チームJ出動

 第三〇一支配領域の防衛に向かうメンバーは、俺とイザヨイ、そしてサブロウを含めたチームJのメンバー26人。


 敵が現在進行している階層は第十一階層。


 他の支配領域に配下を回している都合上、防衛をしている配下が少ないとは言え、驚異的な進行速度だ。


 敵の強さは見立てでは、ランクBの上。適当な配下を防衛に向かわせても侵略者の糧になるだけだろう。


 目的は、迅速か排除と幹部連中並びに育った配下――チームJの犠牲者を0に抑えること。


 幹部連中や育った配下の被害を最小限に抑えるために、俺自身が防衛に向かうのは最適解だと思うが……戦闘中は戦局を見極めることが不可能だ。そのため、迅速に排除し司令室に帰還する必要があるのだが……。


 装備を含めた単純な強さは間違いなくこちらの方が上だが……恐らく戦闘経験は向こうの方が上だ。


 人類の身でありながら、あそこまでの強さ――レベルに到達しているということは、かなりの戦闘経験を重ねているはず。


 戦闘経験は往々にして、単純なステータスの差を覆す。


「シオン様、向かわれないのですか?」


 先程、意気揚々と『防衛に向かうぞ!』と言ったものの、足を止めてしまった俺にイザヨイが声をかける。


「少し待て」

「ハッ! 失礼しました!」


 イザヨイは頭を深く下げると、一歩後ろへと後退。


 ココは防衛の正念場だ。焦るな。考えろ……生き延びるため、頭を動かせ……。


 俺は最適な方法を求め、思考を巡らせる。


 1つ指示を間違えれば、元魔王で柔軟性のあるサブロウはともかく、狂おしいほどに従順なイザヨイは命を落とす危険性がある。


 ――!


 狂おしいほどに従順であることが、イザヨイ――創造された魔物カオスの特性なら――人類ロウの特性は?


 最近は、侵略にせよ、防衛にせよ、争いは力押しでも成功していたので、対応が緩慢としていたようだ。


「ヤタロウ! 12時間ほど離れるが大丈夫か?」

「ふぉっふぉ。任せよ。侵攻される階層は悪化するじゃろうが、12時間程度なら最深部までは何があっても届かんよ」

「稀代の軍師と名高き私もいますぅ! ご安心を! こちらより、シオンさんの方こそ気を付けて下さいねぇ!」

「そうじゃな。カノン嬢の言う通り、シオン……お主は当然として、イザヨイ、そしてサブロウのこと、頼んだぞ」


 ヤタロウは優しい笑みを浮かべると、最後は真剣な目で俺に告げた。


「誰にモノを言っている? 任せとけ。イザヨイ! サブロウ! チームJ! 防衛に向かうぞ!」

「「「ハッ!」」」


 ――《転移B》!


 俺は防衛メンバーを引き連れ、転移するのであった。



  ◆



 目的の階層に到達した俺はその場に腰を下ろす。


 イザヨイは俺の斜め後方で直立不動の態勢を保ち、サブロウを始めとしたチームJの面々は周囲を不審に見渡していた。


「シオン様、ここは……?」

「第十三・・階層だ」

「なるほど……むむ? 十三ですと?」

「そうだ」

「確か……敵が侵攻している階層は……」

十一・・だな」


 作戦決行まで時間は存分にある。暇つぶしを兼ねて、俺はサブロウとの会話を楽しみ始める。


「なるほど、なるほど……流石はシオン様! 相も変わらず深謀遠慮のご慧眼!」


 ――!?


 サブロウはしきりに頷き、感心した様子を見せる。


 ま、まさか……サブロウが俺の策謀に気付いた?


 サブロウに気付かれるような策謀なら、敵が気付いてもなんら不思議ではない。


 計画の修正が必要か……?


「サブロウ、確認だ。今回、俺の立てた計画を説明しろ」

「――!? しょ、承知……。さ、されど、1つ提案が……」

「提案?」


 サブロウが俺の策謀に修正案でも進言するというのか?


「わ、我が説明してもよいのですが……教育……そうです! 教育も兼ねて我がチームの参謀である第一災厄ディザスターワンより説明させてもよろしいでしょうか?」


 (ピェ!?!?!?!?)


 サブロウの肩に乗っていたスライムが弾けたのかと思うくらいに全身を揺らす。


第一災厄ディザスターワン?」

「ハッ! この者でございます!」

(ピェ!?)


 だろうな……。


 サブロウが手で指し示したスライムが激しく揺れる。後ろのエルフ種の元魔王が頭を抱えているが大丈夫か?


「よし! 舞台は整った! 我が参謀――第一災厄ディザスターワンよ! 己が智謀を顕示せよ!」


(シオンサマ ハ テンイ スル バショ ヲ マチガ……ミアヤマッタ)


 ……。


 辺り一変が静寂とした空気に支配される。


「なるほど……なるほどな」

「――な! ちょ!? シ、シオン様、ち、違います! 違いま――」


 ――《ファイヤーランス》!


「ハァァアアン!?」


 放たれた炎の槍がサブロウを貫く。


「サブロウ、質問だ。ペットが粗相をしたとき、責任を取るべきはペットか、飼い主か……どっちだと思う?」

「ペッ――」


 ――《ファイヤーランス》!


「ハァァアアン!?」

「俺は飼い主だと思うのだが、サブロウもそう思うだろ?」

「は、はい……」


(ボク ハ サブロウサマ ノ ペット ワルイ スライム ジャ ナイヨ)


 第一災厄ディザスターワンはふよふよと可愛い仕草で動きながら、己が立場を主張する。


「――な!? ま、またしても我を謀ったかぁぁあああ!?」

「さてと、そういう訳だ。サブロウ……飼い主としての責任を取ろうか?」

「――!? い、今ほどのファイヤーラン――」


 ――《ファイヤーランス》!


「ハァァアアン!?」

「ん? 何か言ったか? 仕置をするのは今からだ」

「あ、熱い……熱いですぞ……シオン様の我を期待するが故の愛情が――」


 ――《ファイヤーランス》!


「ハァァアアン!?」


 しばしの間、第十三階層にサブロウの悲鳴が響き渡るのであった。


――――――――――――――――――――――

(あとがき)


お久しぶりです(汗)


かなり久しぶりとなるダンバトとなります!


今後は不定期(週1ペースで更新できたらいいなぁ……)で更新を再開します。


ストックも計画もありませんが、最悪でも魔王祭りが終わるまでは執筆したいなぁと思っています。


こんな私となりますが……お付き合い頂けると、幸いですm(_ _)m


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る