日は良い天気だ。家の近くにある大きな川辺が近い公園がある。最近見つけた場所。そこへカメラとノートをもって出かける事にした。思いついた事をノートに書くためだ。そして、良いと思った情景を残しておく為にカメラで写真を撮る。



少しひっそりとしていて、人気があまりなく、川の流れる音や、木が生い茂り緑の景色が包む空間。オマケにそこは大きい桜の木が数本あり、きっとこれから綺麗な桜が咲くだろうと思っていた。



カフェラテを一気に飲み干し、むせたあとに少しのメイクをし、家を出た。







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