【異伝】異界からの侵略者【SS】

(まえがき)


 こちらの話は私の別作品『無限世界のトップランカー』の書籍発売記念のSSとなります。

 本編とは一切関係のないSSとなっております。ご了承下さいませ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 富山県を統一してから数カ月後。


 ――ビィィィィィ!


 スマートフォンから侵入者を告げるアラート音が鳴り響く。


 ――?


 は? 何故だ?


 現在の情勢は小康状態。


 侵略される可能性のある支配領域はすべてヤタロウに委任していた。


 俺の担当する支配領域はすべて安全圏のはずだが……、


 スマートフォンを取り出し画面を確認すると、


『ALERT! 支配領域の一つが異界と繋がりました。異界から来る侵入者を撃退して下さい』


 は?


 異界? なんだそれ? 意味がわからん。


 とりあえず、現状を確認するか。


 侵略されたのは第六六支配領域。


 侵略者は……4人?


 まるでアニメやゲームのキャラのような緑髪の青年に、猫耳フードを被った少女に、青い髪をした少女……そして、金髪碧眼のフルアーマーを着込んだ男性。


 こいつらが異界からの侵略者??


 幹部――イザヨイかサブロウを向かわせるべきか?


 いや、相手の力量がわからないのに幹部を向かわせるのはリスクが大きい。まずは、適当な配下を差し向けて力量を測ることにしよう。


 こうして、俺は異界からの侵略者の力量を測ることにした。



  ◇



(リク視点)


「え? ちょ! 何ここ? 転移トラップ踏んだ?」

「メイ、落ち着け……とは言え、ここはどこだ?」


 俺は、かつてトップランカーのソラとしてIGOの世界を熟知したはずなのだが……周囲の景色に見覚えが一切なかった。


 俺の知らないフィールドということは……あの大型アップデートで新たに実装されたフィールド?


「リ、リクさん、どうしますか?」

「とりあえず、周囲を最大限警戒しながら……進むとしよう」

「先頭は私にお任せ下さい!」

「あぁ……ヒロ、任せた。念の為、メイも《索敵》に注力してくれ」

「了解!」


 ヒロアキを先頭にダンジョンタイプのフィールドを先に進むと、


 ――!


「前方に敵の反応あり! 数は10体!」


 《索敵》が前方に潜む敵の存在を感知する。


「ヴォォェェエ!」


 ゾンビ? いや……《索敵》によると目の前の敵の名称は――グール。


 IGOにもグールは存在しているが、目の前のソレは見た目のディティールが俺の知るグールとは異なっていた。


「うわっ! 気持ち悪っ!」

「ここは闇属性のフィールドなのでしょうか?」

「ヒナタ! 結界を展開!」

「はい! ――《結界・破魔》!」

「ヒロは結界内に敵を釣れ!」

「承知! ――《タウント》!」


 ヒナタの展開した不死属性を弱体化させる結界の中で、ヒロアキが盾を打ち鳴らす。


「メイ! 行くぞ!」

「あいあい!」


 俺は一対の短剣を手にし、ヒロアキへと向かうグールに攻撃を仕掛けるのであった。



  ◇



(シオン視点)


 ふむ。これが異界からの侵略者か。


 反則級の強さ……ではないが、常人離れした動きだ。


 肉体的に強い……というより、戦い慣れた感じだな。


 最初にグール。次にウルフ、ゴブリン、オーク、コボルトとけしかけたが、全員返り討ちにあっている。


 一撃、一撃が強い訳ではないのだが……、


 なんだ……あの緑髪……。リクと言ったか? ちょっと動きが意味不明だぞ。短剣を使ってこちらの攻撃を無効化し、ゴキブリかよ! って速さで動きまくる。


 それにあの猫耳フードの少女も異常だ。


 あの武器は鎖鎌か? 鎖鎌なんてマニアックな武器を使う奴なんて初めて見たぞ! 忍者か? 忍者なのか……!?


 んー、欲しいな。


 異界の侵略者とやらも眷属にできるのだろうか?


 上手く鍛えれば、リナ級の戦力になるな。


 今空いてる戦力は……幹部連中の様子を確認すると、暇そうな幹部はサブロウのみだった。


 ――サブロウ! 侵略者を迎え撃て! 可能な限り生け捕りにせよ!


「――! 承知しましたぞ! 生け捕りと言うことは……眷属にするのですな」


 ――その予定だ。


「我輩が指名された。つまりは、チームJの幹部候補ですな!」


 ――黙れ! さっさと、撃退に向かえ!


「――! しょ、承知しましたぞ! チームJ、シオン様のご下命により出陣ですぞ!」


 性格には難ありだが、実力は折り紙付きのサブロウを派遣したのであった。



  ◇



(リク視点)


「気を付けろ! 前方から異常な強さの気配を感じる」


 俺たちの強さを軽く上回る敵の気配を《索敵》が告げる。


「ちょ!? リク! これ、ヤバくない?」

「え? え? ど、どうしますか……」

「撤退も視野に入れつつ、対応だ」

「殿はお任せ下され!」


 武器を構え、強敵に備えると、


「我ラハ闇――」

「――アスター皇国の暗部を司りし、闇の狩人なり」


 姿を現した強敵の1体スライムが何やら喋り始め、続いてエルフが喋り始める。


「リ、リク……なんなのこれ……」

「わ、わからん……」


 震える俺たちをよそに現れた7体の強敵は尚も喋り続ける。


「我らは影――」

「――漆黒の闇の中、主の怨敵を始末する者なり」


 オーガが喋り、悪魔を模した怪物がそれに続く。


「我らは切り札(ジョーカー)――」

「――主の怨敵を討ち倒す、最凶の剣つるぎなり」


 そして、獣人が喋り、ドワーフがそれに続き……最後に真ん中に陣取った人……いや、アレは吸血鬼なのか? 吸血鬼は美男美女が多いが……レアタイプか?


「我らはチームJ――貴様たちを黄泉へと誘う災――」

「――《夏撃》!」

「ハァァァアン!?」

「――! 今だ! 撤退!」


 メイの放った分銅が何やらポーズを決めながら喋っていた吸血鬼の顔面に命中。


「ふぅ……やっぱり、吸血鬼はアホが多いね!」

「それでも、強敵には違いない! 撒菱まきびしを蒔け! 閃光弾を投げろ! 撤退! 撤退だ!」


 思えば、メイたちとパーティーを組んでから撤退するのは初めてだ。俺たちは撤退用のアイテムを惜しみなく使いながら、来た道を走り抜けたのであった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――

(あとがき)


緊迫した魔王祭の中……突然のSS失礼致しました!


このお話に出てくる、リクが主人公の物語『無限世界のトップランカー』の1巻が本日(10/5)発売となります!


ダンバト好きの読者様もお気に入り頂ける作品に仕上がっていると思います!


本屋さんでお見かけの際は、お手に取って頂けると幸いです!


よろしくお願い致しますm(_ _)m

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