総攻撃②
地を蹴るワーウルフを従えながら、単車で疾走するタカハルの部隊が遠巻きにこちらを観察していた人類の集団に食らいついた。
「ヨッシャ! 一番槍は俺さまだぁぁああ!」
「からの〜……実はあーしでした! ――《ファイヤーアロー》!」
「――な!? てめー! この駄エルフ!」
「にしし、あざます!」
「クソがッ! 行くぞ、てめーら! 皆殺しだ!!」
「「「ワォォオオオオン!」」」
「ヒ、ヒィ……」
「じゅ、じゅ、獣王だぁぁあ!?」
「ば、バイク……魔物がバイク……!?」
立ち上がる土煙に、鳴り響くエンジン音と遠吠え……そして、阿鼻叫喚となった人類たちの悲鳴。
ファーストアタックとなったタカハル部隊は、人類を混乱へと陥れた。
次いで、原付に跨ったサブロウたち――チームJが混沌と化した戦場へと乱入。
「今宵のダンスホールはここですかな? ハッハッハ! 愚かなる人類諸君、共に踊り咲きましょう!」
(シャル・ウィ・ダンス?)
「風が
(凪いてないよ……めっちゃ騒がしいよ)
「我が深謀は総帥の為に……! 冷徹にして冷血、絶対零度の災厄――
(チームJの頭脳はオレサマダカラナ)
戦場には、不快な笑い声と意味不明な口上が響き渡る。
セカンドアタックとなったチームJは、タカハルと共に圧倒的な個の強さを示し、人類に恐怖を与えた。
「ブタどもよ! 鼻を鳴らせ! 軍靴を鳴らせ!」
「「「ブヒィィイイ!」」」
「銅鑼を叩き、武器を鳴らしなさい! 敵に恐怖を! シオン様に忠誠を! 我らの想いを届けるのです!」
「コロス……コロス、コロス、コロス、コロス! 私たちは二度とシオン様を裏切ってはならぬ! シオン様が与えてくれた情に応るのだ! 憎き人類を抹殺するぞ!」
「「「ウォォォオオオオ!」」」
そして、最後に到着したヒビキ、イザヨイ、クロエが率いる100万の大軍が数の暴力を示し、人類に絶望を与えた。
「順調だな」
スマホを通して確認した自軍の成果に、俺は満足するのであった。
◆
3時間後。
戦況は変わらず。
未だ、統制の取れていない人類たちを配下たちは蹂躙していた。
「わぉ! シオンさん見て下さい!」
「どうした?」
「タスクさんから連絡が来たのですが……今回の戦い思いっっっきり配信されているみたいですよぉ」
「配信しているのは人類側か?」
「だと思いますよぉ。人類側の公式アカウントからの投稿ですし、魔王側だったら配信しても即BANですぅ」
「こんな惨状なのに、戦場カメラマンを投入する余裕はあるのか……」
「んー、多分ですが……撮影はドローンっぽいですぅ」
ドローンを使って戦争模様を配信か……。
「人類側からすれば……醜態だろ? 士気も下がるだろうし、百害あって一利無し……連中はバカなのか?」
「バカなんだと思いますぅ。マスコミ? むしろマスゴミ? による、魔王に対するネガティブキャンペーン? 或いは、人類お得意の責任転嫁狙いの内部抗争とかぁ?」
「どちらにせよ、救いようがないな」
「ですねぇ」
配信か……
今回は一部――元人類の戦力を除いたアスター皇国のすべてをさらけ出している。
幹部と言われる側近眷属たちの強さに……100万の配下。
これで、有象無象の人類及び魔王に、アスター皇国の戦力が露呈してしまったか。
抑制力となるか……はたまた――。
祭りの後の不安の種が1つ増えたか。
「どうしますぅ? ドローン壊す指示とか出すんですかぁ?」
「今更だろ……人類の配下を使わなくて正解だったな」
「アホの部隊に1人いますよぉ」
「……ん? あぁ、変なマスク付けてるし……テンションも言動もおかしいから、元魔王かヴァンピールの亜種とかに思われるだろ」
「ですねぇ」
どこで調達したのか、色んな意味で堕ちまくった元勇者のカズキは目元を隠す漆黒のドミノマスクを愛用していた。
「ドローンか……」
「どうしたんですかぁ?」
「俺も戦場に出て、口上でも垂れてくるか」
「今回のは、仇討ちですぅ! 正当防衛ですよぉ! みたいな口上ですかぁ?」
「後は、アスター皇国を敵に回したらどうなるか……だな」
「シオンさんのお顔は全国区ですし、いいと思いますよぉ」
魔王カオルとの同盟や富山の豚を討伐した際に顔を出した影響もあり、俺が望む望まない関わらず……ネットで検索すれば俺の顔は静止画、動画問わず無数に出てきた。
今回の魔王祭りで俺のレベルは爆上がりだ。ダメ押しの経験値でも稼ぎに行くか。
「行くぞ」
「はぁい」
俺は相談役のカノンを引き連れ、死屍累々たる戦場へと向かうのであった。
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