作戦会議(vsセントラルエリアの勇者)
「なんでこいつら雑魚の分際で俺たちと同じ装備なんだよ!」
「クソっ! こんなことなら
「これだけのミスリル装備を持ち帰れば……一生遊んで暮らせたのにな……」
惜しみなく投入したミスリル装備一式を装備したダンピールとダークエルフとリビングメイルの群れに、侵入者たちは苦戦を強いられていた。
前線の雑魚に高ランクの装備を身に着けさせると、倒されたと同時にそのまま装備品をお持ち帰りされてしまい、人類の強化に繋がり、ゆくゆくは自分の首を絞めることになる。
しかし、端末に映る侵入者――セントラルエリアの勇者たちは同ランクの装備品を装備しており、生還させる予定もないので、今回は思う存分に投入してみた。
「俺たちは勇者! 人類の希望だ! そのような賤しい気持ちは捨て去れ!」
「チッ……静岡の奴ら、いちいちうるせーよな……」
「まぁ、そう言うな……あいつら――サトルたちは、『
「でもよぉ……」
「貴様ら! グチグチとつまらないことを……その不要な口を動かさず、手を動かせ! 1匹でも多くの魔物を仕留めろ!」
『嗜虐王』って誰だ?
「でも……これだけの装備を持ち帰れれば……人類の大きな戦力アップに繋がるわね」
「くどい! ナツミ! お前まであいつらに毒されたのか!
「毒されたって……ひでーなー……言っとくけど、倒してる数は俺たちのほうが多いからな?」
「だよな。サトル……悲劇のヒロインを気取るのは勝手だが……俺たちに当たるんじゃねーよ」
「クッ! き、貴様ら……!」
泣き虫君改めてふざけるな君……改めてサトルは静岡出身の勇者のようだ。
リーダーっぽく気取っているのはサトルだが……実力は軽口を叩いてる奴らのほうが確かに上だな。
それじゃ、そろそろ嫌がらせの定番……大量のジャイアンバットを投入して超音波の波状攻撃を仕掛けようか。
しっかし、罠はほとんど無意味だな。
新規に罠を設置するには侵入者たちを支配領域から一掃する必要があるので、現在仕掛けられている罠の類はすべてヤタロウ産だった。
設置型の罠は、これだけの配下を投入すると配下が起動させてしまう。かと言って無人の場所に仕掛けている罠は、斥候職の人類がサクサクと罠を解除し、無効化してしまう。
ヤタロウ曰く、罠を上手く扱うコツは誘い込みらしいが、普段防衛をヤタロウに丸投げしている俺が
俺はフル装備した高コストの配下を惜しみなく投入し、侵入者たちを観察するのであった。
◆
3時間後。
観察を続けることで、いくつかのことがわかった。
まずは、セントラルエリアの勇者たちは愛知、静岡、岐阜、福井の4県から選抜されたようだ。
具体的には、愛知3人、静岡2人、岐阜3人、福井4人。
静岡の2人は魔王を心の底から憎んでおり、岐阜の3人は対照的にお気楽だが実力は一番高く、愛知の3人はパーティーの調和を取ろうと頑張っており、福井の4人は身内で固まって行動することが多かった。
「全体でみると、チームワークはお世辞にも良くはないな」
「シオン様の策謀の成果かと」
マオが俺の独り言に答える。
「そうか?」
「先程も、侵入者の一部がシオン様の提案を口にし、仲違いしておりました」
お気楽な岐阜の勇者が……『そういえば、
「俺の仕込んだ毒が効いたなら……幸いだが、コレは人類側のミスだな」
「ご謙遜を」
「多分コイツらは全員が各県の勇者……ってかエースだ。そして、リーダーだった者たちなのだろう。今回は俺たちから仕掛けたから、否応無しに人類も動いたが……準備は万全ではなかったのだろう」
今回に限って言えば、攻め手は人類だが……仕掛けたのは
絶対的なカリスマの下にいるエース級連中は怖い集団だが、ただのエース級の集まりは得てして崩壊しやすい。
タカハルやサラなども……強大な人材ではあるが、魔王の命令という強制力な力がなかったら……諸刃の剣に為りかねない存在だ。
そう考えると……マオを含めたこの超個性的集団を魔王の命令なくまとめ上げてるサブロウは絶対的なカリスマの持ち主なのか……?
カリスマというか、類友? 相性?
っと、思考が逸れた。
作戦をまとめるか。
「イザヨイ」
「ハッ!」
「奇襲と同時にコイツを殺れ、俺は同時にコイツを殺る」
俺は自分の獲物としてサトルを指し、イザヨイのターゲットとしてサトルの片割れとなる静岡の勇者を指した。
まずは最も憎悪の高い2人を葬り、敵の士気をへし折ろう。
「次に、サブロウ」
「俺とイザヨイの奇襲の成功を見届けたら、コイツを殺れ」
調和役――バランサーと思われる愛知の勇者の1人を指した。
「マオ」
「は、はい」
「チームJの戦力を2つに分断出来るか?」
「はい」
「――な!? チームJの総帥は……我輩……」
「1つのチームは残った愛知の勇者2人を、もう1つはマオが指揮し福井の勇者を仕留めろ」
「か、か、か、畏まりました」
「そして、サブロウ」
「は、はひ!」
んー、大切な作戦決行の前だ。
一応、フォローしとくか……。
「チームJの総帥は紛れもなくお前だ」
「――! はい!」
「今回は強敵である愛知の勇者を迅速に倒すため、サブロウにその役目を任せた……ひょっとして、チームJの別の者に任せたほうが良かったか?」
「いえ、そうようなことは!」
「故に、今回は指揮をマオに任せた。俺の作戦に何か意見はあるか?」
「我輩の代わりの指揮ならば……
「本気か?」
「僭越ながら、
そうなのか?
――マオ、今のサブロウの言葉は真実なのか? 本音で答えよ!
俺は本心を知るために命令する。
「は、はい! わ、私は……あがり症で……人前に立てるような器ではなく……対して、
チームJの内情に関してはまったくの無知だ。ここはサブロウの進言を受け入れるか。
「わかった。ならば、マオはそこのスライムの補佐を務め、狙うべきターゲットを明確化せよ!」
福井の勇者たちは特にチームワークに優れていた。そのチームワークを分断させることが素早く、完璧に勝利を収めるポイントだ。
岐阜の連中は元々防衛している配下たちを一斉に襲わせ、時間を稼げば十分だろう。
作戦は決まった。
侵入者たちも襲われっぱなしで、いい感じに疲弊している。
「さぁ、人類ご自慢の勇者さまたちをサクッと片付けるとしようか」
「「「ハッ!」」」
俺たちは奇襲を仕掛けるべく、移動を始めたのであった。
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